新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

コロナウィルスという敵と闘う戦士たちを支えるロジスティクス

コロナ感染拡大でアメリカやヨーロッパなどの国々は外出や移動、そして人との交流が大きく制限され、経済活動が著しく抑制されています。日本においても感染がひどい欧米諸国で行われている都市封鎖(ロックダウン)ほど徹底はしていませんが、4月7日に安倍政権が緊急事態宣言を発令しました。不要不急の外出を自粛し、自宅に籠らざるえないような状況です。コロナウィルスは目に見えないものですが、日本の戦時中みたいに米軍爆撃機B29が飛来して焼夷弾や機銃掃射による空襲を受けているような感覚を覚えてしまいそうです。自宅という防空壕で空襲を逃れているというべきでしょうか。(戦前生まれであった自分の母親から聞かされた戦時中の話に比べたらかなり大袈裟な表現ですが) 

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繰り返しになりますが、コロナ感染拡大防止のための自粛と経済活性化は両立が極めて難しくトレードオフです。どちらか一方を守るためには片方を犠牲にしなければなりません。いま多くの国が択んでいるのは経済を犠牲にし、感染拡大防止を優先するというものです。

 

国際通貨基金IMF)のウェブサイトにある「見解書・論評 」でジョバンニ・デラリチア   パオロ・マウロ   アントニオ・スピリムベルゴ ジェロミン・ゼッテルマイヤー らが「新型コロナウイルスと戦うための経済政策」という論評を公表しています。

やはりこの論評もコロナ禍を戦争であると形容しています。この戦争の最前線に立つ兵士は医療従事者であり、生活に必須のサービス、食料品の流通、物流、電力・水道など公共企業に従事する人々らは戦地に物資補給を行う後方支援を担う者であると述べます。さらに思うように生産活動に貢献できず、自宅に籠らざるえない人々もこの感染症と戦う隠れた戦士であるとしています。

そしてこの戦時体制を2つのフェーズ(段階)にわけて政策対応をすべきだと提言します。

フェーズ 1:戦争中。感染症が猛威を振るっている時期。人命を救うため、感染拡大防止措置によって経済活動は大幅に制約される。これが少なくとも1~2四半期続く可能性がある。

フェーズ 2:戦後の回復期。ワクチンや治療薬、部分的な集団免疫、そしてやや緩やかな感染拡大防止措置を継続することで、感染症は制御されている。制限が解除され、経済は途中で足踏みをするかもしれないが、正常な機能を取り戻す。

残念ながら欧米に比べ比較的ウィルス感染拡大が抑制されていたかに見えたこの日本においても患者数や死者数の増加が目立つようになりました。つまりはもっとも戦乱がひどいフェーズ1の真っただ中に突入しているということです。感染拡大の原因となる人と人の交流や活動=経済活動を最低限に抑制し、それによって寸断されてしまうモノやサービスそしてお金の動きや供給を政府や中央銀行が代替せねばなりません。それは戦場への兵站ロジスティクスというべきものです。

 

通常の医療、食料生産と流通、生活に必須のインフラやライフラインの維持、感染拡大防止措置によって直接あるいは間接的に所得を失った世帯への所得補償、民間企業倒産・廃業による技術的・人的資産の喪失や社会的貢献度の高い長期事業の頓挫の防止、銀行などの金融機関破綻防止のために次の政策を打つべきだとIMFのコラムで進言されています。

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上の表で流動性対策と位置付けられているのは事業者や個人への資金供給=金融政策による手当、支払い能力対策は補助金や給付金を中心とした財政政策による手当だと思っておいていいでしょう。

金融政策というかたちの兵站と財政政策というかたちの兵站を両方平行して実施すべきだということです。

 

戦争はモノやサービスの生産活動とその流通、金融、人と人の交流といった社会システムを分断し破壊します。コロナウィルスという絨毯爆撃もそうです。多くの政府はその軍事侵攻によって破壊された供給路をいち早く復旧・回復させて、社会機能の停止や死滅を防止しないといけないのです。破壊の速度より復旧や回復の勢いが勝らないと人間の文明社会は崩壊します。

 

感染拡大が深刻なアメリカやヨーロッパでは政府が前面に出て、コロナ経済危機と闘う民間事業者・個人への後方支援を積極的に行っているのです。日本も安倍自民政権や各省庁が次々と対策を打ち出していて、その規模はそこそこ大きいものとなりかけつつありますが、戦力を小出しにして渋っているかのように見えてなりません。飛行機や戦車、軍艦の建造は進めているけれども、それが動かない・使いものにならないといった感じに見受けられます。第2次世界大戦のような戦力逐次投入みたいなことになっていて、民間事業者の廃業・破綻や個人の家計破綻が進んでしまう有様です。この点の批判は次回に譲りますが、各対策がしょぼい・遅い・まずいとなってしまっています。

 

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上はガダルカナル島で惨死した日本軍兵士の屍の山です。 

 

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