新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

リフレーション政策は物価を上げることが目的ではありません。

この記事を書いている2018年1月現在ですが、天候不順の影響などで白菜やキャベツなどといった農産物が不作で価格がかなり高くなっています。キャベツ1玉300円台になっていたりします。

これについて非常にバカげたネットコラム記事がありました。今の野菜の価格高騰はデフレ脱却の兆しであるなどと書いています。コメントも「バカか?」「経済学の教科書を読み直せ!」と評価が散々です。

この人コアCPという言葉を知らないのでしょうか?マクロ的な経済状態を推しはかるための物価計算に天候などの自然状況によって収穫高や漁獲高が変動しやすい農産物や水産物の価格状況は除きます。それがコアCPです。いまの野菜の価格上昇はリフレーション政策とはまったく関係がありません。どうしようもないですね。

児島以外にもリフレーション政策の目的は物価を上げることだなどと勘違いしているバカが多すぎます。リフレーション政策の目的は企業の投資を促すことによって雇用を拡大させることです


インフレ目標はそのための手段だと何度も申し上げていますが、全然頭の中に入っていかない人が山ほどいますね。「物価が上がったらリフレは成功」だとか「物価が上がらないからリフレは失敗」などという人は完全に勉強不足です。私はツイッターなどでそういうコメントをしてくる人間は門前払いにしています。(速攻ブロック) 議論の相手にもなりません。リフレーション政策を批判したいのであったら、リフレ派と云われる経済学者が書いた本を徹底的に読み尽くしてから批判すべきです。

雇用の改善にも物価は多いに関係します。企業の人員補充を行うかどうかの判断は自分の会社の業績が上向くか下向くかで変わってきます。当然のことですね。物価上昇予想=業績向上予想となりますと企業は新しく設備なり人員を増やして事業拡大を計り儲けを増やしたいという動機が発生します。リフレーション政策のインフレターゲットをやる意味はこの動機づくりです。

実質賃金とは名目賃金から物価上昇率を差し引いたものです。
 実質賃金=名目賃金-物価

企業側にとって物価が上がっていくことになると人を雇う負担が軽くなります。人件費以上に儲けが増えるからです。逆に不景気で物価が上がらないときは企業の業績が思わしくないのに人件費負担が重くなります。いくら会社の経営が苦しくても簡単に従業員のクビを切れないので大変です。残酷な話ですが、企業の経営者は非情な手を使ってでも稼げない赤字社員を辞めさせたいという動機が強く働きます。高いコスト負担で無理して雇った社員は当然徹底的に扱き使ってたくさん稼いでこさせないと元が採れません。多くの会社の経営者は手当をつけず社員に膨大な超過勤務をさせるなり、厳しいノルマを背負わせて強引に黒字社員化させるといったことをしたくなるわけです。さらにもっとえげつない経営者は赤字社員はパワハラをかけるなどして潰し、自主退職に追い込むといった手もつかうことでしょう。
不景気のときは実質賃金が上昇しますが、ブラック経営が蔓延して結果的に就労者が地獄を見ることになります
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いくら実質賃金が高く見えても不景気で企業が雇う人の数が減ってしまえば富が分配される人とそうでない人が生まれます。しかも新卒の学生である場合、その年の求人状況が悪かった場合正社員採用を諦め、待遇が悪く所得が不安定な非正規雇用に従事しないといけなくなります。不景気こそ格差の元凶です。

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不景気から雇用が回復する過程はまず「広く・薄く」です。どんな経済政策であっても一挙に「広く・厚く」なんてことは起きません。渇水で干からびた池に水を張るにしてもまずは広く・薄くになります。水が全体に行き渡ってから徐々に水位が上がります。全就労者の賃金に厚みが出てくるのは面の改善が進んでからです。
これは浜田宏一教授が仰っていたことですが、リフレーション政策は一種のワークシェアリングとみることができます。雇用者数の拡大によって多くの人へまんべんなく富の分配がなされる形となります。「アベノミクスで格差ガー」って何を言っているんでしょうね?

リフレーション政策による物価上昇は企業の投資や一般の消費が活発になって需要が増えることによって達成されていくことになります。目的というより結果です。冒頭の児島のようになんでもかんでも物価さえ上げたらリフレ成功ではないのです。インフレターゲットは「物価上昇が2%に達したということはもう十分に政策目的である投資や消費が回復したのだろう」という判断基準に過ぎません。

とはいえリフレーション政策がはじまって5年目となる2018年1月現在において、なかなか(正規雇用者までの)賃金上昇や物価上昇がなかなか進んでいない状況で「リフレーション政策は成功した」というべきではないでしょう。はっきりと正規雇用者の賃金上昇や物価上昇がはっきり認められないならば、その原因を突き止め補う政策をすべきです。さらなる金融緩和はもちろんのことですが、消費改善に向けた全国民への給付金支給といった財政出動も積極的に進めるべきです。

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