新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

国民不在の抗争を繰り広げる自民党内派閥と霞が関官僚、小池百合子

7月から8月となり夏真っ盛りとなります。このブログを数ヶ月近く放置していたのですが、この間に政界では数多くのゴタゴタが発生しました。今年に入ってから今に至るまで半年以上も新型コロナウィルス感染拡大防止のための緊急事態宣言が敷かれている状況です。これには小池百合子東京都知事(2021年8月1日現在)が政府を相手にした巧妙な政治的工作が絡んでおり、国政側の菅義偉政権がこれに翻弄されているという背景があります。

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これは公然の秘密とされていますが、小池百合子都知事東京オリンピック終了後に国政復帰をするために、自民党二階俊博幹事長と接触を繰り返していると云われています。二階幹事長は自民党内の派閥である志帥会を率いていますが、小池百合子氏に禅譲するのではないかと噂されているのです。小池百合子氏とやはり同じく自民党の派閥・水月会を率いている石破茂氏は近い関係にありますが、もし仮に小池氏が志帥会を継承した場合、水月会と合併するかも知れません。

もうひとつ池田隼人の流れを引き継ぐ自民党内派閥で宏池会がありますが、そこに属する参議院議員林芳正氏が総理の座を狙うべく衆議院山口3区への鞍替え出馬を7月に表明しています。現在衆議院山口3区は自民党であるものの志帥会所属の河村建夫氏が議席をとっており、宏池会志帥会の衝突となります。

現在の菅総理は無派閥で党内支持基盤が弱く、さらに国民からの支持を強く得ているとは言えない状況です。この政権の弱体化がかなり目立ってきていますが、それを狙って小池百合子氏や志帥会水月会、宏池会自民党総裁・総理大臣の座を狙って内ゲバを繰り広げ始めている状況です。学級崩壊状態といっていいでしょう。

 こうした政治家同士の政治闘争の陰には霞が関の官僚たちも絡んできます。むしろ彼らが政治家を裏で操って気に入らない政権や政治家、法案を潰しにかかっていると見るべきかも知れません。彼らは日頃記事ネタ提供で餌付けしたマスコミの記者や左派系野党議員へのリークで世論を煽るようなことをします。

このブログでよく引き合いに出させて頂いていますが、菅政権で内閣官房参与を務められてきた高橋洋一さんが自身のツイッター上で他国と日本を比較した新型コロナウィルス感染者数のグラフを提示しながら『日本(の感染者数の状況)はこの程度の「さざ波」。これで五輪中止とかいうと笑笑』と発言したり、『日本は緊急事態宣言だといっても欧米からみたら戒厳令ではなく「屁みたいな」ものではないかな』とツイートしたために物議となってしまいました。

 

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マスコミは この高橋氏の発言をやり玉にあげ、氏は「人の命や平穏な暮らしを軽んじている」などと激しく非難します。しばらくするとツイッター上で「#高橋洋一内閣官房参与の辞任を求めます」という左派系活動家らしきアカウントによるハッシュタグデモがはじまりました。私はこれを見た瞬間にマスコミ+左派系ネット工作員財務省関係者(+C国共産党工作員)らによる高橋洋一潰しだと直感したのです。この騒動が起きたとき、緊急事態宣言の再々発令で需要が落ち込み、潜在GDPとの需給ギャップが広がっているので追加の経済対策やそのための補正予算計上の必要性を求める声が出ていました。高橋洋一氏も追加の財政出動が必要だと訴えていた論客のひとりで、その時期菅総理とも会見していました。何を話あっていたのかは公表されていませんが、追加経済対策の財源確保に関する菅総理からの質問に答えられていた可能性が高いと思われます。

高橋洋一氏は安倍前総理からの相談にも何度となく応じてこられ、昨年実施された臨時定額給付金国民ひとりあたり10万円の支給のときについても、国債を日銀が買い受けする形でその財源を確保できると高橋氏が答えたために実現できました。その後もコロナ禍で打撃を受けた事業者や個人を支援する補償金や補助金等の拡充を氏は提言されております。氏の「さざ波」発言を非難したり、高橋洋一氏や竹中平蔵氏のような新自由主義者は弱者の痛みはわからない」などと批判をしていた人の中には定額給付金の再支給を要求している人もいました。日頃高橋氏の発言をまともに聞いていない人が氏の内閣官房参与の辞任を求め、実際に辞職に追い込みましたが、その後に就任した内閣官房参与岸博幸氏でさらに緊縮色が強い人に入れ替わってしまったのです。今後給付金のような経済対策はますます実現性が低くなるでしょう。

高橋洋一氏に続いてマスコミやハッシュタグデモの標的にされたのが、西村康稔経済再生担当大臣です。

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氏はグルメサイトを通して飲食店の感染対策を評価させる「密告制度」や酒の提供をやめない飲食店に取引金融機関から圧力をかけさせるといった発言をしてしまい、これまで厳しい経営環境下で自粛に応じてきた飲食業界などから猛反発を受けました。この西村大臣の発言はとても許されないものですし、現実性がまったくない対策なのですが、これも財務官僚らが仕掛けた罠であることが浮かんできました。7月12日に国民民主党山尾志桜里議員がツイッター上で銀行などに飲食店の監視をさせる案について書かれた政府内文書を公開し、「発出前の事前調整は金融庁監督局監督調査室・財務省大臣官房政策金融課・経産省中小企業庁金融課の3部署と内閣官房でなされており、麻生大臣にはあげていなかったとのこと」とツイートします。

