今年6月に金融庁が 「年金以外に夫婦で2000万円の貯蓄が必要」という主旨の報告書を出したことがきっかけで騒ぎがおきました。左派系野党はもちろんのことですが、保守系の方からも年金や医療などの社会保険料の高さと世代間格差に関する不満の声が出てきております。
先日8月27日に5年に一度の公的年金の財政検証が発表されたのですが、これでまたひと悶着起きることでしょう。
現在の年金や医療などの社会保険料負担額は相当重いものになっています。令和元年度の国民年金第1号被保険者及び任意加入被保険者の1カ月当たりの保険料は16,410円。年額20万円近くも支払わないといけないのですから、たまったものではありません。さらにここへ健康保険料やら介護保険料が積み重ってきます。毎月勤め先からもらえる給料の中からごっそり社会保険料が差し引かれているのを見るとげんなりすることでしょう。
そういうこともあってか、ここ最近社会保険料ではなく、消費税で公的年金や医療費を賄うかたちにして、さらにはそれらの給付額を削って、若い現役世代の負担を減らせということを言っている人が増えてきました。
しかしこういう話についてはうっかり乗っかるべきではないと私は警告したいです。消費税負担方式に切り替えるなり、公的年金・医療保険の給付削減を行うことで、若年現役世代の負担が軽くなるわけでも、痛税感が薄らぐわけでもないのです。保険制度や税制を弄りまわしても実は意味がありません。
国民ひとりひとりの医療費や介護などの負担の重さを推しはかる指標はGDP(国内総生産)の中に占める国民医療費や介護費の割合です。注意すべきは公的医療保険や年金の給付額ではありません。自己負担分も含めるべきです。政治家や役人、評論家たちは公的年金や医療保険の給付額膨張やその削減方法の話ばかりしますが、はっきりいって役人目線です。公的年金や医療保険の給付削減を行って、保険料の引き下げを行っても、自己負担がその分増えるだけです。ここに気がついていない人が多いのです。
こういうことを言うと見も蓋もないのですが、わたしたちは重い医療費や介護費の負担から逃れる術はありません。
以前竹中平蔵氏が「みんなの介護」で連載されている「賢人論」で
”今の日本の問題は、年を取ったら国が支えてくれると思い込んでいることです。そんなことあり得ないんですよ。90歳、100歳まで生きたいんだったら、自分で貯めておく。それがイヤで、国に面倒をみて欲しいんだったら、スウェーデンみたいに若い時に自分の稼ぎの3分の2を国に渡すことです。”
などと言い放って、いつもの如く”炎上”してしまったのですが、私は極めて当たり前のことを話しているに過ぎないと受け止めています。
現在の公的年金保険や医療保険の保険料のかわりに消費税で賄うかたちにすると現役世代の負担が和らぐかのように期待している人たちが結構いますが、仮にそれをやったら消費税の税率は最低でも30%。もうかなり前の話ですが、現在日銀審議委員の原田泰教授が算出した例ですと消費税60%などというものもあります。
「これでもいいのですか?」と私は聞きたいです。
こちらの参考記事
公的年金や医療保険の保険料負担を消費税負担に置き換えても結局国民負担は変わらないのです。いまの公的保険制度は労使折半で保険料を負担しているのですが、消費税に置き換えたら、まるまる労働者側が公的医療保険や年金保険の負担を背負うことになり、負担額や負担感がかなり増すのではないでしょうか。
あと公的年金や医療保険の給付削減を行い、かわりに公的保険料の負担を減らしても、自分で民間保険会社の保険に加入するなり、竹中平蔵氏が言うように「90歳、100歳まで生きたいんだったら、自分で貯めておく」という自助努力をせねばなりません。自分の親が認知症になった場合も当然自分が貯めたお金で介護費を支払い、親の面倒を看ないといけないでしょう。
大事なことは年金制度やら公的医療保険制度、税制を弄りまわすことではなく、国民ひとりあたりのGDPを殖やして、医療費や介護費などの負担割合を減らすしか、少子高齢化問題を克服する道はないのです。
ついでに言っておきますと、MMT論者たちが言うように、インフレになるまでどんどん財政赤字を増やして、医療費や介護費、年金の財源を捻出すればいいんダーなどという話も論外です。
とにかくGDPのパイを大きくすることがいちばんの解決策です。
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