新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

かなり悲観的にならざるえない2023年以降の日本の経済

新年明けから1週間以上経ちましたが2023年初の投稿となります。本当は明るい話題にしたいところですが、悲観的でかなり重い話をしなければなりません。

昨年の年始記事で「2022年は日本という国にとって運命のわかれ道となる年である」と述べました。経済面でいえば日本の経済が再び衰退への道を辿っていくか、再興への道を目指すのかが決まってくると思ったからです。

 metamorphoseofcapitalism.hatenablog.com

結論を述べると、この国は自ら滅びの道を択んでしまったと思わざるえません。安倍元総理がひとりの男によって殺害されたことによって、この国は死への道を決定づけられたのです。たった一人の男のためにこの国の経済衰退と国力低下、就職氷河期の再来とそれによる貧困と格差の増大、軍事独裁国家からの侵略リスクをぐんと高めてしまいました。犯人の母親がカルト教団として悪名高き統一教会の信者であって人生を滅茶苦茶にされたことへの恨みが犯行動機であるといわれていますが、彼の行動は今後多く発生するかも知れない就職難などによって彼以上の苦しみを抱える人を再生産することになり、新たな「無敵の人」を量産してしまうことになってもおかしくないと自分は感じました。 

ひたすら増税や歳出抑制を進めようとする財務省の役人や外交努力によって軍事独裁国家の暴走を抑え込むことに尽力してきた安倍元総理がいなくなったことで、官僚色が強く媚中派が多い宏池会出身の岸田総理はますますその色彩を強めています。

 

岸田政権は防衛強化の必要性を示したところまではいいとしても、その財源を国債発行ではなく、増税で賄おうとしています。これがまずいのは金額ありきになってしまうことで敵国が武力攻撃を躊躇わせるのに必要な防衛強化ができなくなってしまうことです。本当は日本政府が「税収で足りない分は国債で賄うかたちになっても必要な防衛強化はしっかりやる」という姿勢を敵国に見せるべきですが、財布の中身を気にするような素振りで弱みを見せてしまうようなことを岸田政権はやろうとしたのです。防衛強化の財源を増税にしてしまったことで「増税を受け入れて社会保障費を削ってでも防衛を強化しろ。」「いや防衛強化を言い訳にした増税社会保障費削減はやめろ。」と世論が分断してしまっています。非常に馬鹿げた話です。

もしこの国がいまのウクライナのようにミサイル攻撃を受けて多くの人命を失い、生産設備や経済基盤を破壊されてしまったら、事前にいくら財政規律を護っていてもハイパーインフレを引き起こすことになってしまいます。日本周辺で戦争が発生して物資の行き来ができないようなことになると、モノ不足や生産力低下でひどいインフレを招くでしょう。あと多くの人が指摘していますが、増税によって余計経済活動全体のパイが縮小し、ますます国家財政が悪化していくという「緊縮の罠」に嵌る恐れがあります。安倍政権や菅義偉政権と違って岸田政権はそれをわかっていないのです。

 

岸田政権の経済政策のひどさは財政政策面だけではありません。金融政策においても黒田現日銀総裁任期満了後の金利引き上げを狙うような兆候を見せてきました。岸田政権は他の日銀政策委員以上に徹底した金融緩和政策の強化を任期中主張してきた片岡剛士日銀政策委員(当時)に代わって高田創氏と田村直樹氏を新政策委員に任命しましたが、この二名は金融緩和政策に消極的で財務省色が強い人材です。現在次期日銀総裁の候補として名があがっているのは現副総裁の雨宮正佳氏と同じく元日銀プロパーである中曾宏氏です。

さらに次期日銀幹部候補として翁百合氏の名前も浮上しています。彼女は前副総裁で異次元金融緩和の導入を積極的にすすめてきた岩田規久男氏の論敵であった翁邦雄氏の妻です。もし彼女が次期日銀幹部に起用されるのであれば岸田政権は完全にアベノミクス否定をしたと判断すべきでしょう。

