新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

これからの土木公共事業の考え方

先日下の2つの記事で自民党田中角栄経世会が進めていた土木公共事業偏重の財政政策に批判的なことを書きました。

2点の記事で伝えたかったことは土木公共事業の目的が国民生活の利便性向上や地域活性化、そしてマクロ経済政策の活発化からかけ離れて、建設すること自体が目的化してしまっていたという問題です。昔の日本軍部と同じで戦争が外交手段から目的にすり替わり、それだけがどんどん肥大化してしまったのと同じです。
建設国債で建設費用を賄おうが、最終的にその償還は国民から税金を徴収するかたちとなります。政府貨幣でやればいいなんて論法は使えません。(これは後日説明します) 最終的に国民に重い税もしくは労働負担を背負わせることになります。負担に見合うだけの国民の利便性や経済効果が得られるのかわからないような歳出はすべきではありません。

と、土木公共事業に否定的なことを述べましたが、小泉純一郎内閣で経世会流の土木公共事業偏重行財政が一掃され、そうした問題に目くじらを立てるような必要が薄まりました。私も今は「土木公共事業ダメ!反対」などと声高に叫ぶつもりはありません。インフラ整備によって幅広い経済波及効果が望める事業については大いにすべきです。北陸新幹線は金沢までの延伸後利用状況は好調で金沢を中心にビジネス・観光共に大きなインパクトを与えたようです。
イメージ 1

また日本という国は台風や地震津波など様々な自然災害の脅威にさらされています。毎年どこかの道路や橋、鉄道路線などのインフラがそれらによって破壊されています。東日本大震災はその中でも最も大きな被害をもたらしたものですが、7年経った今でも復旧・復興工事は終わっていません。それ以外の場所で起きた自然災害による橋などの流出で復旧工事が完了するまで数年かかりそうだという話も聞かされます。


鉄道の場合は復旧予算の問題が関わっているのですが、工事に当たる建設業者や技術者不足が工期長期化につながっていることを否定できません。災害復旧だけではなく、東京オリンピック関係の工事でも人手不足による建設技術者の過労死や事故が発生しています。
イメージ 2

上で述べた小泉改革の後に建設会社が60万社から46万社前後にまで減りました。建設不況によって人員抑制が進み、後継の技術者が育っていません。近年では役所が公共事業工事を建設会社に発注しようとしても入札不調に終わることが多いです。明らかに供給側の不足です。かつての経世会みたいに土木公共工事をどんどん増やして経済活性化などという政策はやりたくてもやれないと言った方がいいかも知れません。

実を言いますと私もネットで建設関係者の方のつながりが結構多いです。その人たちの状況を見ているとかなり多忙で休日出勤や残業が当たり前になっています。この業界はもうフル稼働状態だといっていいかと思われますが、あまりに供給能力が低下してしまうと自然災害によるインフラ破壊や老朽化した施設の更新ができなくなる恐れがあります。建設技術者はアルバイトと違い、技能を身につけるための修練期間が何年も必要です。すぐに人が要るからといっても簡単に職人さんを集められないのです。

かつてみんなの党や日本を元気にする会の代表を務められた松田公太氏も提案されていましたが、公共事業工事発注の平準化をしていかないとまずいと思います。ある政権のときはイケイケで公共事業工事を濫発したけれども、別の政党に代わったとたんに削減したなんてことを2~3年程度で繰り返すと建設業者は混乱するでしょう。その結果超過勤務による過労死や事故の多発を招いたり、急な発注削減で建設会社をバタバタ倒産させて失業者を出すなどしたら、いっそう建設業界の疲弊と衰退が加速します。

土木公共工事は平準的に細く長く続けるスタイルにしていかないといけないのです。

あとついでに申せば「アベノミクスリフレーション政策」編の「異次元の量的・質的金融緩和政策 」において量的緩和で日銀内にある民間銀行用当座預金口座に準備預金(ベースマネー)をたくさん積み上げるという説明をしました。
イメージ 4

イメージ 3

このベースマネーは銀行が民間企業への融資を積極的に行わせるためのものですが、銀行がこのお金を遣って直接株式や不動産に対し投資することもあります。それによって不動産の資産価値が上がり、マンション等を購入する人が増えます。もちろん金利が長期に渡って低く抑えられますからローンを組んで住宅を買いやすくなりますし、企業は自社の店舗や工場設備などの新設や更新を積極的に行うようになるでしょう。

つまりは量的緩和政策が経世会流の土木公共工事に替わる建設業界の需要拡大支援策となるのです。

役所が供給(建設会社)側の状況を考えずに公共事業を発注するよりも、民間の建設需要を増大させてやるやり方を選ぶべきではないでしょうか。供給不足状態での公共事業大量発注は民業圧迫につながります。

~お知らせ~
今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet

イメージ 1