つまり金融機関を通した飲食店の監視という案は財務省系の金融庁監督局監督調査室と財務省大臣官房政策金融課、そして経産省中小企業庁金融課の官僚が作成したものであって、経産省は西村大臣に報告したけれども財務省系の財務省大臣官房政策金融課と金融庁監督局監督調査室は麻生財務大臣にこの文書を報告していないのです。結局元通産官僚であった西村大臣は迂闊にも部下からの提案を吟味しないまま発表してしまい、見事罠に嵌められたとみるべきでしょう。

この様子をみて元参議院議員の金子洋一さんは「財務省はわざと大臣の顔に泥を塗ったな。ひどすぎる。」とツイートされました。

金子洋一・前参議院議員(神奈川県選出)さんはTwitterを使っています 「財務省はわざと大臣の顔に泥を塗ったな。ひどすぎる。⇨財務省「強制力のないお願いで、一般的な感染対策を呼びかけてもらうものだ。圧力をかけるという指導の趣旨はなく、大臣にはあげなかった。:酒提供めぐる政府文書、財務省「要請だから大臣にあげなかった」 https://t.co/CPBzDS3O41」 / Twitter

先程申し上げたように西村大臣は経産省の前身である通産省の元官僚らしく、先走り気味でおっちょこちょいなところがある人だと聞きます。しかしながら緊急事態宣言下で休業や時短営業に応じてきた飲食店等に対する役所からの協力金支払いが滞りがちである中、西村大臣はその手続きの簡素化や先払い化を進めてこられています。しかし財務省側はこれを嫌がっていました。そうした西村大臣を潰すために財務官僚がマスコミや左派系の山尾議員に情報をリークし、さらにはツイッター上で高橋洋一氏と同様に「#西村康稔の更迭を要求します」というハッシュタグデモ工作員を使って煽り立てます。西村大臣への非難は左派系だけではなく保守系アカウントや自民党支持者まで加勢し、まんまと炎上作戦は成功したといっていいでしょう。山尾議員に文書をリークしたのは酒類取り扱いの飲食店業者への圧力発言は西村大臣だけの暴走ではなく、菅内閣全体が企てていたことだという印象を植え付けるためです。しかしながら山尾議員のツイートで発覚したのは政治家ではなく官僚の僭越行為でした。まるで旧日本軍の関東軍と同じです。

ここ最近のマスコミやネット上の動きをみていると、菅政権倒閣への動きがかなり加速してしまっているなという実感があります。多くの人の心の中にいまの政権を潰してスカっとしたい。あるいはそこまでいかなくても自民党政権にお灸をすえたいと考えている人たちがかなりいることでしょう。

しかしながらそうした火遊びは結局わたしたちの暮らしを破壊することにつながります。菅政権のあとの総理候補として名前があがっている人物をみますと、河野太郎氏、石破茂氏、岸田文雄氏などです。さらに先ほど述べた林芳正氏や小池百合子氏も総理の座を狙っているといわれています。彼らはいまの菅総理以上に増税・緊縮財政指向が強く、金融緩和政策についても消極的です。彼らが政権をとった場合、再び日本は慢性的不況と低成長体質に戻ってしまい、国力全体が低下して、私たちの暮らしも脅かされることになるでしょう。特に小池百合子氏や石破茂氏に政権を握られると国政や財政が東京都のようにメチャクチャに引っ掻き回される結果になると思われます。

安倍元総理の再々登板が最善のシナリオですが、いまの時点でその動きは感じられません。経済だけではなく外交・防衛の面までも考えたとき、いろいろ不満があってもいまの菅内閣の続投が最も現実的であるというのが私の見解です。

 

 更新が滞りがちになりますが、今後ともよろしくお願いいたします。

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暮らしの経済手帖 4周年

ここしばらく更新をサボっておりましたが、今日7月1日はこのブログサイトの前身である「暮らしの経済手帖」の開設記念日です。4周年目になります。

プロモーショナルキャラクター友坂えるも今日が誕生日という設定です。キズナアイちゃんより一日遅れです。

 

当方が経済政策に関心を高めはじめたのはリーマンショック後のことで、日本において1990年代から続く長期の慢性的デフレ不況体質からの脱却を目指すリフレーション政策について興味を抱き始めたのは東日本大震災の混乱と民主党政権の迷走の真っただ中にあった10年前のときからです。一時井上智洋さんや山口薫さんらが提唱していた公共貨幣導入や民間銀行による信用創造停止を主張する通貨改革を唱えるグループに傾倒しかけた時期があり、このときに「暮らしの経済手帖」を開設しています。しかしその後、こうした主張には無理や矛盾があることに気がつき、私の論調はニューケインジアン的な方向に回帰しました。国内でいう「リフレ派」と呼ばれる経済アカウントであります。

 

2012年末に発足した自民党第2次安倍晋三政権が、2%の物価目標(インフレターゲット)によって短期だけではなく中長期にわたって中央銀行の金融政策態度を市中に明示し、民間企業がより積極的な事業活動や事業投資を進めることを促して、雇用の拡大を計るリフレーション政策の考えを採りこんだアベノミクスを実施しました。それから9年近く経過しましたが、今もなお後任の菅義偉政権が引き継ぐかたちで政策継続されています。異次元金融緩和によって狙い通り企業の事業活動・投資の活発化と雇用の拡大を促すことができたのですが、そのピークと思われる2018年後半においても消費者の消費行動を積極的に転じさせたとはいえず、不況から脱したもののデフレ体質から完全に抜け出しきれていないままです。そうこうしているうちに新型コロナウィルスの感染拡大がはじまり、経済活動が麻痺しかけてしまいました。世界各国の政府と中央銀行は前例を見ないほどの金融緩和と財政出動を行って、民間の生産活動や自国民の生活を維持できるように支援をしています。

