新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

給付金の追加だけではない経世済民政策研究会の提言

f:id:metamorphoseofcapitalism:20201020191721j:plain

前回の記事にも少し関わりますが、先日令和2年10月14日に菅義偉総理大臣も交えて自民党有志議員による経世済民政策研究会の勉強会が行われました。この勉強会には菅総理の左隣(写真で見たときは右隣の白スーツを着た方)に立たれている上武大学田中秀臣教授をはじめ、元日銀審議委員の原田泰・名古屋商科大学ビジネススクール教授などが講師として参加されてきた勉強会で三原じゅん子議員や長島昭久議員、細野豪志議員などがメンバーとなっています。

今回この勉強会は定額給付金の追加をはじめとする緊急経済政策提言を菅総理に提出し、テレビのニュース番組などでも報道された模様です。

私はかねてよりこの勉強会に大きな期待を抱いています。金融政策と財政政策はマクロ経済政策の二本柱なのですが、多くの政治家は金融政策を日銀に、財政政策は財務省官僚にといった具合に任せきりにしてきました。まだ財政政策は多くの議員が興味や関心を持っていますが、金融政策については与野党含めて極めて少数の議員しか理解していません。この勉強会は財政政策だけではなく金融緩和政策についてもしっかり取り上げられ、細野豪志議員や長島昭久議員の金融政策に関する理解はかなり深いものになってきています。

今回菅総理に提出した緊急経済政策提言ですが、上で述べたように定額給付金の追加だけではなく、政府が日銀に対し2021年度までのインフレ目標2%達成の要請をすることや、医療・介護現場、観光・飲食・興業などコロナ禍で大きな負担や打撃を受けた産業への支援策も盛り込んでいます。このことはネットや報道でもあまり広く伝わっていないように感じられます。

ネットや報道でいちばん目立って伝わったのは定額給付金の追加ですが、これについても決して正しく伝わったとはいえません。定額給付金の第2弾は第2次補正予算の残りをすべて吐き出すかたちでひとり5万円給付だけ先行実施することを提言したのですが、この5万円給付しかないように伝わってしまったりしています。下に経世済民政策研究会の提言書を添付しておきますが、金額こそ明記していないものの第3次補正予算の項目に定額給付金の支給の継続が謳われています。この不確実性の高い経済危機がどこまでの影響を及ぼすのかまったく予想できません。あえて追加給付の金額や支給期間を明記していないようです。

 

添付資料 令和2年10月14日 経世済民政策研究会 提言書

f:id:metamorphoseofcapitalism:20201020195913j:plain

定額給付金の追加支給については現金収入が激しく落ち込んだままの状態の人がいるでしょうから所得保障(補償)としてやっていただきたいものですし、落ち込んだ需要を補う経済政策面においてもすべきでしょう。しかしながら同時に事業継続が危ぶまれるような企業や業界の支援と雇用維持も計っていかねばなりません。このブログで今年何回も記事で書いてきたように金融緩和政策はコロナ危機で資金繰りが悪化し、多くの債務を抱えなくてはならなくなった民間事業者を支える上で非常に重要です。「金融緩和政策でやるべきことはやり尽くした」と云われますが私はそうだと思いません。民間事業者や雇用を守る上で日銀の金融政策が担う使命と責任は今までになく高まったといえましょう。提言書で政府が日銀に2021年度中のインフレ目標2%達成を要請していますが、こうしたコミットメントの強化は企業にとって将来の見通しを描かせるものです。見通しがなければいまの苦境に耐えることができません。

今回の提言書を受け取った菅総理は失業率、それも公式の失業率だけなく退職後より長く働きたくても不況でできない人や休業者、不況で働く場がなくて求職自体を断念した人たちの数も含めた"本当の失業率"の高さを問題視していた田中秀臣教授はいいます。さらに長島議員や細野議員によれば菅総理が「金融政策は常に頭のど真ん中にある」と口にしていたようです。給付金の追加給付については総理は明言を避けていたとのことですが、第3次補正予算への意欲を示しておられたとのことです。今回の提言書が現実の政策として反映される脈は十分にあるとみていいのではないでしょうか。

 その一方でネットや報道の動きをみてみますと相変わらず突出した今年の国家財政支出の高さや累積債務、国債の発行量のグラフなどをみせて財政危機やハイパーインフレの不安を煽るようなものを見かけます。給付金についても「消費に回らず貯蓄をふやすだけだ」などという使いまわされた屁理屈でやめさせようとする動きも目立っています。

今回の巨額財政出動の財源は国債で調達しており、それを日銀が買い受けることで通貨発行益を発生させています。実質債務性がないかたちで財源確保ができているので将来の増税も心配することはありません。

f:id:metamorphoseofcapitalism:20201020231332j:plain

 参考

コロナ増税をしなくていい理由 ~国債と通貨発行のカラクリ~ | 新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~

 

中央銀行による国債買受とそれで発生する通貨発行益を財源にするかたちの財政出動はあまりに乱暴にやるとひどいインフレを招くリスクがありますが、現在のように著しく需要やGDPが落ち込み、インフレどころか慢性的なデフレ不況すら予想されるなかでそれを心配するのはおかしなことです。金利の方も企業の投資意欲が簡単に復活することはないので上昇することはないでしょう。

いまの状況において政府の財政規律よりも民間産業の崩壊や失業増加を食い止めることの方が先決です。いつも私がいうように国家財政という神輿を担ぐのは民間企業や国民個人の納税です。民が先に疲弊することで国家財政が悪化するという順序です。

 

経世済民政策研究会の提言については私の末文よりも、田中秀臣教授自身が書かれた記事を読んでいただいた方が正確な理解を得られることでしょう。最後に紹介しておきます。

ironna.jp

 


全般ランキング


政策研究・提言ランキング

ご案内

「新・暮らしの経済手帖」は経済の基礎知識についての解説を行う基礎知識編ブログも設置しております。画像をクリックしてください。

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200814191221j:plain
https://ameblo.jp/metamorphoseofcapitalism/

ameblo.jp

 
サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター 

 

https://twitter.com/aindanet

twitter.com

 

お知らせ

「暮らしの経済手帖」プロモーショナルキャラクター・友坂えるの紹介です。

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200814190559j:plain

 

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200812163152p:plain