新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

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岸田文雄政権発足と今後の経済政策の行方

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先月9月29日に行われた自民党総裁選挙で岸田文雄候補が新総裁に選出され、10月4日の臨時国会にて第100代内閣総理大臣に任命されました。宏池会の議員が政権を握るのは30年ぶりのことです。

宏池会は1957年に池田隼人が旗揚げした自民党内の派閥で、大平正芳、今回財務大臣に任命された鈴木俊一氏の父である鈴木善幸宮澤喜一、そして岸田文雄氏と4名の総理を輩出しています。この派閥は官僚出身の議員が多く「政策には明るいが政局には暗い」と評され御公家集団と揶揄されてきました。岸田新総理も財務官僚が多く、これまでの政策発言は官僚よりだとみられてきております。岸田氏が総裁選出馬のときツイッター上に設けていた岸田BOXというご意見箱にも「財務省の狗(イヌ)」「財務省のポチ」という投書がなされていたようです。かなり緊縮財政色が強い政権になるのではないかと警戒されています。

しかしながらその一方で、総裁選出馬前より岸田氏は安倍晋三元総理が会長をつとめている「ポストコロナの経済政策を考える議員連盟」に参加し、金融緩和政策や積極的財政政策についての知見を得ようとしていました。岸田氏と同時に総裁選に出馬した高市早苗議員もこの議連に参加しています。

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この議連には岸田氏と同じ宏池会に所属し、経済通と云われた山本幸三議員(写真右端)も関わっています。山本幸三議員は岸田氏に金融政策や財政政策についてのレクチャーを行ってきたようです。岸田氏は総裁選を通し、極端な財政均衡主義を控えるようになり、高市氏ほどではないですが機動的財政出動の必要性も言及しています。

宏池会は伝統的にリベラル色が強く、外交は経済重視で防衛観もハト派であるといわれてきた派閥ですが、経済政策と共に安倍政権以来築き上げた路線を継承していくことになると考えられます。中国共産党覇権主義や横暴がかなり目立ってきており、北朝鮮や韓国を含めて日本は毅然とした姿勢を見せつけていかねばなりません。アメリカとオーストラリア、インド、そして台湾と連携し、インド・太平洋・東アジア圏の安全を護っていく必要性が高まっています。宏池会中心の内閣となってもその路線を覆すことはできません。経済政策についてもアベノミクスに採り入れられた異次元金融緩和政策が民間投資と雇用を活発化し、それが第2次以降の安倍内閣を7年以上にも及ぶ長期政権としたという了解を岸田氏もしていることでしょう。財務省や金融機関関係者、旧き日銀理論支持者たちは異次元金融緩和政策をやめさせようとしてきましたが、それを岸田政権の閣僚が口にしようものなら一気に経済や雇用が崩れ、政権崩壊につながることを岸田氏は理解していると思われます。既に岸田新内閣は株式市場や内閣支持率で手痛い洗礼を受けています。アベノミクスの継承をよりいっそう強く打ち出していかねばならなくなっています。

岸田氏は自民新総裁に就任後、党役員人事で共に総裁選に出馬し、同じくアベノミクスの継承と財政政策面を中心としたその強化を掲げてきた高市早苗氏を政務調査会長に指名しました。高市氏の総裁就任を推していた人たちからは冷遇だという声か上がりましたが、政調会長というポストは自民党としてどのような政策・法案を打ち出すかをまとめ、その方針を内閣に伝えて予算案に反映させるという重い役職です。高市氏は党内で相当強い権限を持つことになり、氏が総裁選中に唱えていた経済政策や防衛政策を党の基本政策として反映させていくことができます。

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維新の会の音喜多駿議員の見方によれば、あえて高市氏を閣僚から外してZ省の切り崩し工作から守り、党側から圧力をかけさせられるようにするようにしたのではないかということです。

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岸田新内閣が発表した閣僚についてですが、財務大臣は先にも述べた鈴木善幸元総理の長男である鈴木俊一氏であり、他の閣僚も初入閣が13人と馴染みのない名前や顔が多く、期待感がさほど高まっていません。鈴木俊一氏は一応アベノミクスを支持する発言をしてきており、財務大臣就任後もデフレ脱却へ向けて大胆な金融政策・機動的財政政策・成長戦略の3原則で取り組むとの意向を明らかにしています。しかしその一方で消費税減税に反対の姿勢を示すなど緊縮色をみせており、確固たる経済観や財政観を持っている人物とは思えないのです。凡庸な印象を受けます。

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そして岸田総理自身の経済観自体についても疑心暗鬼にならざるえないものであります。岸田氏は「新しい資本主義」を標榜し、貧富格差の是正とそのための所得再分配を強調しておりましたが、これに

規制緩和構造改革新自由主義的政策は我が国経済の体質強化と成長をもたらしたが、富める者と富まざる者の分断も発生。成長のみ、規制緩和構造改革のみでは現実の幸せには繋がらず。 」

といった経済学的に理解しがたい発言が含まれています。「新自由主義」という言葉の定義は非常に曖昧でふわとしており、理論性の薄さが気になります。

参考「新しい日本型資本主義 ~新自由主義からの転換~ 」衆議院議員岸田文雄

https://kishida.gr.jp/wp-content/uploads/2021/09/20210908-02.pdf

岸田氏が示した資料において

「デフレ脱却」に向け、大胆な金融政策、機動的な財政政策、成長戦略の3本柱
を堅持。 

が第一に掲げられており、アベノミクス継承の意志を示してはいますが、岸田氏が金融政策の役割をどこまで深く理解しているのか不明です。別のブログでも取り上げてみたいですが、第2次以降の安倍政権で導入された異次元金融緩和政策によって企業の事業投資意欲と雇用の最大化を促し、大企業から関連企業への支払いや就労者への賃金分配が進んでいます。新卒者求人倍率も上がって安定しました。金融政策は雇用の安定と経済格差発生防止に寄与するということを岸田氏が理解されているならば、もっとその説明を詳しくされた方がよいのではないでしょうか。

岸田氏は金融所得課税の見直しや医療・介護・保育など公的セクターの現場で働く人の所得向上、大企業による下請けいじめゼロを目指すとしていますが、貧富格差や下請けいじめ問題も金融緩和政策で相当改善させることができます。

あと新自由主義的だとされる規制緩和構造改革といった政策ですが、これもまた貧富格差の発生につながったという根拠はどこにもありません。「新自由主義的政策」というのは恐らく宏池会とライバル関係にあった清和会の小泉純一郎政権のことを指しているのだと思われますが、この政権の問題は規制緩和構造改革よりも緊縮気味だった財政政策にあります。岸田氏が所属する宏池会の議員も財務官僚寄りの緊縮財政に走りがちで、やはり小泉政権と同じような批判をされるリスクがあるのです。

それと最後にこの政権でいちばん気になる点を申し上げると、日銀政策委員や総裁・副総裁の人事をどうするのかという点です。2022年7月23日に片岡剛士政策委員の任期が終了します。片岡委員はリフレ派といわれてきましたが、いちばん積極的に金融緩和政策の強化を主張されている方です。岸田政権が片岡さんを続行させるのか、飯田泰之さんなど他のリフレ派といわれる論客を推すなりしてくれるのであればいいのですが、マクロ経済政策や金融政策のことをよくわかっていない素人を平気で政策委員に任命してしまうようなことをすれば金融政策を軽視しているとみなさねばなりません。岸田政権の本気や経済政策の理解がこのとき試されます。


更新が滞りがちになりますが、今後ともよろしくお願いいたします。

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