新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

社会保障・福祉・医療問題

人口問題と国家財政危機論に振り回されるな ~社会保障・医療・福祉問題編の結びにかえて~

今回で「 社会保障・福祉・医療問題 」編は最終回とします。社会保障制度の概略から歴史、社会保障財源や医療・介護福祉・生活保護の各問題について追ってきました。一般の人が持ちがちな社会保障制度に関する誤解について解く目的でずっと記事を書いており…

経済学無視で損をしてきた医療・福祉関係者

生活保護の話を書き終え、「社会保障・福祉・医療問題 」編は今回を含めあと2回とします。今回は日本の医療や福祉関係者の多くが経済学に冷淡であることを批判します。 自分も20数年~30年前のことですが、福祉学科の大学生でした。高校時代から革新左派系の…

生活保護費負担の抑制はマクロ経済政策が第一

長くなった生活保護の話ですが、今回で締めくくりとします。最後はマクロ経済と生活保護の関係です。 これまで述べてきましたように生活保護は国によって何度も受給抑制が行われてきました。ここ数年で一番おぞましかったのは2012年に起きた生活保護バッシン…

生活保護の現物支給化・収容主義化はナンセンス

長く続けた生活保護の話はあともう少しだけです。今回は「誤解と偏見だらけの生活保護問題 」や「かなり湾曲されて伝えられている生活保護不正受給の実態 」で書いた2012年の激しい生活保護バッシングのときに多く出てきた保護費の現物支給化や保護利用者を…

逆に生活の自立と再建を損ねかねない生活保護・補足性の原則

生活保護という制度が抱える問題をずっと取り上げ続けていますが、今回は「生活保護制度の4原則と保護費の算定 」で述べた補足性の原則が保護利用者の生活再建や自立を損ねかねない問題について述べます。 もう一度補足性の原則について説明させていただく…

福祉事務所ケースワーカーが置かれている過酷な状況

非常に書くことが多い生活保護のことですが、今回はその給付を行う福祉事務所(役所内では「福祉課」などと呼ばれている)のケースワーカーが置かれている状況について話していきます。生活保護を利用している人たちの状況は大変なものがありますが、給付す…

役所の裁量に左右されてしまう生活保護の受給資格

前回「簡単にもらえない生活保護 ~保護利用を妨害する水際作戦と硫黄島作戦~ 」は生死に関わるほど極端な貧困状態に追い詰められたとしても、生活保護がすんなり簡単にもらえるものではないということを書きました。過去数十年の間に生活保護を申請しても…

簡単にもらえない生活保護 ~保護利用を妨害する水際作戦と硫黄島作戦~

今回は生活保護問題で最も大きなものである漏給についてです。様々な理由でひどい貧困状態に陥っているにも関わらず、生活保護による支援が行われていない状況が漏給問題です。多くの人たちは不正受給のことばかり気にしますが、保護が必要なのに受けられな…

外国人の生活保護受給状況はどうなっている?

前回記事「かなり湾曲されて伝えられている生活保護不正受給の実態 」で片山さつき議員や在特会といった極右活動家たちは在日外国人が税金も払わず生活保護を受給し、寄生するかのように日本国民の財産を収奪しているといった悪質なデマを流し、煽動していた…

かなり湾曲されて伝えられている生活保護不正受給の実態

生活保護の話はもう既に6回目に入りますが、今回は一般の人たちが最も関心を持っていると思われる不正受給問題です。最初のときにも書きましたが2012年に自民党の片山さつき議員や産経新聞などが煽動する形で、生活保護の不正受給問題が大きく取り上げられ、…

生活保護・医療扶助を喰い物にする行路病院とぐるぐる病院

ここからいよいよ生活保護に関する各諸問題について細かく斬り込んでいきます。まずは医療扶助からです。 「生活保護に関する統計を見てみる 」でも述べたように、生活保護で行われる扶助で最も多くの給付が行われているのは生活扶助ではなく、医療扶助(公…

生活保護に関する統計を見てみる

今回は生活保護の受給世帯数や支給総額の変化やどういう扶助が多いのか、誰が受給しているのかといった統計を確認していきたいと思います。「誤解と偏見だらけの生活保護問題 」で述べたように生活保護の関して多くの人々は、基礎的な統計すら確認せずに、強…

生活保護制度の4原則と保護費の算定

生活保護制度の話は3回目ですが、今回は生活保護制度の基本的な考え方を説明しましょう。 前回の後半でも少し触れましたが、現行生活保護制度は4つの原理と原則で成り立っています。この原理と原則をまとめると ・無差別平等の原則(生活保護法第2条) ・…

生活保護制度はなぜ生まれた?

