新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

野田聖子・・・・・こいつも終わっとる

自民党野田聖子総務相が安倍政権の異次元緩和政策を批判していたというので当該の新聞記事を読んでみました。

朝日新聞「野田総務相、異次元緩和を批判 「一度立ち止まっても」

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記事引用

 野田聖子総務相は27日の閣議後会見で、日本銀行が「物価上昇率2%」の目標を掲げて大規模な金融緩和を続けていることについて、「本来2%は結果であり、賃金が増えて個人消費が伸び、物価が健全な形で上昇するのが望ましい」とし、「無節操にそこ(2%)にいくまで異次元緩和を続けていくことで起きる副作用についても、しっかり受け止めないといけないと思う」と述べ、現状の緩和策を批判、政策修正の必要性に言及した。
 野田氏は「様々な金融政策を重ねる中で、例えばマイナス金利に関しても金融機関に色々問題が生じているとの報道がある」と指摘。「いま一度立ちどまってみて、消費者の発意で2%が達成できるような考え方に転換しても、別に相反することではない」と述べた。
 出馬への意欲を示している秋の自民党総裁選金融政策について打ち出すかについては、「政策について色々と検討しているところで、それをふまえて皆さんにしっかり説明していきたい」と述べるにとどめた。

引用終わり

先日「経済政策にまったく期待が持てない岸田文雄・石破茂・小泉進次郎 」という記事を書きましたが、この人もひどいですね・・・・・。金融政策は財政政策と並ぶ経済政策の二本柱で基礎中の基礎です。金融政策の方法や理論が全然わかっていません。野田氏に限らず日本の国会議員はまともに経済学の教科書や入門書すらまともに読んだことがないような人ばかりです。こんな有様だから日本は20年以上も経済低迷を続けたのでしょうが・・・・(20年間の経済成長率は日本が世界最低。ビリです。ビリ。)

物価上昇率2%」のインフレターゲットは物価上昇を起こすことが最終目的ではないことは何度も私は説明してきました。


インフレターゲットは企業の投資を引っ張り出すための手段です。「物価上昇が2%になるまで金融緩和政策をやめない・金利を上げない」と中央銀行総裁がコミットメントすることによって、今後採り続ける金融政策の姿勢をはっきり明示することが大事なのです。企業の投資行動は将来の金利に左右されます。「当面金利が上がらない」という予想をつくることで企業は安心して積極投資ができるのです。雇用は人に対する投資です。だから量的質的緩和が雇用回復につながるわけです。

もちろん「インフレ目標達成まで金利を上げない」が口約束でないことを示すための担保が必要です。それが量的緩和によるベースマネーの積み上げです。
これを行うために日銀は大量に市中の国債を買い取っています。それを現金化して日本銀行内にある民間銀行用の当座預金口座に振り込み、民間企業や個人への融資用資金(ベースマネー・マネタリーベース)を”ブタ積み”といわれるぐらい積みあげています。全てのベースマネーが融資に遣われずとも、銀行は資金づまりの心配がなく民間企業・個人に積極融資を行えることになります。
これだけじゃぶじゃぶにベースマネーを積み上げてしまうともう金利は上げようにも上がらなくなります。これだけ「出口戦略ダー」と騒ぎ立てる連中らがいても、当面低金利の状態が続くという保障ができているも同然なので企業は大量の資金を投資に遣っても大丈夫だということになるのです。

もうひとつ物価を上げるというコミットメントは企業経営者に「実質賃金が下がる」という予想を生み出します。実質賃金は実際の額面である名目賃金から物価指数を差し引いたものです。これが下がることによって企業は人を雇いやすくなるという説明を経済学では行いますが、人を雇い入れた賃金コスト以上に収益が伸びることが期待できるといった見方の方が合っているかと思われます。これは経済学者のケインズも述べていたことでした。

野田氏は全然そのことが理解できていないようですね。

>「本来2%は結果であり、賃金が増えて個人消費が伸び、物価が健全な形で上昇するのが望ましい」

これは私もそう考えます。しかし「無節操にそこ(2%)にいくまで異次元緩和を続けていくことで起きる副作用についても、しっかり受け止めないといけないと思う」の副作用って何でしょうか?「様々な金融政策を重ねる中で、例えばマイナス金利に関しても金融機関に色々問題が生じているとの報道がある」という意味でしょうか?

