詳しくは後日「ハイパーインフレについて 」編や「税と国家財政問題 」編で述べるつもりですが、量的緩和政策や日銀の国債買受や直接引受などといった財政ファイナンスはそれを実行したことが即、異常な物価高騰や国家財政悪化もしくは国債暴落に直結するものではありせん。インフレ目標の設定や不足している有効需要の算出を怠り、放漫財政に突っ走ってしまったことが問題なのです。(やたらしきりに財政出動ばかり連呼する人たちは要注意ですが・・・・)
国家財政問題を考える上で最初に必要なことはフローの問題とストックの問題を分けることです。
フローは各年度ごとの財政収支のバランスでプライマリーバランス(PB)もそのひとつです。
ストックは累積する資産もしくは負債の高さです。よくいわれる「日本政府の借金は1100兆円」がそれです。
まずはフローの方からリフレーション政策効果をみていきましょう。
各年度の税収ですが、これはそのときの景気状況によって税率が同じでも大きく税収が変わってきます。景気がよくなれば個人や企業の所得が増加しますので所得税・法人税による税収が伸びます。やはり税率が同じでも消費が伸びれば消費税による税収も上がるでしょう。(→ただし消費税は景気による税収の変動が所得・法人税に比べ小さいが)
よく国家財政問題で増税の話をするときは税率を上げることばかりが取り上げられますが、納税者の所得や消費活動をどう伸ばすかという視点が見逃されがちです。江戸時代の年貢で「五公五民」とか「六公四民」などと云われますが、同じ年貢率でもその年の収穫が高ければ石高が変わってしまいます。不作になれば同じ年貢率でもぐんと石高が下がります。無いコメを取り上げることはできません。
アベノミクス始動後の税収はどうなっているでしょうか?
グラフ引用 倉田満氏 チャンネルくらら ツイートより
リーマンショックによって景気が極端に悪化した麻生政権時代は税収が極端に落ちているにも関わらず、大規模な財政出動が必要だったために歳出と税収がワニの口で開きます。一方安倍政権時代になってからですとしっかり税収が伸びています。
(2014年に消費税を8%に引き上げたために景気回復による税収増の貢献度は上のグラフだけだとわかりにくいが、別の消費税収変化のグラフを確認すると景気の貢献度がしっかりあることがわかる→「消費税と税収の関係をグラフ化してみる(最新) - ガベージニュース」)
国債の発行や償還を除いた歳入・歳出の収支状況であるプライマリーバランスの方は
歳入 歳出 PB
2014年 62.6兆円 76.6兆円 △14 兆円
2015年 63.6兆円 75.7兆円 △12.1兆円
2016年 62.3兆円 73.7兆円 △11.6兆円
2017年 63.7兆円 74 兆円 △10.3兆円
PBでも赤字は出しているものの年々赤字幅は縮小傾向です。
フローの話は簡単に済ませて次にストックの方に財政改善効果ついて述べていきます。これは政府側だけではなく日銀のバランスシートも合わせてみないとわかりにくい話ですが、量的緩和のために行った日銀の国債買受が実質財政再建へとつながったのです。
それがどういうことかと言いますと、銀行などが購入していた国債を量的緩和のときに日銀がどんどん買い占めしていきます。日銀は買い取った国債の代金を日銀内の設けさせた民間市中銀行用の当座預金に振り込みます。それは政府がつくった借金を日銀が代わりに返済したようなものになります。
やや乱暴な例えですが勝新太郎さんがつくった借金の証文を奥さんの中村玉緒さんが買い取ったような図式です。勝新さんと玉緒さんは同じ奥村家として連結決算できますので、債務を償還した形となります。債権者側は何の問題もありません。
*注記
ただしくどいようですが、このように財政ファイナンスで債務を償還するという手が使えたのは日本が深刻なデフレだったからです。財政ファイナンスのインフレ圧力がデフレを中和させるかたちになってくれましたが、無制限にこれを続ければひどいインフレを引き起こす可能性があります。
これを聞いただけでは一般の人はキツネにつままれたような話に思えるかも知れません。まずは量的緩和政策と財政ファイナンスの関係図ならびに前回使った日銀による国債直接引受と買受のバランスシート模式図をご覧ください。
国債日銀買受と引受の違い
参考記事 「量的緩和政策による財政ファイナンスと大型財政出動 」
国債日銀直接引受の例
国債日銀買受の例
政府と日銀を統合政府として見立てたとき、政府(+子会社的組織)のBS負債側にある公債と日銀BS資産側にある国債は相殺されます。そのときの資産と負債の差は116兆円程度まで縮みます。
~お知らせ~
今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。