 

そうしたコロナ禍もワクチン接種の拡大によって収束化が見えかけています。本格的な経済活動の再開と人々の生活の再建を進めることを考えていかねばならない段階になってきています。今回のコロナ禍は通常の不況と異なり、独特の大きな歪を遺しています。その例のひとつが「K字回復」と云われる業種や所得・資産階層ごとに異なる回復状況の二分化です。モノなどの製造業種はいち早く回復したものの、飲食や観光・宿泊業、興業など対面サービス業の打撃や回復の遅れは深刻なままです。政府による財政的支援策も通常とは考えが異なり、行政側の裁量によって被害が深刻な人々に手厚く支援をするやり方をしないといけないのです。

金融政策の判断も同様です。次回お話するつもりですが、多くの人々が思うように単純な「物価が上がったら金融政策を引き締めないといけない」という政策判断は通用しません。大きな落とし穴があります。

 

今回のコロナ禍は経済ウォッチャーにとって実力や力量が試される大きな試練といえます。

4年目の「暮らしの経済手帖」はそれに挑まねばなりません。

 

更新が滞りがちになりますが、今後ともよろしくお願いいたします。

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三度目の緊急事態宣言発令

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前回「日本経済再起動に向けて ~護りから攻めのフェーズへ~ - 新・暮らしの経済手帖 ~時評編~ (hatenablog.com)」 という記事を書き、経済復興に向けた対策への転換について述べましたが、今日4月25日より東京、大阪、兵庫、京都の4都府県において三度目の緊急事態宣言の発令となってしまいました。5月11日までの短期集中型となりますが、今回百貨店やショッピングセンター、それに映画館など建物の床面積の合計が1000平方メートルを超える大型の施設にも休業要請を拡大しており、強い措置となっています。

政府は休業に協力する百貨店などの大型施設に1店舗当たり1日20万円、こうした大型施設に入居するテナントには1店舗当たり1日2万円の協力金を支給するとしていますが、こんなはした金でとても損失補填ができるわけがありません。百貨店の売り上げは一日数億円。4000~5000人の人が働いています。ナメているとしか言いようがないでしょう。百貨店・映画館・図書館などクラスターが発生していない場所をなぜ閉鎖するのか」など反発の声がかなり出ています。

news.yahoo.co.jp

今回の緊急事態宣言Ⅲについてはあまりに唐突で、さらに実効性も疑われていることが大きな不信と不満を呼んだのでしょう。

 

関西の場合はより感染力が高いとされる新型コロナウイルス変異株の新規感染者の増加が目立っていました。しかも高齢者だけではなく若い世代の人への感染が目立っています。重症病床が完全にオーバーフォローしており、軽症や中等症対象の医療機関が重症者を受け入れざるえない状況です。そのために吉村洋文大阪府知事は緊急事態宣言の再発令を国に要請するに至ったのですが、日本の場合、世界的にみても人口比でみたコロナ感染者数の割合がさほど高くないにも関わらず、医療機関の病床が逼迫します。現場スタッフの不足が慢性化し、疲弊してしまっている有様です。このような状況が生まれる背景については「コロナ感染拡大がひどくないはずの日本でなぜ医療崩壊の危機が叫ばれているのか | 新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~ (ameblo.jp)」という記事で書いています。

ameblo.jp

 日本の医療機関は他国に比べ民間病院の割合が非常に高く、さらには開業医の割合も大きいために、行政側が強権発動で「コロナ感染患者の受け入れをせよ」と命令することができません。結局公立病院の一部医師や看護師に負担が集中してしまう問題があったことなどを記事で書きました。この問題が解決する前に再び感染拡大が始まってしまったのです。

関西における感染拡大と医療機関の逼迫は深刻化しているのですが、問題は大阪府より先に緊急事態宣言の再発令を要請した東京都です。新規陽性者数は増えつつあったものの、入院患者数・重症者数ともに大きな変化はありません。医療供給逼迫とはいいがたい状況であるにも関わらず小池百合子都知事は緊急事態宣言の再発令を要請していたのです。不必要な私権制限であり違法の疑いが出ています。

news.yahoo.co.jp

 新型コロナ対策はただウィルスの感染者数を抑え込むことだけを考えればいいというものではありません。それによってウィルス感染による死亡者が減ったとしても、社会活動や経済活動の停止によって生活困難の状況に陥り、自殺や困窮死を増やしてしまったら元も子もないのです。

何度も経済活動を停止させることを繰り返すことによって、飲食業だけではなく小売販売業、興業など対面サービス業とその関連業が壊滅状態となり、コロナ禍が収束しても元へ回復しないという状況になることを私は恐れています。これを私はサプライサイドの壊死と呼んで警告してきました。人間の体に例えるとなんとか生命は維持できたけれども、手足の細胞が壊死してしまって切断しなくてはいけなくなったとか、重い後遺症を遺してしまったような状況になりうるということです。とくに小池都知事については民間のサプライサイドの壊死に対する思慮が及んでおらず、緊急事態宣言を政治的かけ引きの道具に使うような手口の汚さを感じます。

