新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

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世界大恐慌はなぜ発生したのか その3 サブプライムローンショックとは?

今回は1930年代の世界大恐慌の話から外れ、時代が下ったアメリカのサブプライムローンショックについて取り上げます。
世界大恐慌サブプライムローンショックは同じ構図で発生しています。株や不動産・資源などの価格が高騰し、それへの投機が異常加熱します。銀行は製造業などの実業への投資から株・不動産・為替・資源などへの投機家への融資へと傾き、信用創造をどんどん膨張させていきます。

前回1920年代のアメリカで株への投機や月賦ローンによる高額な耐久消費財の購入が大衆化してしまったことについて書きました。それは負債の発生によってお金を産み出す信用創造の起債者が資本家から大衆へと拡がったことを意味します。大衆が負債という鎖に縛られ、支配されていくことになっていきます。
それから数十年後、銀行や証券会社などの金融機関はさらに巧妙化した手法で投機バブルの発生やローンの拡大を進めていきます。1990年代後半からアメリカで利用が拡大していったサブプライム住宅ローンもそのひとつです。

それではそのサブプライムローンのからくりとそれによる住宅バブルの発生について見ていきましょう。
サブプライム住宅ローンは負債の返済能力が高くない低所得者向けの住宅ローンです。本来ならばとても家を購入できないような低所得者に、このローン制度を使わせてどんどん住宅を買わせ住宅販売を加速させました。さらにそのローンを証券化して世界中の投資家に売り飛ばしたのです。


証券化されたサブプライムローンは貸し倒れリスクが高く当然優良債権とはいえません。その代わり金利は高くつきます。ハイリスク・ハイリターン型の証券です。このような証券を売りやすく・買いやすくするために他の優良な金融商品投資信託などと組み合わせて正月に売られる福袋のようにしたのです。「味噌とクソを一緒にしてしまえばわからないだろう」というトンデモ金融商品でした。

しかもその当時のアメリカは不動産バブルで住宅が値上がりの一途です。仮にローンを組んだ低所得者がその返済に行き詰っても、住宅を高値で転売できれば焦げ付きつかないだろうという見込みもありました。それももともと危険が伴う投資であるという認識を薄れさせるモラルハザードの進行を助長させます。

そして値下がり等で損失があっても保険でカバーしますよというデリバティブ証券も生み出されました。これにサブプライムローンを組み合わせて売るのです。ハイリスクの不良債券あんこを優良証券やデリバティブという一見美味しそうに見える皮でくるんだ薄皮毒まんじゅうサブプライムローン証券であります。「ごまかし」の語源が中身のまずい餡子に胡麻をまぶして豪華なお菓子に見えるようにしたことであるとされていますが、まさにサブプライムローンは「胡麻菓子」といえるでしょう。

さらに「ムーディーズ」や「スタンダード&プアーズ」といった投資信用格付け会社がジャンク品だらけの福袋や毒まんじゅうに「優良証券である」という格付けをします。またノーベル賞を受賞した経済学者が「金融工学」と称し難解な数式を振りかざして、ファンドの有用性を説き箔をつけました。福袋の包装紙や毒まんじゅうの皮はさらにマブく見えるようになります。

しかし冒頭で述べたようにサブプライムローンは元々まともに借金を返済できないような低所得者向けのものですから、どんどん焦げ付きが発生します。そして不動産の価格上昇が頭打ちになってローンの担保である住宅の価格が値崩れしていきます。サブプライムローンが一斉に暴落しバブル崩壊を迎えました。

「開けて後悔するな福袋」

です。

世界大恐慌を起こす前の1920年代のアメリカと2001年頃より同じくアメリカで発生した住宅バブルが同質のものであるということに気づかれることでしょう。1920年代のアメリカは資本家たちのカネが余ってダブつき、銀行は投機家たちに融資しました。

バブル経済とその崩壊は銀行の融資と信用創造がモノの生産から株・不動産・為替・資源などの投機へと移ってしまうことと、それの異常膨張が主原因です。アメリカの場合ローンを組むべきではない低所得者にまで負債を発生させモノをどんどん買わせてしまう構造や危険性の高い証券を購入者の感覚を麻痺させて売りつけるような金融機関の販売手法がモラルハザードの進行させたことも要因のひとつです。
もうひとつ言い方を変えればなりふり構わず与信ランクが低い低所得者に乱脈融資を行わないといけないほど銀行による信用創造が進まなくなり、資本主義経済が成り立っていかなくなってしまったともいえます。

あとでまとめて書きますが、こうしたバブルの発生と崩壊の連鎖は負債からマネーを産む信用貨幣制度がもたらしたものです。その問題の根本解決策は銀行の融資でマネーを発生させる信用貨幣制度から議会承認というシビリアンコントロールでマネーを発生させる政府(統制)貨幣制度への移行となります。サブプライムローンショックの余波で激しい経済危機に陥ったアイスランドがそれを克服する手段として選んだのが通貨改革です。

また話を1930年代に巻き戻し、世界大恐慌がもたらした災厄とその被害拡大を食い止めるための経済・金融政策について述べていきたいです。日本の昭和大恐慌高橋是清が行った政策も取り上げたいです。

参考文献紹介
 のらねこま氏 著 「金融緩和の天国と地獄」

前回ならびに今回の記事執筆において上の書籍を参考に書かさせていただいております。さらに詳しくやさしく解説されておりますのでお勧めしたいです。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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