新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

なぜリフレーション政策が求められたのか?その1 足りない有効需要を埋めるために

アベノミクスとリフレ政策 」の第2回目はリフレーション政策を導入しないといけなくなった背景について、5年以上前に戻り振り返ってみたいと思います。

表題の結論をズバリ一言で言えば「萎縮していた企業の投資(←雇用も入る)を再活発化させ、(所得)分配を加速させる」ためです。それがリフレ政策の目的と意義です。つまりは投資拡大という形で企業にお金を遣わせ、就労者への分配を増やす太陽政策です。
デフレと失われた20年 」編の第1話「異常すぎる20年以上のデフレ状態 」から順に読んでいただけたらわかるかと思いますが、日本は「”平成の鬼平”が引き金となった失われた20年 」で書いたように1990年代初頭に当時の日銀総裁三重野康氏がやってしまったバブル退治の金融引き締めが発端となり、以後20年近くも銀行の融資や企業の投資が委縮気味になってしまいました。これが雇用の悪化と不安定化をもたらし、多くの勤労者の生活水準を落とし貧困の原因につながっていったのです

2007年あたりから起きた深刻な不況によって、工場の製造ラインの稼働率がガタ落ちになり、派遣労働者を中心に大量解雇されました。高校や大学新卒者の求人状況も悪化し、就職氷河期となります。「就活うつ」や低賃金・長時間労働パワハラの横行などが常態化した「ブラック企業」という言葉が流行っています。

イメージ 1

リフレーション政策の考えを採り入れたアベノミクスがはじまる前の2012年まで白川方明日銀総裁が金融を引き締め続けたために空前の円高を招き、かつては花形といわれた日本の自動車や電機などをはじめとする輸出産業が深刻な打撃を受けていました。

この事態を改善するという意味でもリフレーション政策の手段のひとつである金融緩和政策に期待が持たれていたのです。

ここで不況という状況について見てみましょう。
総需要(有効需要)は家計消費C+企業投資I+政府支出G+純輸出EX(外国)の総計になります。不況になると企業投資Iが落ち込みます。これはケインズが観察したことです。

グラフ 民間設備投資の推移
イメージ 2

上のグラフは不況期を青枠で示していますが、そこでは民間の設備投資が大きく下落します。
企業投資Iだけではなく家計消費Cも含めたグラフも確認してみましょう。

グラフ 民間需要(民間消費)と外需(輸出)、それと企業の投資の推移
イメージ 3
引用 山本博一(ひろ)様ブログ記事 「まずは需要創出 」より。

赤線の民間消費は1995年以降横ばいに推移したままですが、極端に上下していません。しかし青線の企業の投資は好況期と不況期で激しく上下しています。

不況期は総需要(GDP)が総供給(潜在GDP)を下回ります。
イメージ 4

そうなると企業に勤める労働者や生産設備がダブつき、過剰投資となってしまいます。
需要が増えないのであればリストラをして人員削減や賃金引下げを行ったり、生産設備の縮小などをしないといけなくなります。2008年ごろはそれがかなりひどく、工場の生産ライン稼働率が下がり設備が遊んでしまうありさまでした。(参考 幣サイト 「2007~2009年の深刻な不況を招いた自民党政治と90年代型日本的経営 」)

総供給と総需要の差(GDPギャップ)を埋めるには政府支出で足りない有効需要を補うことと落ち込んでいる民間企業投資意欲回復のための金融緩和政策が必要となります。それを主張していたのがケインズでした。

有効需要のなかでいちばん低下していた企業の投資意欲を引き出すための仕掛けとして、2%ほどのインフレ率になるまで金利を低くし、マネタリーベースを高く積んで銀行が企業への融資をしやすくするといった政策がリフレーション政策に盛り込まれます。

1990年代からのデフレ不況は慢性化し、流動性の罠に陥ってしまうぐらいでした。これまで行われてきた金利を引き下げるだけの金融緩和では効果が発揮しなくなってしまいます。そこでインフレ予想をつくって企業の投資意欲を促す手法が用いられることになります。これが非伝統的金融緩和政策、異次元の金融緩和政策といわれるものになります。

次回は流動性の罠リフレーション政策についてです。

~お知らせ~
今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet

イメージ 1