新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

財政危機とはいったいどういう状況を意味するのか

税と国家財政問題 」編ですが、よく経済学者やマスコミ・政治家・そして財務省などが、ヒステリックにといってもいいぐらい国民に危機感を煽り立てている財政危機とはいったい何なのかということを最初に定義づけておかねばなりません。その概念があやふやなまま「国家財政が破綻しそうだ」とか「国債が暴落しそうだ」などと騒ぎ立てることはわれわれの大きな経済活動に害を与えます。

経済学における国家財政危機や破綻の定義はどうなっているか単刀直入に申せば
国債の新規発行分と名目GDPの比率がどんどん拡大すること(=発散すること)
となります。

国家財政と家計を同じような感覚で取り扱うのは間違いの元ですが、あえて家計に例えると所得が月20万円しかない人が、毎月50万円・100万円と借金を繰り返すような状態です。家計でも企業でも借りたお金以上の稼ぎさえあれば破産してしまうような状況は起きません。
自分が何度か繰り返して言ってきていることですが、「いくら借金をしているのか」というよりも「稼ぐ力があるかないか」の方が重要なことです。稼ぐ能力が高い人には100万・200万円ポンポン貸しても返してくれることが期待できるので心配はさほど要りませんが、稼ぐ能力が低い人はお金を貸せないのと一緒です。

国家財政のことを気にする人は「今日本政府の借金は1100兆円以上ある」と言いますが、これはストック(貯蓄もしくは累積債務)の額で、しかも資産側を差し引いた純債務のことではありません。借金がこんなに溜まっていることは気味が悪いと思う人が多いかも知れませんが、フロー側でみたときの負債膨張が極端にひどくなく、経済成長分と大きく乖離していくようなことがなければ心配は要りません。

風船玉に例えると中に空気が入っていても、次から次へと空気を圧しこみ続けなければ、いきなり割れてしまうような可能性は低いでしょう。(なんかの衝撃で割れるかもという人がいるかも知れないが) 風船に送り込む空気の量をあまり増やさないあるいは減らしていけば財政破綻という状況にはつながりません。

その国家財政という風船玉に送り込む空気の量が新たな負債と償還する負債を差し引いたプライマリーバランスにあたるものですが、経済学上ではこれについてよりも名目金利と名目GDP成長率の差を注視する見方が標準的です。

また企業の経営に例えますが、企業が借りたお金の金利よりも、収益率が上回っていれば問題にはなりません。思い出していただきたいのは「「なぜリフレーション政策が求められたのか? その2 流動性の罠脱出の切り札」で活用した金利と投資の関係図です。
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例の異次元緩和で長期金利が低く抑えられていることが、企業の投資意欲拡大だけではなく、国家財政面でも債務負担が減っていることになっております。

少し話が脱線しましたが、国債金利そしてGDP成長率の連関については「ドーマー命題」という理論があり、名目金利の方が名目GDP成長率よりも大きければ、国債の新規発行分と名目GDPの比率は発散してしまい財政危機がやがて訪れる。他方で、名目GDP成長率の方が名目金利よりも大きければ、この財政危機は回避されるというものです。

緊縮財政で歳出や負債の量を減らすことよりも、それを超えるだけのGDP成長率をいかに引き伸ばすかという考えの方が大事です。企業でいえば自社の業績をどれだけ伸ばすのかということを考えず、投資の縮小や人員ならびに設備の削減・縮小、経費節減ばかりに血眼になっているようなことをしていたら、やがて潰れてしまうでしょう。国家財政の健全化も同じ考えです。国全体の産業を活発化させ、民間企業や個人の収益を伸ばし、税率を高めるよりも税収を稼ぎ出すといった考え方を採った方が財政再建の早道です。(元参議院議員の金子洋一氏が選挙スローガンで掲げていたこと) 竹中平蔵氏も「問題解決の優先順位を間違えるな」と述べ、財政よりも経済問題解決を先にやらないと財政再建も失敗すると指摘されておりました。
 
ストック側でみた国の借金ですが、アベノミクスがはじまって以降、名目GDPが着実に増加し税収が伸びたことで政府の負債残高のGDP比率が減少に転じかけ、現在横ばい状態になっています。 

世界経済のネタ帳様より http://ecodb.net/country/JP/imf_ggxwd.html

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経済成長なくして財政再建はありえないのです。

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「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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