それはさておき、サプライサイドの壊死が起きないように政府は今年度の補正予算を編成し、新たな追加経済対策がいつでも打てるように準備しておかねばならないでしょう。現行の予備費5兆円に加え、20兆円規模の予算追加です。

日本においては相変わらず民間事業者や個人の苦境に目を向けず、財政規律のことばかりしか頭にない人たちが、大規模な財政出動を阻もうとしていますが、サプライサイドの壊死を引き起こす方がのちに大きな経済問題や財政悪化を招くことになりかねません。一部で1966~1980年代にかけておきたスタグフレーションの再来を懸念する声が出ていますが、これも原因は民間産業衰弱化というサプライサイドの腐食がもたらしたものでした。

この先一年以上はこうした混乱が続くかと思われますが、先を見据え日本経済再起動に向けて進むしかありません。

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日本経済再起動に向けて ~護りから攻めのフェーズへ~

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一ヶ月ぶりのブログ更新です。

今年令和3年4月13日に菅総理経済財政諮問会議を開催し、人材への投資(ヒューマン・ニューディール)、デジタル化の加速について話し合いました。

令和3年4月13日 経済財政諮問会議 | 令和3年 | 総理の一日 | ニュース | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)

菅総理が打ち出した「ヒューマン・ニューディール」はもともと2009年に社民党(当時)の辻元清美衆議院議員が国会で提案していたものでしたが、それをちゃっかりキャッチアップしております。それはともかくとしてすでにコロナ禍から立ち上がり業績回復を遂げている業界や事業者への労働力移動や失職者への就労支援策を積極的に打ち出していることを私は高く評価したいです。私が非常に素晴らしいと思っているのは月10万円の給付付き就労支援制度です。国民民主党玉木雄一郎代表が就労訓練つきのベーシックインカムを提案していたのですが、実質それに相応するものが給付付き就労支援制度です。かなり利用者が多く、追加で受講者数を増やしたようです。ネット上で「定額給付金を一律支給せよ」という声をあげている人たちが多くいますが、本来コロナ経済対策というものはもともとコロナ禍がなければ立派に経済的自立をしていた個人や事業者が職を失ったり、事業継続ができなくなることを防ぐことを目的としています。そういう主旨からいきますと、いつまでも公助にしがみつくのではなく、自助で再自立ができるように促していく必要があるでしょう。コロナ禍は不確実性が高く「一寸先は闇」ですが、それでもワクチン接種が進んでいきますと、感染収束が視野に入ってきます。公助から自助のフェーズに転じていると思うべきでしょう。あるいは「護りから攻めのフェーズへ」といっていいかも知れません。

 

これは昨年書いた記事でも引用したものですが、感染症拡大防止策と経済対策の基本的な考え方は下のIMF国際通貨基金)のウェブサイトに書かれています。爆発的な感染拡大が起きているオーバーシュート状態の対策(フェーズ1)と完全ではないけれども感染拡大の抑え込みができて、経済活動の段階的回復が見込める沈静期(フェーズ2)にわけて考える必要があるのです。

 昨年の今の時季は感染拡大予防を最優先とし、経済活動を全面的に自粛する緊急事態宣言を発令していました。営業休止や操業停止をせざるえなくなった事業者が倒産・廃業に追い込まれ、さらにはそこで働く従業員が解雇されないように政府が持続化給付金や休業補償、雇用調整助成金を支給したり、国民全員に一律10万円の定額給付金を支給しています。護りのフェーズであり、私は心臓外科手術のときに心肺を停止させて人工心肺で術中の生命維持をはかるのと同じだと形容していました。

しかしいつまでも人工心肺をつけたままにしておくわけにはいきません。なるべく早く自発鼓動や呼吸に戻し、術後の機能回復訓練を行っていく必要があります。長く経済活動を停めていると事業者がどんどん倒産・廃業に追い込まれて事業再開ができなくなります。失職者たちは勤労意欲を消失し職能を腐食させていくことになります。これを私はサプライサイドの壊死と呼んでいます。

感染収束が見えかけている現在においてとるべき対策は民間事業者の再興や失職者の社会復帰を促すものへと転じさせなければなりません。対面サービス業の打撃がかなり深刻なままでそこへの財政支援は継続しないといけませんが、既に回復傾向にある業界や事業者については積極的な事業拡大や事業投資を行っていただき、失職者の再雇用を促していく必要があります。また失職や著しい所得減少に見舞われてしまった方についても成長産業や企業への転職やそのための就労訓練制度を利用していただき、経済的再自立を目指していただく段階になっています。

これまで政府が行ってきた事業者向けの持続化給付金や補償金は事業をとりあえず継続できるようにするという護りの政策でした。金融政策もそうです。収入激減の中での固定費の支払いや銀行による貸し渋りなどで資金づまりが起きて倒産したりすることがないようにするという意味合いが強かったです。あと金利を抑え込んで事業者が抱え込んだ債務負担を軽減する役目もありました。しかし感染収束期に転じてきたならば財政政策や金融政策の意義や目的が変わってきます。新たな事業への挑戦を促すためのものとなっていきます。

昨年秋に自民党内の勉強会である経世済民政策勉強会の提言について紹介しました。この提言書についてはマスコミやネットで提言のひとつである定額給付金再支給要請のことばかりが注目されてしまったのですが、それよりも金融緩和政策の強化や医療機関と対面サービス業への集中支援、GoToトラベル延長、防災インフラ整備事業に力点がおかれていたものです。

