前々回の記事「モリカケ騒動で失う大きな国益」の補足的内容です。
この記事で次のことを述べました。
「仮に安倍政権が倒れ、その後総理の座につくのは岸田文雄氏や石破茂などではないかと囁かれていますが、金融政策をはじめとする彼らの経済政策の認識はひどくプアで、総理就任と共に株価暴落や円高という洗礼を浴びてしまう恐れがあります。」
ここの今回小泉進次郎も加えてもう少し彼らのお粗末な経済観について批判しておきましょう。
3人ともこれまでの経済・金融政策についての発言を聞いてみますと、異常に早期の金融緩和解除に拘り、また財政再建のための増税をチラつかせています。はっきりいってまだ所得分配やそれに伴う消費拡大の動きがはっきり確認されないうちに金融緩和の出口戦略の話を持ってくるのは拙速にもほどがあります。アメリカのバーナンキ元FRB議長やイエレン元議長は緩和解除に相当慎重な態度で進めてきました。出口戦略のはじまりはバーナンキ議長時代の末期からはじまりましたが、イエレン議長の一代をかけて緩やかにテーパリングを進めてきました。(テーパリング=徐々に先を窄めること)
バーナンキ議長は2013年5月22日にうっかり債券の買い取りを減速させる信用緩和の縮小と2014年中頃の完全終了を匂わせる発言をしてしまったために新興国の通貨や株式が売り飛ばされるなどといった大きな混乱を招いています。バーナンキ教授もこの経験から、中央銀行総裁の発言は極めて慎重でなければならないと述べておられました。
企業の投資行動は将来の金融政策の見通しや予想によって極めて敏感に反応するということに証左といえましょう。株価の動きは近い将来の雇用情勢を先取りします。
彼が次期総理になったとたんに投資家たちは株の売り浴びと円買いをしはじめることでしょう。雇用もすぐにガタガタになるかと思われます。
モリカケ追求ごっこで安倍政権の基盤が現在揺らいでおり、ポスト安倍の有力候補の一人と云われる人物がこんなことを言ってしまっているわけですから、企業側は設備投資や人への投資である雇用に遣う資金の借り入れコストが上昇することを覚悟しないといけません。賃金引上げはおろかこれ以上の新規雇用拡大もやってはいけないことになります。
進次郎の親父こと純一郎氏の時代に遡りますが2016年春にこれまで続けてきた量的緩和政策解除に踏み切ってしまいました。純一郎氏はご存知のとおり息子の進次郎同様に緊縮志向が強かったのですが、氏の場合まだ金融政策の重要性を認識していて「解除をしてみて、やはりダメだったからといって、元に戻すことは許されない。自信をもって解除できるまで、慎重に判断すべきだ」と拙速な緩和解除に反対を示す発言を国会で行っています。しかしながら与謝野馨らに圧される形で緩和解除が決まってしまいました。
拙記事 「拙速な量的金融緩和の解除と景気・雇用の再悪化 」
当時は物価上昇率が0%超えしたからこれ以上の緩和はいい、過剰な悪性インフレの危険があるなどということで緩和解除となったのですが、消費者物価統計は実勢より高い数字が出てしまうことがあるという指摘もなされていましたが無視されています。
緩和解除から間もなく物価下落が再発し、中小企業を中心に資金繰りが悪化しはじめます。また本格的な賃金上昇が起きず、雇用が増えたといっても非正規雇用中心に止まっていました。このことが後に「小泉(純一郎)ノセイデ格差ガー」といわれる元凶となっていきます。息子の進次郎ももし今のままの考えで総理に就任でもするようなことをすれば父親以上の汚名を被せられることになるでしょう。
岸田・石破・進次郎の3氏いずれも政権を獲ったときには民主党政権のときのような混乱を招いても不思議ではありません。経済がぐらついてくると中国が日本を見下しはじめ、様々な軍事挑発行為を始め出すでしょうし、北朝鮮の金正恩もその間隙をついて背筋が凍るような行動を起こしかねないでしょう。
安倍政権が辛うじて政権を維持できたとしても、その政治パワーは昨年・今年で大きく削がれ、レームダックに陥りかけている・・・・いや陥っているかも知れません。消費税の引き上げだけではなく、所得税や法人税の引き上げや年金・医療・介護といった社会保険料負担増大と給付削減という緊縮財政を企む財務省の暴走を食い止める政治家が皆無となり、数年以内に消費税15%・20%引き上げとか年金給付の大幅カットなどが断行されてしまう可能性が高まっています。
今年末以降から我々の生活は相当厳しくなっていくことへの覚悟を今のうちにしておかねばならないでしょう。
~お知らせ~
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