新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

個人向けの給付金ではなく事業者向けが多い日本のコロナ経済対策

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ここ最近個人向けの定額給付金の再支給を求める声が高まっています。これまで菅政権は一貫して定額給付金や持続化給付金の再支給を行わない考えを示してきました。いつも自分が視ている高橋洋一chでも「日本の経済対策は十分?給付金もう一回はないんですか?」という質問がきて、高橋氏は日本とアメリカで雇用や経済対策の考え方が異なるという解説をされています。

www.youtube.com

動画の質問のようにアメリカは個人向けの給付金を3回以上に支給しているのに、日本は2回目の給付金がない。それ以外にたいしてもらっていないし、経済対策が不足しているようにみえると思う人が結構いるかと思われます。しかし実際には日本国政府の経済対策の規模はGDP比でみた場合、世界で1位か2位という水準です。自分個人にまわっていくるお金がたいしてないから「日本は財政を出し渋っている」と思いがちですが、日本政府はかなり大盤振る舞いをしています。

ただし日本の場合はアメリカやヨーロッパなどのように個人に対し現金を直接給付するのではなく、事業者にお金を回すスタイルになっています。労働者を雇う事業者が倒産・廃業したり、解雇に踏み切らないようにし、失業増大を防止するという考えです。高橋洋一氏が述べているように経済政策で最も重要なことは雇用を守ることです。会社がどんどん潰れて人を雇えなくなってしまうことを回避することが基本です。

アメリカなどの場合は「どんどん会社を潰してしまっても構わない。失業した人の所得は政府が補償すればいい」と割り切った考えで個人向けの給付金を何回も支給しているのです。

ここは私の見解となりますが、今回の場合は企業の倒産・廃業を防止することを重視する日本式?のやり方がいいと思っています。潰れないはずの会社を潰さない。失業しないはずの人を失業させないという考え方を採るべきです。会社がどんどん潰れても新興産業や企業が次々と芽生えてきて、新しい雇用を生み出す状況ならばアメリカ式でもいいのですが、日本の場合だと一度会社が潰れたら潰れっぱなし、失業したら失業しっぱなしの状況に陥りかねないと私は想像します。仮に新しい産業や企業が興されるとしても順調に収益を伸ばせるまで長い時間がかかるでしょう。技術継承の問題もあります。その間生産活動や雇用回復までかなりのタイムラグが発生することを想定しないといけません。あと解雇された労働者たちが別の産業や企業へ移って活躍できるようにするには就労訓練などの時間やコストがかかります。それは大きな時間のムダでしょう。本来であれば存続可能な既存企業を温存し、雇用契約を継続させておく方が「はやい・やすい・うまい」経済回復になると思います。

コロナ経済対策として考えた場合、個人向けの定額給付金が最優先とすべきものなのかというとそうではないのです。もうひとつ生活困窮者への支援策として考えても、やはり定額給付金は最善解ではありません。昨年2020年春に行われた定額給付金については行政側で支給対象者を選別している余裕がまったくなく、それをすること自体が感染拡大を招く恐れがあったために択ばざるえない方法でした。緊急の一時金といった性格のものです。そして昨年と今では状況がかなり異なることに注意が必要です。今年1月からはじまった2回目の緊急事態宣言ですが、これは営業自粛対象を飲食店に絞り込むなどピンポイント型になっています。経済的損失を被る業界も対面サービス業に偏っています。いちばん損失が大きな業界や事業者に財政を振り分けていくやり方の方が必要なところへ手厚く支給する方が望ましいでしょう。

何度か紹介してきましたように、既に政府は事業者向けだけに限らず個人向けについてもさまざまな支援策を用意しています。

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しかしながら個人向けの支援策については政府側がかなり積極的に広報しても制度の周知が広まらなかったり、制度対象から外れて利用できなかったなどの理由でいまいち利用が進んでいなかったりします。かなりたくさんのメニューが用意されているのですが、正直細かい制度が濫立しすぎていて縦割りの印象を与えます。

一律支給の定額給付金の再支給を求める人たちは縦割り型の支援制度から漏れてしまう生活困窮者が多く出てしまうことを指摘しますが、その点は一理あると私も思います。

今月3月に入って政府与党側から新型コロナウイルス禍で困窮する子育て世帯に臨時の給付金を再支給する検討するという報道が流れました。過去2回の支給は低所得のひとり親世帯が対象だったのですが、新たに2人親の世帯も加えるとし、金額は従来と同じく第1子5万円とする案を軸に調整するようです。支給対象をかなり限定してしまい、おまけに支給額もかなり低いので、かなり不満が出てくるでしょう。

news.ameba.jp

財務省定額給付金・持続化給付金への抵抗がかなり強いようです。

www.nikkei.com

引用1

 新型コロナウイルスとの闘いで非常時の財政運営が続いている。1人10万円の特別定額給付金や中小企業向け持続化給付金の再実施を求める声がくすぶる。財務省はこうした現金給付に反対し、その脱却が財政正常化に向けた一歩だと位置づける。

引用2

財務省は使途を限定せず幅広い対象に配る給付金は一時的な需要の穴埋めにすぎないとみる。給付金の繰り返しが定着すると、財政再建の道筋を描けないと懸念する。持続化給付金を終了するため、代わりに業態転換に取り組む中小企業に最大1億円の補助金を導入したのは「給付金よりも目的がある補助金」という財務省の考えがにじむ。

 引用3

政府内でも3月中旬にまとめる緊急支援策に困窮世帯向けの給付金を盛り込む意見が出る。矢野氏は「必要だというエビデンス(証拠)を示すべきだ」と訴える。財政再建に向けた「譲れない一線」を守ろうとする財務省の攻防は続く。

財務省の役人たちは政権与党側が用意した制度にあれこれ細かい条件をつけて、制度を利用させないように仕向けているのではないかと思えてなりません。これですと困窮しているにも関わらず制度の対象から外れて救済されないという事態を生んでしまいます。

定額給付金にこだわる人たちはこの漏給を嫌がっているのでしょうが、その問題を克服し、さらに必要な人に割と手厚く継続的に現金支給ができる制度があります。給付付き税額控除制度です。

metamorphoseofcapitalism.hatenablog.com

最近ベーシックインカム導入を推す声も強まっていますが、これですと既存社会保障制度の再編や様々な誤解と偏見によって実現性がかなり低いです。しかし給付付き税額控除はすでに数多くの国が導入しています。

この制度を使えば税申告で所得が著しく低い人を捕捉し、公正に現金給付を行うことができます。

定額給付金を再支給してもらえるにしても、せいぜいあと1回か2回です。これに執着するよりも、必要な人に継続支給できる給付付き税控除の実現を訴えた方が得策だと自分は考えます。この制度は厚生労働官僚や地方自治体職員らの業務負担軽減にもつながり、財政負担の面でもさほど重くない制度です。(約数兆円程度)日本においてこの制度が無かったために全国民10万円一律給付で12兆円をかけて定額給付金を支給せざるえませんでした。給付付き税額控除の場合ですとそこまでの財源を必要としません。給付付き税額控除の方が結局安上りではないでしょうか。

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