新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

「震災復興~欺瞞の構図~」から「ベーシックインカム」へ ~現金直接給付型が最も民主的~

デフレと失われた20年 」編の「震災復興費は誰のものか~被災者への直接給付/支援こそが復興の早道~ 」で原田泰教授(現日銀審議委員)が東日本大震災の復興政策の問題について述べた「震災復興~欺瞞の構図~」という本を出されたことを紹介しました。
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原田先生は最初から増税ありき・大規模な復興工事ありきで震災復興計画が進められていることに疑問を持ち、もっとコンパクトで効果/費用の高い復興政策のやり方があるのではないかと指摘されたのです。対案として出されたのが津波などで住居を失った被災者への住宅再建資金給付や被災企業の経営再建に必要な資金援助で、大がかりな防潮堤築造・土地かさ上げ・高台移転といった大規模な復興事業を行うよりも早く・安く復興が進むのではないかと仰っています。もちろん南三陸町志津川みたいに高さ15メートル以上の津波が襲って町が丸ごと呑み込まれてしまったような土地はかさ上げか高台移転をせざる得ないので原田案のすべてを支持できないのですが、それでも被災者を直接支援する形の復興費支給がいちばん望ましいかたちだと私も思います。

日本の震災復興ですが、街の区画整理などの再開発や道路などの再建・官庁や学校などの耐震性強化・防潮堤建設など公共施設やインフラの再建費用や防災強化については多くの予算が注ぎこまれます。しかし被災者個人への救済は非常に手薄で阪神淡路大震災のときは、自宅が倒壊してしまった人は自力再建するしかありませんでした。個人資産の損失補填に公費を投ずるのは憲法違反であるというのがそれまでの行政判断でしたが、鳥取西地震が起きたときに当時の片山善博知事が住宅再建支援策を導入します。これによって被災者の生活再建が円滑に進み、人口流出を防止できたとされます。10年近くの時間をかけ巨費を投じてインフラ再建や補強をしても地域経済が沈滞し過疎化が進んでゴーストタウン化してしまえば無意味な復興事業となります。原田先生の指摘は傾聴に値します。

原田先生はさらに2015年「ベーシックインカム」の本も書かれました。
こちらの方が書かれている書評「原田泰『ベーシック・インカム』(中公新書) 7点 : 山下ゆの新書ランキング 」のように「震災復興~欺瞞の構図~」の延長線で「ベーシックインカム」が書かれたと見ていいかと思います。
原田先生はかなり冷徹といっていいほどの市場原理主義者です。以前原田先生は「日本の年金支給額は高過ぎる」「社会保障は削るしかない」「小泉政権下の金融緩和と緊縮財政の組み合わせという政策が成功した」といったことを億面となく述べられており、正直私も読んで「ギョッ」とさせられたものでしたが、逆を言えば原田先生は徹底した合理主義者でその主張におかしな恣意が混じっていないと受け止められるでしょう。

原田先生は貧しいことはお金がないことである。ならば政府が貧しい人に直接現金支給をすればよいのではないかと問われます。ベーシックインカムですべての人々に漏れなくお金を渡すこそ確実な貧困解消法であると言い切ります。

これまで日本の国は建設業界をはじめ農業やら林業、各業界の民間企業に様々な補助金をバラ撒いてきています。それによって各事業体の経営を支え、それによって雇用も維持してきた面があるのですが、そのために本来いらない仕事を作り働いたことにするというのはおかしな話です。原田先生はそうした補助金制度や東日本大震災からの復興策などは偏ったバラマキで無駄である。投資に見合った効果が得られていない上に利権構造を生んだり、他の産業の成長を阻害するなどの弊害をもたらしたと切り捨てます。また同時にバブル崩壊後の非正規雇用拡大で政府が民間企業に依存するかたちの現行社会保障制度から抜け落ちてしまう人たちが非常に多いことも指摘されています。

原田先生はまともに効果が得られない業種別の事業対策費や補助金、公共事業、地方交付税などをバッサリ切り捨て、ベーシックインカムに置き換えればいいと主張します。私もベーシックインカムは非常に明快かつシンプルでスマートな所得保障制度となることを期待しています。

日本の雇用政策や防貧政策はほとんどが各業種の企業や事業体を通じて間接的に国民へお金を流すような制度ばかりでした。その結果政府がバラ撒いたお金が業者の中間搾取にあったり、すべての人に分配されず偏ったものになっていたという嫌いがありました。お金が必要な人たちに直接国が給付するという形がいちばん確実なはずです。

原田先生のBI案はそうした不合理的かつ余分な事業対策費や補助金のバラマキをやめた後に、各国民に一律所得税率30%のフラットタックスを課し、それを財源に20歳以上の国民には月7万円、20歳以下の国民には月3万円のBIを支給します。さらに老齢基礎年金(16.6兆円)、児童手当(1.8兆円)、雇用保険(1.5兆円)の合計19.9兆円の廃止でBIの予算を賄えると試算しています。

ベーシックインカムの話は後日改めて取り上げる予定でいますが、当方は原田案をベースに導入を訴えるつもりです。

今回は国民の受益が最も大きく、さらにスマートで合理的な財政政策はベーシックインカムのような現金直接給付型であるということだけお伝えしておきたいと思いました。

ベーシックインカムはマネーのデモクラタイゼーション(市民化)です

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「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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