新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

アイスランドの鍋とフライパンによる無血革命が物語る自主・自立・自律の精神

2008年アメリカのサブ(ノン)プライムローンショックのあおりを受けて金融危機に陥ったアイスランドですが、これはこの国の主要銀行が15%以上にも及ぶ金利上昇で超ハイリスク・ハイリターン型投機に手をつけてしまったことで起きました。アイスランドの主要銀行は経営危機に陥り、巨額の負債を抱え込みます。この年政府は非常事態宣言を発令しすべての銀行を国営化。株式市場も停止し、アイスランドクローナの貨幣価値は急落します。
アイスランド市民は独立党ゲイル・ホルデ内閣の金融問題の対応や福祉予算削減などの緊縮財政に激しく反発し、議会の前で抗議活動まで行って2009年初頭この内閣を総辞職に追い込みました。(ホルデ氏の食道の悪性腫瘍治療という理由もあるが) 

さらにアイスランドの国民はUKとオランダに対し、次の15年間で毎月5.5%の金利で3500万ユーロを返済しなければならないという償還義務も拒絶します。もともとその債務はアイスランドの銀行の高金利に釣られて財テクで荒稼ぎしようとしていたUKやオランダの個人投機家たちに対するものです。アイスランドの銀行が作った負債を国民が背負う云われはありません。
UKやオランダはアイスランドに緊縮財政を敷いてでも銀行の公的資金投入や債務償還をして預金者保護をしろと圧力をかけ、UK政府は反テロ法によるアイルランド銀行資産凍結まで行います。それに伴いアイスランド府議会も預金返済法案を可決しますが、国民はこれに対しデモ活動を行って激しく抗議しました。「鍋とフライパン革命」です。それを鑑みたアイスランド大統領は返済法案の署名を拒否し、これによって国民投票が行われます。投票した結果国民の9割に及ぶ圧倒的多数が反対で預金返済法案を否決。アイスランド政府も方針を転換せざるを得なくなりました。

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それからアイスランド政府は金融危機を招いた責任者に対する捜査をはじめ、多くの企業役員や銀行関係者らが逮捕されます。

この危機を契機にアイスランドの市民たちは覚醒したかのように政治や経済に対する参加意識を強く持ち始め、草の根的な市民活動グループが次々と生まれます。彼らはデンマークのものをベースとした従来憲法を改正することも望み、政治家や学者・弁護士ではなく一般市民の立候補者522人のうちから選出された25人の代表者が憲法改正のための国民議会を開きます。

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25人の市民は新憲法の草案をまとめ、国会に提出しました。まさにこれこそ本物の自主制定憲法です。日本の自民党が作った憲法改正案なんか自主制定憲法ではありません。アメリカではなく一部政党による国民への押し付け憲法です。

アイスランド市民グループを取材したドキュメンタリー映画があります。ポルトガルの映画監督Miguel Marques氏が自主制作したもので、ブーケンビリアさんが翻訳をされました。

 「鍋とフライパン革命」 日本語字幕版 https://youtu.be/BZxR1VbTVkg


この動画の40分目あたりより貨幣の供給や統治貨幣の話が出てきます。

2009年にホルデ氏から政権を奪った左派系の社会民主同盟副党首のヨハンナ・シグルザルドッティル首相は経済苦境を乗り切るためにEU加盟とユーロ導入を進めようとしてきました。しかしながら2003年にシグルザルドッティル政権は選挙で敗北したことにより退陣。代わりにEU加盟やユーロ導入に反対してきた保守系の進歩党シグムンドゥル・ダヴィード・グンラウグソン氏が首相となります。

この時期に通貨改革の導入が検討され、フロスティ・シガーヨンスソン議員によって「通貨改革 アイスランドのためのより優れた通貨制度」も用意されました。いよいよ信用貨幣から統治貨幣への転換が実現します。このようなことを言うのも何ですがEU加盟やユーロ導入をしたらこの快挙はなかったことでしょう。
(ただしシグルザルドッティル首相はパナマ文書で名前があがってしまったことで失脚します。政府貨幣を導入した政治家は〇〇されるというジンクスがあるのですが・・・・・。)

ここまで綴って改めて感心させられたのはアイスランドの市民の高い自主精神です。この国の国民性はDo It Yourself(自分のことは自分でやれ)精神が強いといわれております。国民の教育水準が高く、考え方も合理主義的でしょう。他の北欧諸国ほどではないにしても福祉国家の色が強めで、さらにビジネススタイルも非常に自由でのびやかな雰囲気があるようですが、能力主義成果主義も厳しく怠惰な勤務態度だと見做されたら容赦なく解雇されます。「幸福度は高いけど、仕事は実力主義! 火山と氷の国「アイスランド」の

ただテレビやネット上で政治家の悪口や政策への不満を述べるだけで終わってしまうのではなく、自分たち自らが進むべき道を真剣に考え、行動し変えていく。こうした姿勢は日本であまり見受けられません。お上にすべてを丸投げして、何かをしてくれるのを待つだけの甘えた態度をとっているのが多くの日本人です。
こちらが経済のことをいろいろ調べ、それをこのサイトやツイッターでそれを書き伝えているのですが、他のツイートなんか読みますと正直この国は子供のメンタリティしかないのかと嘆きたくなるばかりです。アイスランドとは大きな隔たりを感じます。

私は強く言いたいです。
貨幣改革は自主と自立・自律の精神がなければ実現しないでしょうし、制度ができても無意味なものになります。上の動画にもありますが、市民運動家自身が経済を学び理論化しています。このような姿勢が著しく欠けているのが日本です。

~お知らせ~
今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet
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