新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

財務官僚が煽る国家財政危機の嘘 その2 GDPとプライマリーバランス・債務残高

財政危機とはいったいどういう状況を意味するのか 」で財政危機とは経済学的にどういう状況のことを指すのかについて説明しました。それは債務と名目GDPの比率がワニの口のように開き続ける(発散する)ことです。稼ぎも資産もないのに借金だけがぶくぶく膨れ上がる状態がまずいのです。新たな負債増加や残高が大きくても、それを超える資産や所得があれば健全な財務状況だということになります。

財政再建といいますと歳出削減やら増税が真っ先に思い浮かびますが、それは企業の経営に例えると増収を計る努力をせずにコストカットや商品の値上げで帳尻を合わせようとするのと一緒です。役所の場合自分でモノやサービスを創って売るということが基本的にできませんから、税金を上げたり歳出を抑えることぐらいしか頭に浮かばないのです。

本来望ましい財政再建のあり方は負債以上に稼ぎ(GDP)を増やすことで行っていくことが望ましいのです。債務/GDPの値で分母のGDPを大きくしていくことで発散を防げば財政再建となります。今の日本は国家財政の累積債務がグロスで1100兆円積み重なっており、名目GDPは550兆円です。債務残高/名目GDP=2(倍・200%)ということですが、分子の累積債務を減らすか分母の名目GDPを大きくすれば値は2より小さくなっていきます。

債務残高対名目GDP変化分は次のように数式化できます。
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景気が悪く、名目国債金利が名目GDP成長率を超えている状態 g<rならば⊿D/GDPの値は上昇します。
仮に名目GDP成長率 g=2%(0.02) 名目国債金利 r=3%(0.03)としておきましょう。プライマリーバランスは赤字でマイナス5%だとすると

 -(-5)-(2-3)2=7

で債務残高対名目GDPは7%の拡大(発散)で、債務残高は前期の207%となります。

g=r ならばプライマリーバランスの均衡だけ果たせば債務残高は膨張しません。200%のまま維持です。

さらに g>r になっていき、g=3%(0.03) 名目国債金利 r=0%の状態であるとします。
すると
 -5(-5)-(3-0)2=-1

でPBが多少の赤字であっても債務残高対名目GDP比はマイナス1%(対前年比199%)に縮小していきます。

経済活動が好調ですと企業や個人からの所得税収や法人税収が伸びて、緊縮財政を敷かなくてもプライマリーバランスが改善される傾向にあります。

現在もPB黒字化は達成していませんが、アベノミクス後にPB赤字幅は減少傾向です。

当然名目GDP成長率も伸びることになります。おまけに量的質的緩和で日銀が国債をどんどん買い取り、その価格上昇で金利がすごく低下しています。今はPB改善とg>r状態が効いて債務残高対GDP比の膨張がとまってフラットです。それが上の数式で算出できるのです。

ところが財務省の場合、こうした形での財政再建策を認めたがらない傾向にありました。
GDP成長率(g)を低く見積もり、国債金利(r)が高いままの状態を前提に財政再建論を展開してきています。高いプライマリーバランス黒字化に拘り、それを増税と歳出削減でやろうとしてきたのです。名目GDP成長率と国債金利の関係はデフレ状態ですとg<rのままになりますが、景気が回復してくるとg>rになってきます。

経済成長と財政再建は不可分離の関係で、経済が低迷すると財政も余計悪化しやすいということを念頭に入れてもらいたいところです。

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