新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

「三本の矢」がバラバラになったアベノミクス

 


アメーバブログで設置した「暮らしの経済手帖~基本知識編~」で「リフレレジーム(政策枠組み)について考える」という記事を書きました。

ameblo.jp

この記事の主旨はマクロ経済政策で需要不足型不況に対処する金融緩和政策と積極的財政政策の二つと、ミクロ経済政策の規制緩和や民営化といった政策をバラバラに行うのではなく、三政策をまとめて一気に推し進めないと、頑強なデフレ不況を克服することが困難であるというものです。安倍政権が進めてきた経済政策アベノミクスも「三本の矢」として金融緩和・積極財政・規制緩和の推進を掲げています。

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アベノミクスがはじまった2013年あたりについてはロケットスタートといっていいぐらい企業の投資(設備や研究開発、雇用などが入る)が積極的になっていきますが、2014年の消費税8%増税あたりから金融政策と財政政策の歩調が合わなくなってきます。金融緩和政策は進み、投資と雇用だけは堅調に伸びていくものの、財政側は緊縮気味に転じて消費が伸び悩む状態が続きます。飛行機に例えれば積極財政という片翼のエンジンが停止し、もう片方の金融緩和というエンジンだけで空を飛んでいるような状態です。ところが黒田日銀は当初の「黒田バズーカ」といわれるような量的緩和政策を渋るようになってきます。2018年には景気失速の兆候が現れはじめ、せっかく伸びてきた雇用に陰りが出かけてきました。企業の設備投資は相変わらずですが、それも省力化投資が主にシフトしてきているのではないかと囁かれております。金融緩和政策の息切れを認めざるえない状況ではないでしょうか。(もちろんのことですが、だからといって金融緩和政策の解除とかテーパリングをせよというのはもっての他です。さらなる積極的な金融緩和が求められます。)

 

金融緩和政策で企業が設備投資や研究開発そして雇用というかたちでの投資意欲を引き出し、その結果として勤労者への所得分配がわずか数年の間だけ増えたとしても、それだけでは一般消費者の消費意欲向上にまで結びつきにくいです。20年以上も勤労者の所得低下や不安定化が進んでしまったのですから、消費者の将来への不安は簡単に払拭できません。ですので私は消費者向けの財政政策を積極的に進めるべきだと主張してきました。

 

今年2月に書かれたものですが、日銀副総裁を務めてこられた岩田規久男さんも、一般消費者の予想や期待を転換させるような持続的財政政策の必要性を強調されています。f:id:metamorphoseofcapitalism:20191218120813p:plain jp.reuters.com

せっかく雇用改善による所得分配が進んでも、消費者側が積極的に消費をしないままですと、市中におけるお金の動きがとまり、企業は投じた資金を回収できなくなります。そうなると企業は再投資を躊躇うようになって当然です。その行き詰まりが顕れたのが2018年末で、今年2019年10月の消費税10%増税で消費の息の根を止めてしまうことになったのではないかと想像されます。

 

2020年以降は金融緩和政策の継続はもちろんのことですが、景気安定は財政政策が主軸とならざるえないでしょう。本当は金融緩和政策の効果が持続していた去年までの時点で消費者向けの積極的財政政策を打ち出して、デフレ不況からの完全脱出を計っていれば、国家財政をさほど傷めずに済んだかも知れません。黒田日銀の中途半端な金融緩和政策の姿勢や政府・財務省側の財政渋りで不況の再来を招き、結果的に税収減と余計な財政赤字の発生となってしまうのではないでしょうか?

 

これまでこのブログで散々批判してきたように、政府と財務省、日銀は中途半端な金融緩和政策と財政政策を繰り返し、企業や消費者に経済政策への不信を抱かせ、ずぶずぶと底なし沼に嵌っていったのです。

 

このままですと日本は40年間も国力を衰退させ続け、半藤一利氏の「40年史観」の正しさを立証することになりかねません。


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