前回から生活保護問題に入りましたが、この制度のはじまりから基本的な制度の考え方、給付の仕方等について述べていきます。ネット上の会話とかを読むとかなり生活保護制度のことを理解していないのではないかと思われる発言が見受けられます。 まずは簡単に…

誤解と偏見だらけの生活保護問題

日本の社会保障制度の基本体系から歴史をはじめ、年金ならびに医療保険問題、介護福祉問題、そして前回・前々回の保育問題を取り上げ続けた「社会保障・福祉・医療問題 」編ですが、今回から最後のテーマである生活保護問題に入っていきます。 生活保護問題…

需要と供給の関係が歪な保育・福祉業界 ~官製統制市場の矛盾~

前回「荒廃する保育所のひどい実態」に続く保育所の運営問題です。保育需要がどんどん増加していく一方で、サービスの供給側である保育現場が荒廃し、粗雑な保育が行われていたり、保育士がどんどん離職していくという惨状について述べました。今回は経済学…

荒廃する保育所のひどい実態

医療や介護福祉問題に続き、保育所問題について取り上げます。2016年にある匿名SNS上に書かれた「保育園落ちた日本死ね」発言によって保育所不足による待機児童問題が多くの人々の注目を集めて議論になりました。しかし保育行政は待機児童問題だけではなく、…

福祉を喰い物にする天下り役人と介護福祉ブローカー

介護福祉問題の話はそろそろ終えようと思っていますが、介護福祉施設の理事や施設長などに天下り、何もしないのに高給だけを盗ってしまう天下り役人や介護報酬ならびに補助金等を貪ることしか考えない福祉ブローカーたちについて述べておきましょう。 再度リ…

寝たきり化や認知症悪化を防止する北欧流の高齢者福祉システム

ここまでずっとブラック医療施設や介護施設の問題について延々と記してきました。病院ないしは介護施設というハコだけをつくって重度の入院患者もしくは入所者を押し込め、診療や介護報酬だけを稼ぐために人件費などのコストを抑え込み、寝たきり化や認知症…

介護施設経営者ならびに施設長を変えなければ福祉はダメになる

前回「施設に紛れ込むブラック介護職員・看護師 ~病院や介護施設で起きる暴力・殺人 その3~ 」では介護福祉施設に著しく人格に問題があったり、漢字がまともに読めない・書けないなど知性や能力が著しく劣った人物が職員として流れ込んでしまっていること…

施設に紛れ込むブラック介護職員・看護師 ~病院や介護施設で起きる暴力・殺人 その3~

「病院や介護施設で起きる暴力・殺人」の3回目で、前回「介護絶望工場 ~病院や介護福祉施設内で起きる暴力・殺人 その2~ 」は収容主義・管理主義の施設経営が職員の精神を蝕む構造について述べました。今回は逆に元々人格的・能力的に著しい問題を抱えた…

介護絶望工場 ~病院や介護福祉施設内で起きる暴力・殺人 その2~

前回記事「病院や介護福祉施設内で起きる暴力・殺人 その1 」の続きで、医療や介護福祉施設内で起きる暴行・虐待・性犯罪の発生要因について推察をしていきますが、今回は施設側の問題を中心に述べていきます。有料老人ホーム神奈川県のSアミーユ川崎幸町で…

病院や介護福祉施設内で起きる暴力・殺人 その1

暗く重い話を続けます。今回は病院や介護福祉施設内で起きた暴力や殺人事件の発生です。 こうした事件のニュースは結構な頻度で入ってきます。今日もまた自分の住む愛知の有料老人ホームで女性職員が入所者に「死ね・動くな・うるさい」と暴言を吐いたり、平…

寝たきり老人をつくってしまう病院や介護福祉施設

前回は患者を飼い殺しにしてしまうブラック病院について取り上げてみました。 「ミナミの帝王」40~41巻「白い闇」より 身寄りのない長期入院患者をかき集め、人件費や光熱費などの徹底的なコストカットを行い、劣悪な環境でベットに縛り付けておくという非…

患者を殺す劣悪なブラック病院

先日岐阜の「Y&M 藤掛第一病院」で高齢の入院患者5人が相次いで熱中症で死亡するという事件が発生しました。 朝日新聞 いまだ真相語らぬ病院側 岐阜の患者5人死亡から1週間 産経新聞 岐阜の病院入院患者、5人目の死者 熱中症か エアコン故障の3階の病室 …

医療費削減が目的化してはならない地域医療

医療に関心を持っている人ならば長野県は日本でも一、二を争う長寿県であることを知っているかと思われます。今年2018年は日本一の長寿県の座を男性については滋賀県に譲りましたが、女性についてはやはり長野県が日本一の長寿県です。長野県の県民一人あた…

医師たちをがんじがらめにする保険医療材料制度と診療報酬制度

前回終末期医療の在宅緩和ケアにおける酸素吸入療法で終末期がん患者や老衰による肺炎患者など急性の呼吸困難に対する保険適用がない問題について取り上げました。国や厚生労働省が医療費圧縮の狙いもあり入院から在宅医療にシフトさせようとしているものの…

臨床現場とズレている保険医療材料制度と診療報酬制度

前回は終末期医療問題について触れましたが、そのことについて調べているときに気になる問題を見つけました。それは在宅緩和ケアにおける呼吸困難時の在宅酸素療法と医療保険から支払われる診療報酬のことです。 終末期のがん患者さんはそれによる疼痛の他に…

終末期医療について考え直す

久々のブログ更新です。「社会保障・福祉・医療問題 」編は年金保険問題から医療保険問題に話を移しております。現在日本はどんどん国民医療費が膨張してきたのですが、その要因として前々回と前回に取り上げた非常に高コストな先進医療の他に老人医療費の増…

たったひとつの抗がん剤(オプジーボ)が国を滅ぼすなんてありえない

前回の「高度先進医療が医療保険制度を破綻させるのか? 」にて薬効は極めて高いが、薬価が超高額な新薬が登場している話を書きました。実例をあげればC型肝炎の特効薬とされているソバルディやハーボニー、画期的ながんの免疫治療薬といわれている小野薬品…