新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」という暴言に潜む中高年男子の無知と傲慢

ツイッターとかをやっていますと、時折「何これ?」これ?と思うようなトレンドワードが流れてきます。先日「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」というのがあったのですが、自分はこのときさほど気に留めていませんでした。それからしばらくしてある女性が書かれたブログ記事を読んで、事の詳しい経緯を知ったのです。

 

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どうもこちらの方のツイートに多くの人が反応したようですね。

 

ポテトサラダという料理は正直言って自分もつくった経験がありません。というかあまり食べもしていません。ポテトサラダは自分でつくるというよりスーパーなどで買うものという感覚が強いです。上で書かれたブログ記事とかを読むまでポテトサラダという料理が存外手間がかかるものだということすら気が付きませんでした。ポテトサラダは肉料理などの添え物という印象があって、軽く扱われがちな料理だと思います。

 

スーパーの惣菜コーナーで若き母親に対し「母親ならポテトサラダくらい作ったらどうだ」と悪態をついてしまう高齢男性。自分自身ももう中高年男子といわれる年齢に達しており、このツイートや女性が書かれたブログ記事を読んで自省するしかありませんでした。最近経済学者の田中秀臣さんが中高年男性の横暴さをよく批判されておりますし、中村淳彦さんが「ルポ・中年童貞」という本を出されたことがあります。

honcierge.jp

ついでに言いますと自分は関西でバスの運転手をされている方と知り合いだったのですが、運転手に暴言を吐いて絡んできたり、運賃を投げつけるように運賃箱へ投入したりするのは中高年男性が多いとのことです。 

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自分自身の過去やいまの行動を振り返ってみるとやがてまわりに老醜をさらしていくようになるのかなあと思ったりしました。

 

それはともかくとして経済学的観点で高齢男性が吐いた「母親ならポテトサラダぐらい作ったらどうだ」という言葉を評価しますと、二重の意味で愚言だということになります。ひとつ目はポテトサラダをつくる手間や時間によって他のおかずを作れなくなってしまうという機会費用の損失と、もうひとつは若き母親が家事に忙殺されてしまうことで外へ働きにいくことができず、その結果として社会保険料収入が減ってしまうという意味です。高齢男性は年金の受給をしているかと思われますが、その財源を負担しているのは誰なの?と現役世代は言いたくなるのではないでしょうか?

 

ミクロ経済学の心得がある人ですと、機会費用とかリカードの比較優位説についてご存知かと思われます。簡単に説明しますとお互いに得意なこと、効率よく生産できることに労力や時間を集中し、商取引や貿易で互いにつくったものを交換しあった方がたくさんのものができるし、消費ができて得ですよという説です。

 

 比較優位説についての解説

business.nikkei.com

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共働きなどで時間が限られた主婦がもし仮に自分で手間のかかるポテトサラダをつくったとしたら、他のおかずを作る時間が奪われます。いくらなんでも晩ごはんのおかずがポテトサラダしかないとなったらご主人や子供たちが「他におかずないの~」とがっかりすることでしょう。ポテトサラダはスーパーの惣菜コーナーで買ってきて、浮いた時間でハンバーグやらとんかつなどを作った方が家族は喜ぶことでしょう。ポテトサラダをつくることで他のおかずができなくなったり、あるいは外へ働きにいってお金を稼ぐ時間がなくなってしまうことを機会損失といいます。これは経営者なんかも非常に気にするわけですよね。

自分の父親はかつて会社を経営していて遠方まで出張して商談することが多かったのですが、新幹線や飛行機、特急列車を積極的に利用していました。なぜなら移動時間を極力短くして、その日のうちに一件でも多く商談をまとめた方が何千万円、時には何億円も得するわけです。高い運賃を超えるベネフィットやハーベストがあります。

 

高齢の男性が若き母親に「ポテトサラダぐらい作れ」と強要するということはこの母親に損を被せる、あるいは母親の財布から金をくすねるのと一緒です。

この高齢男性はもしかしたら現役世代のときに自分の部下や同僚たちに、意味のないこだわりや非効率な仕事を押し付け、会社の生産効率を下げていたかも知れません。よく構造改革派が「日本の生産効率は~」などと言いますが、そんな大袈裟な話ではなくごく身近な場面でのムダ働きやムダな時間の遣い方の積み重ねが国民ひとりあたりの生産効率を下げてしまうのです。

あと冒頭で述べたように「ポテトサラダぐらい作れ」といった高齢男性が受け取っているであろう年金の給付金は若い母親たちをはじめとする現役世代が支払った保険料です。現在高齢化社会で老齢人口の層が現役世代の人口層より厚くなっており、肩車状態で現役世代が高齢世代を支えねばならなくなっています。

 

 

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私は現役世代が支払っている社会保険料を下げることは困難であるけれども、現役世代の1人当たりの生産効率を上げることで実質的に負担を減らすことが可能であるという話をしています。

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しかし高齢男性が「母親ならポテトサラダぐらい作れ」などといって、現役世代の若い母親の生産効率を下げてしまうことを押し付けられると、現役世代の人たちは「お前らの年金の負担なんか背負わされたくない」と言い返したくなります。

 

ある動画サイトで「消費税を増税して現役世代の社会保険料を下げろ」などという暴論を唱えていました。

https://www.youtube.com/watch?v=fiDthlTYZf4&feature=youtu.be

(この動画制作者はあちこちで誹謗中傷行為を続けてきたかなりの悪質アカウントです。)

 

自分が書いている別のブログ記事「消費税増税で医療費や介護費の負担は減らせるのか?」で上の動画を批判したのですが、こんな動画がつくられてしまうということは「お前ら年寄りの年金を負担するためにオレたち現役世代は苦しんでいるんだぞー」という不満を持っている人が多いということです。

ameblo.jp

 あと藻谷啓介が自分の書いた著書「デフレの正体」を北海道で高校教師を勤められ、経済学の解説本を書かれている菅原晃さんに「老人の繰言を言うな!自分で実践を少しでも語ってみろ。対外資産の増加を国内に少しでも還元する努力をしてみろ。そうでなければ外国に引っ越せ。あるいは早く死んで子供に財産でも残せ。」などと暴言を吐いて、訴訟を起こされてしまうということがありました。

 

上の動画サイトといい、藻谷啓介といい、自分から見たらほんとうに痛い人たちですが、老害といっていいほど傍若無人な高齢者を現実世界で目にしてしまうと、こちらも悪態のひとつでもつきたくなります。 

 

こうして考えると経済学の知識というのは一握りの学者や政治家だけのものではなく、わたしたち一般庶民の修身にも貢献するのかあと自分は思ったりします。現役世代と高齢世代の対立やいがみ合いを解決するヒントは経済学にあります。

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