金融政策は多くの国民にとってあまり関心が向かないようですが、政策金利を引き上げ金融政策を引き締めに転じさせるか、その素振りを日銀幹部が示すことで株価が暴落したり、円高に振れたりします。昨年末に黒田現日銀総裁が歪になっていたYCC(イールドカーブコントロール・長短金利操作)の修整を計るために、長短金利の変動幅を従来の「±0.25%程度」から「±0.5%程度」に拡大するという表明をしましたが、これが「金融緩和打ち止め」「実質的な金利引き上げ」と市場関係者に受け止められたために株価の急落や円の急上昇を招きました。

ameblo.jp

この修整は10年債の金利高だけぽこっと下がっているイールドカーブをなだらかにするもので、他の年次の国債も日銀が積極的に買い入れしてイールドカーブ全体を押し下げていくので金融緩和の打ち切りではありません。マスコミや市場関係者の勘違いです。

しかしながらこの一件が、もし仮に次期日銀正・副総裁や他の委員たちが金融緩和政策を打ち切ろうとしたらどうなるかということを示したと思います。日銀が政策金利を引き上げてしまうと次のようなことが起きますし、既に一部で起きかけています。

  1. 国債金利の上昇によって、企業の社債等の金利コストも上昇する。よって企業は設備投資や雇用を縮小せざるえなくなり、賃金分配も低下する。
  2. 住宅や自動車、学費等のローン金利が上昇する。そのためにこれらの購入が減っていき、需要低下でそれらの建設や製造も縮小していく。
  3. 円安から円高に転じ、輸出企業を中心に業績が悪化していく。

中央銀行政策金利を上昇させることは国民や企業の経済活動を抑制することになり、景気も沈静化していきます。アメリカや欧州のように景気が過熱して賃金や物価がうなぎ上りになっているような状況であれば金利を引き上げて、投資や消費を抑えねばなりませんが、日本のようにまだ需給ギャップが20兆円も開いているような状態で金利を上げたら活発とはいえない経済活動に冷や水を浴びせることになります。エネルギー資源や食料品の価格が高騰したままの状態で、雇用や賃金分配が低下したらたまったものじゃありません。スタグフレーションです。

国外の方に目を向けますと、昨年から各国の中央銀行が断行した金融引き締めなどの効果があってか、物価高騰が沈静化していく兆候が見え始めました。しかしながらその金融引き締めが強すぎて、雇用や景気を悪化させるリスクが出てきています。相変らず中国やロシアといった共産圏の軍事独裁国家が不確実性を世界全体に与えてしまっており、それがまた大きな混乱と損失を生む危険性を孕んでいます。

今年中盤あたりから世界経済全体が不況に突入していった場合、各国中央銀行の金融政策態度は引き締めから再緩和に転ずる可能性が高まります。そのときに日銀が金融緩和の解除に舵をきってしまった場合、昭和恐慌の繰り返しみたいなことになっても不思議ではありません。岸田政権が第二の濱口雄幸内閣、次期日銀総裁が第二の井上準之助と云われるようなことになってしまうのではないでしょうか。

 

昨年末にタモリ氏が「徹子の部屋」にて「新しい戦前になるのじゃないですかね」と仰り、それが左派層を中心に大きく取り上げられましたが、筆者は左派層が想像していることとは異なるかたちで「新しい戦前」の道を日本は歩いているように感じています。安倍元総理の暗殺は2・26事件を想起させますし、いまの岸田政権は濱口雄幸政権と同じ過ちを犯しかけています。マスコミの報道もそうで昭和恐慌前に「不景気を徹底せよ」とか「下る下る物価、思わずほくそ笑むサラリーマン」と書き並べていたときと変わっていません。

筆者は身の回りの人に「就職や転職をしたい人は急ぎなさい」「マンションなどのローンを組んでいる人は利上げを覚悟しておいた方がいいです」といった防衛策を伝えていますが、本当にとんでもない時代に突入してしまったなと思っています。ダンテの「神曲・地獄篇」に出てきた「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ」という銘文が浮かんできます。

metamorphoseofcapitalism.hatenablog.com


政策研究・提言ランキング

ご案内

「新・暮らしの経済手帖」は経済の基礎知識についての解説を行う基礎知識編ブログも設置しております。画像をクリックしてください。

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200814191221j:plain
https://ameblo.jp/metamorphoseofcapitalism/

ameblo.jp

 
サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター  

https://twitter.com/aindanet