新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

三度目の緊急事態宣言発令

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前回「日本経済再起動に向けて ~護りから攻めのフェーズへ~ - 新・暮らしの経済手帖 ~時評編~ (hatenablog.com)」 という記事を書き、経済復興に向けた対策への転換について述べましたが、今日4月25日より東京、大阪、兵庫、京都の4都府県において三度目の緊急事態宣言の発令となってしまいました。5月11日までの短期集中型となりますが、今回百貨店やショッピングセンター、それに映画館など建物の床面積の合計が1000平方メートルを超える大型の施設にも休業要請を拡大しており、強い措置となっています。

政府は休業に協力する百貨店などの大型施設に1店舗当たり1日20万円、こうした大型施設に入居するテナントには1店舗当たり1日2万円の協力金を支給するとしていますが、こんなはした金でとても損失補填ができるわけがありません。百貨店の売り上げは一日数億円。4000~5000人の人が働いています。ナメているとしか言いようがないでしょう。百貨店・映画館・図書館などクラスターが発生していない場所をなぜ閉鎖するのか」など反発の声がかなり出ています。

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今回の緊急事態宣言Ⅲについてはあまりに唐突で、さらに実効性も疑われていることが大きな不信と不満を呼んだのでしょう。

 

関西の場合はより感染力が高いとされる新型コロナウイルス変異株の新規感染者の増加が目立っていました。しかも高齢者だけではなく若い世代の人への感染が目立っています。重症病床が完全にオーバーフォローしており、軽症や中等症対象の医療機関が重症者を受け入れざるえない状況です。そのために吉村洋文大阪府知事は緊急事態宣言の再発令を国に要請するに至ったのですが、日本の場合、世界的にみても人口比でみたコロナ感染者数の割合がさほど高くないにも関わらず、医療機関の病床が逼迫します。現場スタッフの不足が慢性化し、疲弊してしまっている有様です。このような状況が生まれる背景については「コロナ感染拡大がひどくないはずの日本でなぜ医療崩壊の危機が叫ばれているのか | 新・暮らしの経済手帖 ~経済基礎知識編~ (ameblo.jp)」という記事で書いています。

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 日本の医療機関は他国に比べ民間病院の割合が非常に高く、さらには開業医の割合も大きいために、行政側が強権発動で「コロナ感染患者の受け入れをせよ」と命令することができません。結局公立病院の一部医師や看護師に負担が集中してしまう問題があったことなどを記事で書きました。この問題が解決する前に再び感染拡大が始まってしまったのです。

関西における感染拡大と医療機関の逼迫は深刻化しているのですが、問題は大阪府より先に緊急事態宣言の再発令を要請した東京都です。新規陽性者数は増えつつあったものの、入院患者数・重症者数ともに大きな変化はありません。医療供給逼迫とはいいがたい状況であるにも関わらず小池百合子都知事は緊急事態宣言の再発令を要請していたのです。不必要な私権制限であり違法の疑いが出ています。

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 新型コロナ対策はただウィルスの感染者数を抑え込むことだけを考えればいいというものではありません。それによってウィルス感染による死亡者が減ったとしても、社会活動や経済活動の停止によって生活困難の状況に陥り、自殺や困窮死を増やしてしまったら元も子もないのです。

何度も経済活動を停止させることを繰り返すことによって、飲食業だけではなく小売販売業、興業など対面サービス業とその関連業が壊滅状態となり、コロナ禍が収束しても元へ回復しないという状況になることを私は恐れています。これを私はサプライサイドの壊死と呼んで警告してきました。人間の体に例えるとなんとか生命は維持できたけれども、手足の細胞が壊死してしまって切断しなくてはいけなくなったとか、重い後遺症を遺してしまったような状況になりうるということです。とくに小池都知事については民間のサプライサイドの壊死に対する思慮が及んでおらず、緊急事態宣言を政治的かけ引きの道具に使うような手口の汚さを感じます。

それはさておき、サプライサイドの壊死が起きないように政府は今年度の補正予算を編成し、新たな追加経済対策がいつでも打てるように準備しておかねばならないでしょう。現行の予備費5兆円に加え、20兆円規模の予算追加です。

日本においては相変わらず民間事業者や個人の苦境に目を向けず、財政規律のことばかりしか頭にない人たちが、大規模な財政出動を阻もうとしていますが、サプライサイドの壊死を引き起こす方がのちに大きな経済問題や財政悪化を招くことになりかねません。一部で1966~1980年代にかけておきたスタグフレーションの再来を懸念する声が出ていますが、これも原因は民間産業衰弱化というサプライサイドの腐食がもたらしたものでした。

この先一年以上はこうした混乱が続くかと思われますが、先を見据え日本経済再起動に向けて進むしかありません。

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