新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

2007~2009年の深刻な不況を招いた自民党政治と90年代型日本的経営

2009年9月に自民党麻生太郎政権は衆議院解散総選挙で大敗し、民主党に政権を奪われ退陣に追い込まれました。麻生政権が倒閣した理由はなんでもない2007年~2009年にかけて起きた深刻な不況に対する国民の不満が爆発したからでした。

この不況の元凶はサブプライム住宅ローン・モーゲージの焦げ付きによって引き起こしたアメリカでの金融危機であると見なされ、「リーマンショックによる不況」という言い方をされます。
しかしながらこの時期の国内の経済状況を調べていきますと、外需の落ち込みだけがもたらしたものではないことに気がつきます。少し前にも書きましたが、日本のGDPや株価などの落ち込みは本家アメリカ以上に落ち込んでいます。
小泉政権末期の2006年3月に量的金融緩和政策を解除したあたりから賃金や投資・物価の再下落がはじまり、2007年あたりに原油や食糧などの資源価格の高騰で不況が進行しているのも関わらず物価だけが上昇してしまいます。連続する賃下げや非正規雇用の拡大で住居を持てないネットカフェ難民と呼ばれる生活困窮者も増加していました。
派遣切りと云われる非正規雇用者の大量解雇問題は輸出に頼ってきた自動車・電機産業が急激な外需の落ち込みによって、製造ラインが空いてしまったことが発端で起きましたが、内需もそれを補えないぐらい萎縮していたことも無視できません。

数回目になりますが野口旭先生が書かれた記事で添付されたグラフをもう一度ご覧ください。
「日本の名目賃金指数、消費者物価指数、および実質賃金指数(1990〜2016年)」
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引用 ニュースウィーク 野口旭先生 「雇用が回復しても賃金が上がらない理由  」より

名目賃金が1997年からずっと下落し続けています。つまりは就労者=消費者の(恒常)所得や購買力がどんどん下がる一方です。自動車の国内販売台数もじわじわ下がっていました。1997年と2006年以降から落ち込みが大きく目立っています。
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グラフ引用 株式投資の全て

上で述べたように2007年に資源価格高騰で物価上昇をしていますが、このとき同時にデフレの素地も水面下で進行していました。消費者の購買力がどんどん細っていくので、原料費が高騰しても価格に転嫁できません。ですので賃金などをコストカットする以外にありませんでした。原材料費高騰による価格抑え込み→投資ならびに雇用抑制・賃下げ→就労者=消費者の(恒常)所得低下→デフレ(当時はスタグフレーション的)の悪循環にはまります。
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1990年代より脆くなっていた国内経済がリーマンショックという外乱を与えられることによって2007~2009年で一気に崩れてしまったとみるべきでしょう。多くの国民もそれは自民党政権がもたらしたものだと見做したために2009年多くの有権者は怒りの一票を投じ潰したのです。

社会党の党首だった村山富市内閣から政権を引き継いだ橋本龍太郎内閣以来、小渕恵三内閣と麻生内閣を除き、1990年代以降の自民政治は基本的に緊縮財政で公共事業や社会保障・福祉・医療給付水準を圧縮し続けてきました。1997年の消費税5%引き上げを筆頭に増税もじわじわ進んでいます。
その一方で高所得者や企業向けの所得税や資産課税、法人税の引き下げを行っていました。減税によって高所得者層が消費を活発化し、中・低所得者層にもその恩恵が及ぶというトリクルダウン理論に基づくものです。これについては小泉純一郎竹中平蔵が推し進めたと世間で言われがちですが、橋本龍太郎政権でも見られたことです。
あと財界の方になりますが、企業が賃下げや非正規雇用の拡大を進めはじめたのも1997年のことで小泉・竹中改革の前である橋本龍太郎政権からです。それと企業が得た利益を労働者ではなく株主に分配するという流れが生まれたのも1990年代から強まったことでした。
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グラフ引用 プレジデント 北野一氏 「なぜ会社は給料を減らしながら増配するのか」

橋本内閣以降の自民党政治や財界の動きはアメリカ型保守主義や経済モデルを範にしはじめます。
官から民への以降と小さな政府化による国家財政歳出削減、所得(再)分配の縮小、自由競争の奨励や自己責任の強調、低・中所得者から富裕層・大企業優遇型の経済政策と行財政、労働者より株主を優先をした所得分配、短期利益重視といった政治・経済スタイルはそこから持ち込まれたもので、企業の設備や雇用を縮小する「リストラ」や雇用の流動化の考えもアメリカ型経営を倣ってのものです。
このことによって1997年以降の日本は弱肉強食型の冷漠社会へと転換していきましたが、国民はその不満を重ね続け自民党政治や財界に対する積年の大怨となっていきます。

バブル景気が崩壊してからの日本経済をずっと追って分析してきました。その転落の第一歩は「平成の鬼平」こと三重野康日銀総裁の金融引き締めにありますが、「失われた20年」と呼ばれる連続的な経済活動の萎縮(デフレ)は1996年からはじまる自民党政権がもたらし続けたものです。13年もの間虐げ続けられた国民は所得(再)分配重視の政策を望み左派政党による政権への期待を膨らませていきます。

麻生政権の倒閣後、「国民の生活が第一」「命」「コンクリートから人へ」を標榜した左派政党の民主党政権が生まれますが、この政権は「人にやさしい政治」という国民の淡い期待を裏切り、自民党政権以上の混迷と緊縮シバキ行財政をもたらすことになります。次回からその民主党政権時代の話です。


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