給付金の追加だけではない経世済民政策研究会の提言 - 新・暮らしの経済手帖 ~時評編~ (hatenablog.com)

metamorphoseofcapitalism.hatenablog.com

 下は昨年10月の提言書です。

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 しかしこの勉強会は今年3月にも開催され、新たな政策提言書も作成されました。

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前回のときと同じく金融緩和政策のコミットメント強化や金融機関による貸しはがし防止と積極融資促進が提言されていますが、任期中の増税を行わないことのコミットメントや成長指向的な経済対策を打つことも盛り込まれています。定額給付金や持続化給付金については一律ではなく低所得者層や中小企業など的を絞ったものとなっていました。コロナ禍は特定の業種に偏って被害が集中してしまう特殊性を考慮したものとなっています。

ネット上の経済政策についての発言を読んでいて感じることですが、上で述べたような状況や段階に応じて政策対応にしていかねばならないということを理解している人が少ないです。昨年春に行われた緊急事態宣言Ⅰと今年初頭に行われた緊急事態宣言Ⅱはやり方や考え方が異なっており、前者は全般に、後者は局所的に実施されています。未だに「定額給付金を一律支給せよ」と言っている人たちはナンセンスです。先に述べたように打撃を受けた業界が局所的に集中してしまっているのが、今回の危機の特徴です。逆に感染拡大期のときにも関わらず「消費税を減税もしくは廃止せよ」とか「もっと規制緩和をしろー」と主張する人たちも的外れです。今後新コロナウィルス感染が抑制され、経済活動が本格的に再開できる状況に転じたときには給付金などよりも減税や規制緩和といった政策が活きてきます。

私はこれまで金融政策を重視する姿勢ととってきましたが、新コロナ感染拡大期においては財政政策の方に力点をおいています。感染収束期が見えてきたならば再び金融政策主導へと態度を切り替えていくつもりです。

財政政策についても、個人や事業者を庇護するかたちのものから、成長指向型へと切り替えていかねばなりません。今回の危機で政府は巨額の財政出動を行ったために、財政危機やら物価や金利高騰を危ぶむ人たちが多いですが、これについて私はあまり心配はしていません。むしろ今後もしばらく積極財政を進めるべきだと考えています。しかしながらその内容は企業や個人の経済的自立を促すものでなくてはなりません。サプライサイドの壊死を防止するだけではなく、強化を目指していかねばならないでしょう。財政支出が多少増えて金利上昇や物価上昇があっても、それを上回る成長があれば、わたしたちの生活に大きな支障を与えることはないでしょう。今後の民間事業の成長と発展と噛み合うかたちの財政支出となっているかどうかが大事であると私は思います。

 

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定額給付金よりも給付付き税額控除制度導入を目指した方がよいのでは

前回「個人向けの給付金ではなく事業者向けが多い日本のコロナ経済対策 - 新・暮らしの経済手帖 ~時評編~ (hatenablog.com)」という記事を書きました。

metamorphoseofcapitalism.hatenablog.com

アメリカでは3回目の定額給付金支給が実施されていますが、日本の場合、全国民一律給付で行われたのは昨年2020年春の1回限りです。その後も給付金の支給が実施されていますが、困窮状態であるひとり親世帯に限定されており、額もかなり低めです。2021年3月現在政府与党がやはり給付金の支給を検討しているといわれますが、ひとり親だけではなくふたり親世帯に拡大されただけで、かなりしょぼくれた内容のものにとどまっています。

個人向けの定額給付金出し渋りは財務官僚の抵抗がかなり強いこともありますが、日本の場合は個人向けの給付金支給よりも、就労者を雇用する民間事業者を支援するかたちで倒産や廃業、従業員解雇を防ぐことを優先した財政出動を行っています。日本の財政出動の規模自体はGDP比でみたとき世界トップレベルです。

「企業ばかりではなく個人の生活支援を優先しろ!」と言いたくなるかも知れませんが、私はいまの事業者優先型の財政支援を採った方が今回得策ではないかと考えています。本来潰れるはずのなかった企業をどんどん潰してしまったはいいが、それに代わる新しい産業や企業がすぐに育つのか疑問です。さらに労働者が解雇された場合、別業種への転職とかを余儀なくされるかも知れません。そうなると職業訓練の時間やコストが生じてきます。私は残せる既存の企業や産業、そして雇用を温存するやり方の方が、コロナ禍収束後の経済活動回復が早く進むと思います。結果的に「はやい・やすい・うまい」となるのではないでしょうか。

そういう意味で私は定額給付金固執することは決して望ましいことではないと思います。コロナ禍で大きく所得を減少させてしまい、経済的に困窮している人が多いことは私も承知していますが、仮に定額給付金を再度支給したところで、彼ら・彼女らを支え続けることができるでしょうか?数万円、10万円はあっという間に消えてしまうと思います。全国民に一律10万円を支給した場合の予算は13兆円です。私は財政規律よりも経済重視の立場ですが、どんどん財政を膨張させてもかまわないという考え方はもっていません。なるべく高い経済波及効果が望める財政支出をすべきだと考えます。経済政策の基本的な考え方は雇用の維持です。

