新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

ほとんどの人が知らないお金が生まれる仕組み (2019/6/26改訂)

今回から「必読!お金が発生する仕組み 」シリーズの連載開始です。いまわたしたちが手にしているお金が何ものなのか学んでいきましょう。

この世にお金がどういうかたちで生まれ変化してきたのか、みな知っているようで知りません。いきなりこういうと驚くかも知れませんが、お金は太古の昔に負債の手形みたいなかたちで生まれています。その性質はいまもずっと受け継がれています。このことを知っておかないと、これから話す金融緩和政策や財政政策のことが正確に理解できなくなります。お金は何ものかを知っておくことは非常に重要です。。お金の生まれ方がわからないと経済学が理解できなくなると言っても構いません。国家財政問題もそうです。お金を生み出す仕組みを知らないまま、経済学や国家財政の話を語ってはならないと強く言っておきたいぐらいです

これは私も勘違いしていたことですが、お金は物々交換から生まれたかのように思われています。何かと何かを交換するときに、不便だから何かの代わりに貨幣が遣われた・・・・・・それが多くの人が思い描いている貨幣の発祥です。

ところが原始~古代にかけての歴史を調べてみると、物々交換から貨幣が生まれたのではなく、借金の証文やツケ払い、手形のようなかたちで貨幣が生まれたというのです。文化人類学者のデヴィッド・グレーバーという人は「負債論~貨幣と暴力の5000年~」という本の中で、貨幣のない世界における交換において負債の果たす役割に注目しています。

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貨幣の原型が生まれたのは、農耕社会になった新石器時代(1.2万~1.1万年前)です。農作物は種をまいたり苗を植えてから収穫までの間タイムラグが発生してしまうのですが、それを埋めるために貨幣が活用されました。
例えばリンゴ農家のキツネさんがタヌキさんがつくっているぶどうがほしいとします。ところがキツネさんがつくっているリンゴがまだ実っていません。そうしたときにキツネさんが「リンゴが実ったらタヌキさんに差し上げます」という約束手形を渡し、タヌキさんが持っているぶどうを先に頂きます。このときキツネさんはタヌキさんに借りをつくったことになるのです。
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ところがこういう貸し借りをやっていると、踏み倒しなどのトラブルが起きてくることが容易に想像できるでしょう。そこでクニが登場し、その権力者がそうしたやりとりの仲介や担保をするようになります。さらには権力者への朝貢の手段として貨幣が遣われるようになってきました。

上の飯田泰之さんのコラムを読んでいきますと日本ではじめて生まれた公的鋳造貨幣である富本銭(680年代)や和同開珎銅銭(708年)の話が出てきます。富本銭都城や寺院の建設における人足への支払いに遣われていたようですが、まだモノとモノの取引に遣われていたような役目は果たせていなかったようです。
それから時代が下り、保有する銭の量によって位階を与える蓄銭叙位令(711年)、さらには722年以降の銭による納税の拡大により、徐々に流通貨幣としての地位を得ていくことになっていきます。政府に支払う手段を政府が供給したこと、一日の労働の報酬を銅銭一枚といった形で(特定の)労働の値段を政府が定めたことで、はじめて本格的な貨幣として機能していくことになります。(貨幣国定説

クニ(国家)が都城や寺院の建設といった人足に報償として様々な物品の代わりに銭を渡すというのは、クニが人足らに借り(負債)をつくって、その証である約束手形を渡したようなかたちになります。しかしそれだけですと空手形になってしまう可能性があり、信用が生じません。そこでクニがある者から徴税したものを必ず手渡すというと担保をつけることで、約束手形である銭に信用が生まれます。
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このように貨幣というものは「つくった借りは必ずお返しますよ」「朝貢しますよ」という信用や忠義の証として機能していくようになるのです。

現代遣われている貨幣も信用をもとに生まれています。そして新しい貨幣が生まれるときは誰かと誰かの間で貸しと借りの関係ができています。つまりは誰かが借金をしないと新しいお金は生まれません。このことを信用創造といいます。

簡単な例をあげて簡単にマネー発生・信用創造の流れを説明しましょう。
会社の経営者であるAさんが、新しい機械の導入や工場を建てるために資金が必要になって民間のたぬき銀行に「お金を貸してほしい」と融資を申し込みます。たぬき銀行が与信調査を行ってAさんへ融資を行うことを決めたとしましょう。

Aさんは既にたぬき銀行の預金口座を持っています。
Aさんへの融資を決めたたぬき銀行はAさんの預金口座へ融資額を打ち込むと、その口座に資金となる金額が振り込まれます。
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はいこれでお金が生まれました。

ということになります。

タヌキではなくキツネにつままれたようなお話ですが、これが信用貨幣制度や信用創造というものです。信用という葉っぱをお金に化かせてしまうような話ですが、そうやって生まれた紙幣を普段わたしたちは遣って買い物とかをしています。
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銀行は人々からお金をかき集めて、それを別の人に貸し出しているのではないのです。打ち出の小づちを振るうがごとく信用創造を行って金庫の中にあるお金よりもたくさんのお金を貸し出しているのが銀行です。もちろんそこら辺の葉っぱや石ころをどんどん化かしてお金を増やしてしまうようなことをやったらとんでもないことになってしまいますので、預金準備制度という法的な規制がかけられておりますが、それでも過去に化けの皮が剥がれて取り付け騒ぎ預金封鎖といった金融危機が起きたことがあります。
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「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet

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