私はすべての国民に一定額の現金給付を配布するベーシックインカムの実現を望む人間であり、その実現を計るための財源確保や制度設計のあり方を研究しています。しかしながら同じベーシックインカムという言葉を使っていても中にはトンデモなものがいくつもあり要注意です。
トンデモベーシックインカムの例
上の民進党が考え出した自称・ベーシックインカムは現金支給を否定して現物支給などというおかしなものです。下の井出英策が言い出しているのは低所得者層への所得税を課税して現金給付で還元せず、現物支給するなどと言うものです。考え方は戦時中の配給制と変わりません。
この話は「ベーシックインカム構想 」編のときにまた取り上げますが、今回はベーシックインカムの財源について考えます。
ベーシックインカム導入を進めたがっている人たちの間で結構多く出ている意見は、政府貨幣の導入や国債日銀買受・引受による財政ファイナンス(国債の現金化)でその財源を賄えばいいというものです。ベーシックインカムではありませんが、他にも「財政赤字=国民の資産だからどんどん増やして土木建設公共事業を拡大しろ」といったものもネット上でかなり見かける意見です。
政府貨幣でBI実現という意見の例 「ベーシックインカムの財源は政府紙幣しかない - るいネット」
ヘリマネについての解説記事 「量的緩和政策による財政ファイナンスと大型財政出動 」
ただしこの財政ファイナンスという手を使えるのはデフレ状態のときのみです。財政ファイナンスは多くの現金を市中へ放出することになるため財(モノ・サービス)より貨幣の量が増えインフレへと導きます。この効果がデフレのときにちょうど良く、景気回復につながるためにアベノミクスでも積極的に活用されてきました。今の時点(2018年2月)ではまだ完全にデフレ脱却とはいえないのですが、本格的に賃金上昇と物価上昇が見られたときには日銀の国債買受や政府の国債発行を打ち止めにしないといけません。
政府貨幣化をした場合も同じです。景気が回復したときは新規の通貨発行を抑制することになります。
ベーシックインカムは恒久制度です。たとえ一人毎月1~2万円の規模でも10数兆円から20~30兆円の歳出が固定化されます。新規の通貨発行はそのときの雇用や投資・消費動向など景気状況で変動させることになり、毎年毎年10兆円とか20兆円を出すというわけではないのです。不足する有効需要が埋まり、さらに景気が過熱気味になってきたときは通貨発行はゼロにして逆に増税をすることもあるでしょう。当然そのときはベーシックインカムの給付額もゼロです。金融政策のことをちゃんと勉強し、その政策の流れを理解しているならば通貨発行益でベーシックインカムなどということは言えません。
アベノミクスの異次元緩和で銀行に年間60~80兆円も準備預金(マネタリーベース)を積んでいるのだから、ブタ積みにせずにベーシックインカムに使えというのはリフレーション政策の基本理論がまったく理解できていない人です。いきなり日銀が買い取った国債を一気に売り飛ばすようなことはしないと思われますが、このマネタリーベースは景気回復後に銀行が市中へ放出しないよう吸収していきます。何十年以上も継続させる恒久制度であるベーシックインカムの財源に遣えないという理由はそのためです。
リフレーション政策の出口戦略についての解説 「金融緩和の出口戦略(テーパリング)は急ぐべからず 」
麻生政権がやったように臨時定額給付金をヘリマネでやるという話であればまだ多少理解できますが・・・・。
手厚いベーシックインカムを実現するには全体のパイを大きくするためにまずGDPを増やすことが第一で、技術革新などにより一人当たりの生産効率を向上させないといけません。少ない就労時間や労苦で付加価値の高い財を生産し稼ぎを大きくすることが大事でしょう。
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