それともうひとつ、昨年の緊急事態宣言のときと今回のときとでは状況が大きく異なっている点を忘れてはなりません。昨年の場合は新型コロナウィルスの感染経路や予防方法がはっきりわかっておらず、すべての産業の経済活動を最小限に抑えていました。経済的打撃は全産業・全国民に及び、一律で現金を支給する必要性がありました。今回の場合は自粛範囲を飲食に絞っており、経済打撃を受けた業界についても対面サービス業に集中しています。経済支援策もそこに集中投入した方が効果的です。

もうひとつ昨年全国民一律支給にした背景は、経済困窮状態に置かれている人を行政機関がどう選別するのかという問題があったからです。また支給の緊急性も求められていました。支援を受ける側はコロナ禍で所得が急減したことをどうやって証明するのかという問題がありました。しかしながら現在の場合、確定申告等によって所得状況が把握しやすくなっています。これに基づいて著しく所得が落ち込んでいる人に集中的に財政支援を行うことができるでしょう。

長々と書きましたが、定額給付金という手法が必ずしも最善の選択であるとはいえない状況にシフトしています。私はこれまでどおり事業者支援型の財政政策を継続すると同時に給付付き税額控除制度導入の議論へと軸足を移していった方がいいと考えます。この制度は既に様々な国で導入されています。

 とはいえどやはり家計が相当切羽詰まった状況に置かれている人がかなりの数に上るでしょう。政府は緊急小口資金制度を用意していますが、既に100万件以上もの貸付が行われています。実際にはこの10倍以上生計に困った人たちが存在するでしょう。

「緊急小口資金」100万件超 コロナ打撃、生計維持困難 | 共同通信 (kiji.is)

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緊急小口資金制度は一応融資という形になっており、返済が厳しい場合は償還免除もあるようですが、借金は借金です。できればあまり使いたくないという気持ちが働いてしまいますし、申請手続きは申請者と受け付ける行政機関側双方に事務負担が重く圧し掛かってきます。そういう意味で定額給付金のように手軽に申請しやすい制度で支援してほしいという声が高まるのは当然のことでしょう。

 そこで着目すべき制度案が給付付き税額控除制度です。確定申告をされた方は承知のことですが、税には基礎控除が設けられております。いまの日本の所得税制ですと著しく所得が低い人は非課税にはなりますが、基礎控除以下の所得だからといってお金が支払われるような仕組みにはなっていません。給付付き税額控除制度の場合は控除分以下の所得ですとお金が入ってくる仕組みです。

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 いまのコロナ禍や災害、深刻な経済ショックで所得が激減した人に対し、きちんと税申告すれば控除額に満たない分の所得が補填される仕組みです。確定申告だけではなくマイナンバー制度を活用することで、公正な税徴収と税配分を実現できます。菅内閣が推進しているデジタル庁との親和性が高いでしょう。もちろんコロナ禍のように急激に所得が落ち込んでしまうような場合ですと、給付までのタイムラグが発生するので緊急小口資金制度や定額給付金のような制度と併用する必要が出てきますが、生活に困窮しているにも関わらず、公助がまったく受けられないという状況を少なくすることが期待できます。

それともうひとつ私が給付付き税額控除制度を推す理由は厚生労働省地方自治体の官僚たちの業務負担軽減というのもあります。コロナ禍が起きる前より霞が関の官僚たちは信じられないほどの超過勤務を強いられてきました。元厚生労働官僚の千正康裕さんが「ブラック霞が関」という本を著され大きな反響を呼んでいます。

給付付き税額控除とマイナンバー制度、デジタル庁を組み合わせることで、全国民の正確な所得データを捕捉し、それに基づいて給付が行えるシステムをつくることで、効率的な給付が可能となり、各行政機関の職員の事務負担が軽くなるのではないでしょうか。さらにいえばこのシステムが平時において整備されており、所得が低い人に限定して給付できるようになっていれば13兆円ではなく4兆円の政府支出で済むはずでした。

参考

なぜ特別定額給付金に13兆円かかったのか?|千正 康裕|note

 所得が低い人たちに手厚い支援を継続していくためにも、定額給付金の再支給よりも給付付き税額控除制度の実現を目指していくべきだと私は考えます。長い目でみればこの制度は「はやい・やすい・うまい」でしょう。

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個人向けの給付金ではなく事業者向けが多い日本のコロナ経済対策

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ここ最近個人向けの定額給付金の再支給を求める声が高まっています。これまで菅政権は一貫して定額給付金や持続化給付金の再支給を行わない考えを示してきました。いつも自分が視ている高橋洋一chでも「日本の経済対策は十分?給付金もう一回はないんですか?」という質問がきて、高橋氏は日本とアメリカで雇用や経済対策の考え方が異なるという解説をされています。

www.youtube.com

動画の質問のようにアメリカは個人向けの給付金を3回以上に支給しているのに、日本は2回目の給付金がない。それ以外にたいしてもらっていないし、経済対策が不足しているようにみえると思う人が結構いるかと思われます。しかし実際には日本国政府の経済対策の規模はGDP比でみた場合、世界で1位か2位という水準です。自分個人にまわっていくるお金がたいしてないから「日本は財政を出し渋っている」と思いがちですが、日本政府はかなり大盤振る舞いをしています。

ただし日本の場合はアメリカやヨーロッパなどのように個人に対し現金を直接給付するのではなく、事業者にお金を回すスタイルになっています。労働者を雇う事業者が倒産・廃業したり、解雇に踏み切らないようにし、失業増大を防止するという考えです。高橋洋一氏が述べているように経済政策で最も重要なことは雇用を守ることです。会社がどんどん潰れて人を雇えなくなってしまうことを回避することが基本です。