金融緩和の副作用だとか金融機関の問題だとか言っているエコノミストはたいがい銀行や証券会社のシンクタンクに属していて、出身行の提灯記事ばっか書いている連中らです。言葉悪くいえば金融機関の飼い狗(いぬ)です。
ではなぜ量的・質的緩和やマイナス金利などが金融機関にとって都合が悪いのかというと、企業でいう仕入れコストにあたる預金金利があまり下がらないのに、収益にあたる貸出金利や債券運用金利といった運用利回りが低く抑え込まれていることであります。
あと20年間のデフレで多くの銀行は民間企業や個人への資金貸し出しで稼ぐよりも、国や地方自治体といったお上相手も金貸し業をやることが主流になってしまいました。おまけに白川方明総裁時代まで市中銀行が融資に遣う準備預金(ベースマネー)を振り込むための日銀内に設けてある市中銀行当座預金口座に利子がついていたのです。
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つまりは市中銀行にとって民間企業や個人に貸し出しするより、そのまま日銀内の当座預金口座で準備預金を寝かしておけば日銀が利子という”生活保護費”を振り込んでくれるので、それだけで収益が得られてしまいます。これではいつまでもベースマネーが民間企業や個人への融資に遣われないということで黒田東彦日銀体制になってからマイナス金利を導入し「もっと融資しろ!」と市中銀行に対し尻を叩いたのでした。

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野田氏のいう異次元緩和の副作用とか金融機関の悪影響という話はなんでもない、銀行の泣き脅しに騙されているだけのことです。民間企業はどうなっても構わない。銀行だけ楽して儲かればいいということでしょうか?

野田氏に限らず「金融機関の収益が」などといっている経済評論家がいたら要注意です。経歴を読むと大体元銀行員や証券マンだったりします。「国債暴落ガー」などという人たちも国債を大量に買いだめしているような連中がほとんどで景気がよくなって金利が上がりはじめることで国債の価格が値崩れすることを恐れている人たちです。どういうことかと言いますと国債は先々の金利の変動に関わらず決められた利息(クーポン)が支払われるようになっています。仮に不景気で金利1%のときに5%の利息がつく国債を買えば民間企業の株式や証券を買うよりおトクです。ところが景気回復で金利が6%に上昇したとしましょう。そうなると5%の利息しかつかない国債よりも他に投資した方がトクです。当然国債イラネとなって値崩れします。国債を大量に買い込み、それにしがみついているような人間は民間への投資に運用先を変えることもせずに「国債暴落ダー」とパニックを起こしているわけです。情けない限りです。

岸田文雄石破茂とその別動隊の小池百合子小泉進次郎、そして野田聖子・・・・・

自民党という党も経済音痴だらけです。民主党政権時代に菅直人財務大臣(当時)が林芳正に国会で突っ込まれ乗数効果を知らなかったことで「高校の公民の教科書に書かれていることすらわからないのか」と散々バカにされましたが、自民党も目くそ鼻くそですね。

こんな調子でモリカケスパやら安倍下ろしとかやっていると、まずは株価下落という形で赤信号が燈って、企業の投資や雇用が再び悪化。へろへろと日本経済が失速しかねないでしょう。

「賃金が増えて個人消費が伸び、物価が健全な形で上昇するのが望ましい」

そうできなくしているのは野田さん・・・・・あなたですよ。

日本は中途半端なところで金融緩和をやめることを3回以上も繰り返していたら、どこの企業も「いまは一生懸命緩和して積極投資しなさいと国はいっているけど、どうせすぐに金利を上げるのでしょ」「今は円安かも知れないけどすぐに円高になるかも知れない」「すぐにまた景気が悪くなるかも知れないから従業員の採用は最小限にとどめておこう」「無理な設備投資はやめておこう」と考えます。
一般の人々も「景気がいいと言ってもすぐに悪くなるかも知れない」「また賃金が下がったり会社を辞めさせられるかも知れない」と考えていたら一向に消費をしようとしません。

人々が安心してお金を遣えるようにするためには予想(経済学的には合理的期待仮説といいます)が必要なのです。その予想を破壊しているのが石破や岸田・進次郎・野田らとなります。

権力闘争をやっているヒマがあったら、経済の入門書ぐらい読め!

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