新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

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もっと経済政策の議論を活発に~安達誠司さん 日銀審議委員内定に寄せて~

今年3月で現在日銀審議委員のひとりである原田泰さんの任期が終わるのですが、その後任が同じく”リフレ派”といわれる安達誠司さんに内定しました。

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200130190357p:plain安達誠司

自分としては原田さんの後任人事が非常に気がかりでしたが、安達さんが指名されると聞いてひとまず安心しました。

自分のブログでも安達誠司さんの記事を取り上げたことがあります。

参考記事

消費税10%増税が強めるデフレ再発の恐れ

 

昨年の安倍政権は明らかに景気が減速傾向であるにも関わらず、麻生太郎財務大臣の顔を立てるために消費税率を10%に増税してしまうなど、経済政策を二の次にしているかのような態度が目に付きました。日銀の黒田東彦総裁は相変わらずやる気のない金融政策態度をとり続けています。

 

現代の経済学や経済政策において人々が抱く将来の予想と期待がいかに重要かという話を繰り返していますが、安倍総理や黒田総裁のはっきりしない政策態度は慢性的デフレ不況体質から完全に訣別するという意思があるのかどうか国民や民間企業経営者に疑わせます。その結果消費や投資を冷え込ませる原因になりかねません。日本は「失われた30年」というべき異常な慢性的デフレ体質に陥っていました。短期間の金融緩和政策や財政出動程度では国民の消費意欲や民間企業の投資意欲がなかなか改善しません。そこでアベノミクスの異次元緩和が行われ、民間企業の投資意欲向上と雇用拡大を促すことに成功しましたが、消費の方がぱっとせず、なかなか物価上昇率2%のインフレターゲットを達成できないままでいます。金融緩和政策で伸ばした企業投資と雇用が鈍い消費に足を引っ張られる形で落ち込んでいく恐れが今あるのです。

 

そういう中で安倍政権が安達誠司さんを日銀審議委員に指名したということは、まだこの政権が経済政策を重視し、疎かにしないという意思を示したことになります。曇天の中で薄日が射したような感じがします。安達さんの経済分析は私も非常に重用しており、氏が日銀審議委員に就任したときに、それが反映されることに期待を寄せます。gendai.ismedia.jp

 

安達氏のことはここでさておいて、アベノミクスがはじまって8年目が過ぎ、「今度こそ慢性的デフレ不況体質から脱してみせるぞ!」という熱気が人々の間から消えてしまったように感じます。悪しき日銀理論信奉者や財政一辺倒主義のMMTerらなんかは「リフレ政策への期待や信用が無くなったからだ」などと言い出すでしょうが、2012年~13年あたりのときは「今ここで手を打たないとこの国の経済がダメになる」という危機意識を持った人が多くいたように思います。日本という国は財政政策や規制緩和構造改革・産業政策などと比べると、金融政策への理解や関心が低いのですが、第2次安倍政権発足のときにそれが脚光を浴びて、議論が盛んに行われました。異次元緩和賛成派・反対派共々、互いに知識を蓄え知恵を働かして議論に挑もうとしていたものです。

 

それから7~8年過ぎて、景気や雇用がそこそこ改善されて、「もうデフレ不況じゃない」というゆるみみたいなものが人々の間で出てきてしまっているのではないかと思えてなりません。しかしながらこの国は景気が少し良くなった時点で金融緩和政策や積極財政政策を打ち切って、再びデフレ不況を再発させてきたのです。

 

企業投資と雇用を回復させたことでリフレーション政策は一応成功していたと言っていいのかも知れませんが、所得の分配が進んでも消費がなかなか伸びないという課題が解決できていません。その壁を越えてやっと慢性的デフレ不況克服といえます。

 

「失われた20年」とか「30年」といわれる慢性的デフレ不況体質から抜け出すには、やはり10年以上安定的な経済成長と雇用の拡大を進めないといけません。ふつうに真面目に頑張ればちゃんと就職できるのが当たり前という状態が10~20年続かないと、人々は安心して消費を拡大させることができないでしょうし、企業は思い切った投資や事業拡大をやりにくくなります。 

 

元日銀副総裁を務められた岩田規久男さんは「リフレはコミットメント」と仰っていましたが、私は「リフレは継続である」と思っています。政策を長く続けることで、やっと人々の人生計画や消費姿勢を変えていくことができるのです。


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