アメリカなどの場合は「どんどん会社を潰してしまっても構わない。失業した人の所得は政府が補償すればいい」と割り切った考えで個人向けの給付金を何回も支給しているのです。

ここは私の見解となりますが、今回の場合は企業の倒産・廃業を防止することを重視する日本式?のやり方がいいと思っています。潰れないはずの会社を潰さない。失業しないはずの人を失業させないという考え方を採るべきです。会社がどんどん潰れても新興産業や企業が次々と芽生えてきて、新しい雇用を生み出す状況ならばアメリカ式でもいいのですが、日本の場合だと一度会社が潰れたら潰れっぱなし、失業したら失業しっぱなしの状況に陥りかねないと私は想像します。仮に新しい産業や企業が興されるとしても順調に収益を伸ばせるまで長い時間がかかるでしょう。技術継承の問題もあります。その間生産活動や雇用回復までかなりのタイムラグが発生することを想定しないといけません。あと解雇された労働者たちが別の産業や企業へ移って活躍できるようにするには就労訓練などの時間やコストがかかります。それは大きな時間のムダでしょう。本来であれば存続可能な既存企業を温存し、雇用契約を継続させておく方が「はやい・やすい・うまい」経済回復になると思います。

コロナ経済対策として考えた場合、個人向けの定額給付金が最優先とすべきものなのかというとそうではないのです。もうひとつ生活困窮者への支援策として考えても、やはり定額給付金は最善解ではありません。昨年2020年春に行われた定額給付金については行政側で支給対象者を選別している余裕がまったくなく、それをすること自体が感染拡大を招く恐れがあったために択ばざるえない方法でした。緊急の一時金といった性格のものです。そして昨年と今では状況がかなり異なることに注意が必要です。今年1月からはじまった2回目の緊急事態宣言ですが、これは営業自粛対象を飲食店に絞り込むなどピンポイント型になっています。経済的損失を被る業界も対面サービス業に偏っています。いちばん損失が大きな業界や事業者に財政を振り分けていくやり方の方が必要なところへ手厚く支給する方が望ましいでしょう。

何度か紹介してきましたように、既に政府は事業者向けだけに限らず個人向けについてもさまざまな支援策を用意しています。

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しかしながら個人向けの支援策については政府側がかなり積極的に広報しても制度の周知が広まらなかったり、制度対象から外れて利用できなかったなどの理由でいまいち利用が進んでいなかったりします。かなりたくさんのメニューが用意されているのですが、正直細かい制度が濫立しすぎていて縦割りの印象を与えます。

一律支給の定額給付金の再支給を求める人たちは縦割り型の支援制度から漏れてしまう生活困窮者が多く出てしまうことを指摘しますが、その点は一理あると私も思います。

今月3月に入って政府与党側から新型コロナウイルス禍で困窮する子育て世帯に臨時の給付金を再支給する検討するという報道が流れました。過去2回の支給は低所得のひとり親世帯が対象だったのですが、新たに2人親の世帯も加えるとし、金額は従来と同じく第1子5万円とする案を軸に調整するようです。支給対象をかなり限定してしまい、おまけに支給額もかなり低いので、かなり不満が出てくるでしょう。

news.ameba.jp

財務省定額給付金・持続化給付金への抵抗がかなり強いようです。

www.nikkei.com

引用1

 新型コロナウイルスとの闘いで非常時の財政運営が続いている。1人10万円の特別定額給付金や中小企業向け持続化給付金の再実施を求める声がくすぶる。財務省はこうした現金給付に反対し、その脱却が財政正常化に向けた一歩だと位置づける。

引用2

財務省は使途を限定せず幅広い対象に配る給付金は一時的な需要の穴埋めにすぎないとみる。給付金の繰り返しが定着すると、財政再建の道筋を描けないと懸念する。持続化給付金を終了するため、代わりに業態転換に取り組む中小企業に最大1億円の補助金を導入したのは「給付金よりも目的がある補助金」という財務省の考えがにじむ。

 引用3

政府内でも3月中旬にまとめる緊急支援策に困窮世帯向けの給付金を盛り込む意見が出る。矢野氏は「必要だというエビデンス(証拠)を示すべきだ」と訴える。財政再建に向けた「譲れない一線」を守ろうとする財務省の攻防は続く。

財務省の役人たちは政権与党側が用意した制度にあれこれ細かい条件をつけて、制度を利用させないように仕向けているのではないかと思えてなりません。これですと困窮しているにも関わらず制度の対象から外れて救済されないという事態を生んでしまいます。

定額給付金にこだわる人たちはこの漏給を嫌がっているのでしょうが、その問題を克服し、さらに必要な人に割と手厚く継続的に現金支給ができる制度があります。給付付き税額控除制度です。

metamorphoseofcapitalism.hatenablog.com

最近ベーシックインカム導入を推す声も強まっていますが、これですと既存社会保障制度の再編や様々な誤解と偏見によって実現性がかなり低いです。しかし給付付き税額控除はすでに数多くの国が導入しています。

