新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

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恐慌を食い止めよ その2 融資と投資の再起動

起きてしまった恐慌や激しい需要ショックにどう立ち向かっていくのかという方策についての話・第2回目です。

1929年にアメリカで発生した世界大恐慌と、それに連動するかたちで日本で発生した昭和恐慌、それから時代を下り2007年にアメリカで起きたサブプライムローンショック、1990年代初頭に弾けた日本のバブル景気崩壊を調べていくと気がつくことは、銀行融資と企業の投資が行き詰っていることです。

企業の経営に携わっておられる方は肌身にしみてご存知かと思いますが、多くの企業は無借金経営でもない限り銀行からの融資を打ち切られた瞬間に息の根を止められます。資金づまりを起こせばとたんに会社の操業ができなくなり潰れることになります。銀行による融資は企業によって血液と一緒です。それが国中、いや世界中で一斉に起きてしまうのが恐慌という現象で、企業の倒産や失業者が大量に発生します。世界大恐慌のときは1929年から32年までの間に世界の工業生産は半減し、32年末には全世界の失業者が5000万人を越えたと推定されています。
日本も例外ではありませんでした。昭和恐慌が起きたとき都市部では失業者があふれ、農村では餓死者が出たり、娘の身売りが横行していました。

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恐慌が起きたときの経済状況をグラフ等で調べてみますと、ほぼ共通して見受けられるのが投資並びに雇用の激しい落ち込みです。

 P2の図1 実質GNPの推移 ↓
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上で述べたように恐慌が起きたときは銀行等の金融機関が信用創造で新たなマネーを産み出さず、企業への融資が寸断されます。設備投資や雇用(賃金による所得分配)ができなくなってマネーの供給も停まるのです。市中のマネーは枯渇し流動性が失われます。

このような深刻な事態から抜け出すためにすべきことは融資(信用創造)と投資の再活性化です。

そのために用いられる手法が金融緩和と財政出動となります。しかもそれは同時にそしてかなり大胆に行う必要があります。平時ならば金利の引き下げといった金融緩和だけで銀行による融資が増えますが、恐慌の場合は企業が積極投資を躊躇いますので融資需要が限られます。
そこで銀行融資と企業の設備投資・雇用を促すために、国が赤字財政も辞さないほど思い切った財政出動を決断し大規模な国家投資を行います。これによって停まっていた銀行融資(信用創造)と企業の設備投資・雇用が再起動できることになります。

クルマのエンジンでいえば財政出動は停まっているエンジンを回すために、バッテリーに貯めてある電力を使ってセルモーターを回すようなものでしょう。いつまでもバッテリーの電力やセルモーターに頼るのではなく、最初の起動のときだけに財政出動を使うのです。一度市中銀行による融資と企業の投資が再開したらそれに任せていきます。

そして世界大恐慌前にアメリカで発生したバブル景気の解説でもお話しましたが、モノの裏付けがないまま株・不動産・為替・資源等などへの投機行為だけで膨らませたイリュージョンマネー(バブルマネー)がそれらの価格暴落で消失してしまい、銀行や企業・個人のバランスシートが資産の消失と負債の膨張で崩れてしまいます。消えたイリュージョンマネーの穴埋めのために新たなマネーを生まないといけません。
理不尽な話なのですが、国が市中銀行や民間企業に代わって負債をつくり、その信用創造でそのマネーをつくる必要が出てくるのです。中央銀行が民間銀行から国債を買い受けするか、政府から国債を直接引き受けるといった手段が登場します。

恐慌が起きたときの危機脱出政策の一例として昭和恐慌の際に蔵相となって辣腕を振るった高橋是清の財政策について取り上げていきたいと思います。高橋財政はケインズ経済政策のさきがけというべきものであり、非常に鮮やかかつ合理的に恐慌の危機を脱しました。高橋是清の前の蔵相井上準之助財政と比較しながら検証していきたいと思います。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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