新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

第2次安倍政権発足前より高まるリフレーション政策への期待

「デフレと失われた20年」編はかなり長いシリーズとなりました。日銀や橋本龍太郎政権から麻生太郎政権までの自民・公明政権および民主党政権による20年間もの金融無策によってこの国は流動性の罠に陥るほどのひどいデフレ経済に陥っていました。企業の投資(雇用)や国民の消費がずっと低迷し、生産活動がどんどん萎縮し続けます。その結果、20年間の日本の物価上昇率は世界最下位で、GDPについても日本がアメリカに次ぐ世界第2位だったものが、中国に抜かれ3位に転落しています。

このような状態を憂い続けたのがリフレ派といわれる経済政策研究グループでした。「リフレ」はリフレーション政策の略ですが、簡単に説明すると金融緩和政策や財政出動政策を用いて、企業の投資(雇用)や国民の消費活動の活性化を促し、それを年数パーセントほどの穏やかなインフレーション状態になるまで続ける政策です。欧州では左派リベラル系の政治家や政党が好む経済政策だといわれています。本来であれば日本の民主党が率先して行うべき政策でした。

とはいえ日本のリフレ派といわれる経済学者や評論家たちは松尾匡先生のようなマルクス主義者だけではなく、上念司氏のような保守系の論客もリフレ派に加わっており、超党派的な経済政策研究グループだと見ていいでしょう。他にリフレ系の論客として有名な高橋洋一先生や田中秀臣先生も後に述べるように自民党みんなの党・維新の会などの保守政党だけではなく民主党もリフレーション政策の導入を提案してこられています。

私がリフレーション政策に興味を持ち始めたのは東日本大震災後で、今年でやっと7年目です。まだ新参リフレ派・生半可リフレ派のうちでしょう。上で述べた高橋洋一先生や田中秀臣先生、あと現在日銀の副総裁や審議委員メンバーになられている岩田規久男先生や原田泰先生などはそれこそ20年以上もデフレ克服のために闘い続けてこられました。その念願がようやく実現したのがアベノミクスです。

リフレーション政策の内容については金融政策のことを理解しないといけないのですが、残念ながら公共事業(土木だけではない)や補助金社会保障支出といった財政出動と比べてどうやって景気がよくなっていくのかというイメージが掴みづらいのか、なかなか全国民に浸透しません。アベノミクスがはじまって5年以上たった今でもおそらく国民の9割はリフレーション政策のことを理解していないでしょう。たまたま奇跡的に安倍晋三氏が山本幸三議員の勧めもありリフレーション政策に興味を持ちはじめ、浜田宏一先生の教えを乞うたことによってそれが導入されたに過ぎません。

上で述べたように高橋洋一先生は財務官僚時代から政府貨幣発行やヘリコプターマネーの提言をされたり民主党霞が関埋蔵金のことを教えるといったことをしてこられました。田中秀臣先生や勝間和代さんらは民主党リフレーション政策導入の説得を行っています。しかしながら民主党をはじめとする日本の左派政党は経済学に無関心な議員が多く、蔑視すらしているぐらいです。民主党内にも馬淵澄夫氏や金子洋一氏、宮崎岳史氏などといったリフレ系議員がおられましたが、党内で主流派とはなりえず、現在全員議員資格を失っている状況です。勝間和代さんがどこかで言われていた話では菅直人リフレーション政策の説明をしても「馬(鹿)の耳に念仏」状態だったとこぼしています。

その一方で渡辺喜美氏らが立ち上げたみんなの党橋下徹氏が代表を務めた大阪維新の会日本維新の会・おおさか維新の会がリフレーション政策に理解を示し、アジェンダや維新八策に盛り込みます。私も東日本大震災後からみんなの党を支持してきてきました。ところが両党ともに官僚依存型の行財政を改革するという旗印を掲げていた政党で、官僚のリークで動かされたマスコミによる妨害工作によって党や代表のイメージを棄損させられたり、内部分裂工作を仕掛けられて党勢を失っていきます。みんなの党は解党に追い込まれました。

そういう意味でリフレーション政策が実現するまでの間に多くの血が流れ、討ち死にした政治家がいっぱいいます。リフレーション政策についても財務省国債の利息ならびに取引によって収益を得る金融機関の御用学者らから「ハイパーインフレになる」「リフレーション政策をやっても効果はない」などといった妨害を執拗に受けております。

それでも白川方明日銀総裁の金融ネグレイト政策や民主党政権の経済無策によって日本の経済がどん底にまで突き落とされたことにより、その打開策としてリフレーション政策導入を待望する人たちがじわじわ増加していきました。谷垣禎一氏にかわる自民党の総裁として安倍晋三氏が選出され、氏がリフレーション政策導入に積極的だと知らされたことによってリフレ派たちは大いに沸き立ちます。そうして2012年12月に民主党野田政権が衆議院解散総選挙を行って安倍自民党が政権を奪還。リフレーション政策を採り入れたアベノミクスが始動します。その期待の大きさからか就労者人口は政権発足と同時に上昇が見られ、株価の動きなどが敏感に反応しました。ロケットスタートです。

アベノミクス始動によって1990年代初頭より20年も続いたデフレ状態からの再生の第一歩を踏み出しました。アベノミクスから来年で6年目となりますが、現在もなお回復の途上です。リフレーション政策ならびにアベノミクスについては次のシリーズ「アベノミクスとリフレ政策 」で詳しく書いていきます。

次回は「デフレと失われた20年」の最終回です。

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