この制度を使えば税申告で所得が著しく低い人を捕捉し、公正に現金給付を行うことができます。

定額給付金を再支給してもらえるにしても、せいぜいあと1回か2回です。これに執着するよりも、必要な人に継続支給できる給付付き税控除の実現を訴えた方が得策だと自分は考えます。この制度は厚生労働官僚や地方自治体職員らの業務負担軽減にもつながり、財政負担の面でもさほど重くない制度です。(約数兆円程度)日本においてこの制度が無かったために全国民10万円一律給付で12兆円をかけて定額給付金を支給せざるえませんでした。給付付き税額控除の場合ですとそこまでの財源を必要としません。給付付き税額控除の方が結局安上りではないでしょうか。

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緊急事態宣言再延長がもたらすサプライサイドの壊死の進行

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今年1月から新型コロナ感染数増加によって政府から再発令された緊急事態宣言ですが、先月1ヶ月間今日3月7日まで延長されることになっていました。 もうすぐそれが解除され、休業や営業時間の短縮などで営業活動を自粛し続けてきた事業者が、その再開に向けて奮起しようとしていたことでしょう。その矢先に、東京都がコロナ病床数を過少報告していたために都内の病床使用率が100%前後と満床状態が続いているという誤情報が流れてきまいました。結局政府側は信憑性の高いデータがない中で緊急事態宣言解除の判断をしなくてはならなくなり、もう2週間延期という決断を下さざる得なくなったのです。それから都が国基準のコロナ病床数を大幅に上方修正し、病床使用率が86%から33%に急減しました。

小池都知事はどうも政府に緊急事態宣言を延長してもらいたがっているようで、そのための下らない小細工に見えます。かなりあざといです。このようなことは今回だけではなく昨年の緊急事態宣言中もやっていたことで、入院患者を過大に発表する一方、確保病床を過少に報告していました。延長が決まった直後に大幅な修正を行い、100%超と報じられていた病床使用率が、実は5割未満だったのです。

news.yahoo.co.jp

小池都知事の身勝手な行動によってゴールポストが動かされ、それに政府も振り回された格好になります。政策判断がおかしなかたちで歪められてしまいました。これによって大きな損害を被るのは民間事業者や国民個人です。これまで2か月ほどの辛抱だと思って耐えてきた人たちに失望感を与え、厭戦気分を広めてしまいます。これ以上の自粛期間延長によって事業継続を断念して廃業を選択する事業者が出てくる可能性もあるでしょう。多くの国民の間にも「もうコロナ感染の収束はないのではないか」というあきらめの気持ちがひろがってしまい、このままずっと陰鬱な状態で過ごすしかないという思い込みを深めます。延々と何時間も重い荷物を背負って歩かされてきて、もうすぐ終点だと思っていたところで「まだ終点ではなかったです。もう~km歩いてください」などと言われたら一気に疲れが襲ってくることでしょう。完全に心が折れて挫けてしまいます。それと同じです。

今回のコロナ禍は不確実性がものすごく高く、先の状況がまったく見えないところに始末の悪さがあります。いまの鬱屈した不安定な状況が永久に続くのではないかという不安と絶望感が人々を襲います。コロナ禍がはじまってから人と人の接触機会が減ってしまい、孤立感や疎外感を覚える人が少なくないでしょう。女性しかも若い方の自殺が増えているといわれます。今回の緊急事態宣言の再延長がもたらす禍根は解除後にも大きく深く遺される危険性が高いと私は思います。

 

私はこことは別の経済ブログである基礎知識編の中で「サプライサイドの壊死」をテーマに3本の記事を書きました。「サプライサイドの壊死」とはモノやサービスといった実物財を生産したり供給する活動が萎縮し、産業が衰退していくことです。雇用の不安定化やデフレによる賃金低下などによる労働者の就業意欲の衰弱や職能の腐食も進みます。これは経済活動の死、資本主義経済・自由主義経済の死に結び付くものです。

民間企業がどんどん弱っていき、優れたモノやサービスの生産活動ができなくなっていくことはやがてかつての社会主義国家と同じようにモノやサービス不足状態に陥り、最終的には悪性インフレを招くような状況を生みだしかねません。

日本に限らずアメリカやヨーロッパなどではコロナ禍で民間産業が死滅することを回避すべく、政府や中央銀行空前絶後財政出動や金融緩和政策を実行し、事業者や国民個人を護ってきました。この緊急措置は心臓外科手術に例えると一時的に心肺を停止させて、人工心肺で術中の患者の生命を維持してきたようなものです。ただしこのようなことを2年、3年も続けるわけにはいきません。国家財政規律の問題よりも、長い期間人々が生産活動から遠ざかることでサプライサイドの壊死が進むことの方が深刻です。先の見通しが立たないことで事業継続を断念して廃業したり、失業を機に就労意欲を失って生産活動に人々が戻らなくなることが本当の危機です。

日本の政府は世界的にみてもかなりの規模の財政出動を行って、民間事業者を必死に支え温存させることに力を尽くしました。しかし自粛期間があまりに長期化してしまうと民間事業者の生産基盤や労働者の職能がどんどん壊死していきます。そうなるとお金で解決ができない問題になってきます。一度潰した会社や店はコロナ危機が収束しても元に戻りません。凍傷で壊死した指や鼻先、あるいは心筋梗塞で壊死した心筋と同じことになります。小池百合子という人間はそのことをわかっていないのです。

国会で新年度予算案の審議が進みましたが、今回の緊急事態宣言再延長で有効需要不足がさらに拡大し、失業増加の危険性が高まっています。当然それを埋めるための新たな財政負担が求められるでしょうが、やむを得ないことです。腹立たしいことですが、打つべき手を着実に売っていくしかありません。

 

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