新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

なぜ財務省は消費税率引き上げに執着するのか

税と国家財政問題 」編ですが、ここで通して伝えていることは本当に財政再建を計りたいのであったら、税を支払う民間の経済力を強くしていくことが第一だということです。当たり前の話ですが民間企業の業績がガタ落ちになったり、ひどい場合は倒産・廃業し、多くの国民が所得をガタ減りさせてしまえば税金が支払えなくなります。徴税力が失われていきます。

しかしながらこれまで大蔵省~財務省、日銀は日本の経済成長の足をさんざん引っ張り、四半世紀以上に渡って経済成長を止めて民間をジリ貧にしてきました。その結果歳入が伸びないにも関わらず、歳出は余計に増えるというおかしな状況を生んでいます。

民主党政権時代の菅直人政権で財務官僚の跋扈がひどくなり、財務次官・勝栄二郎の暗躍によって野田佳彦政権のときに消費税率10%引き上げを呑み込まされました。それが実施に移されたのは安倍政権下の2014年4月で税率8%に、そして来年2019年には10%へと引き上げられます。
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消費税率の引き上げは10%に留まることはなく、財務省は15%、20%への引き上げを狙うでしょう。
昨年あたりからですが、ある一派が安倍政権は緊縮財政だとか増税容認だとか騒ぎ立てています。しかしながら消費税率引き上げは民主党政権時代に国会で法律として制定されてしまったことです。これを完全撤廃させるとなると国会で消費税率10%引き上げの法律そのものを廃止にもっていかねばなりません。いま在籍している与野党すべての国会議員のうちで消費税10%引き上げ撤廃を主張している議員がほとんどいません。安倍総理は税率引き上げを延期させることが精一杯だったのです。モリカケ騒動で安倍政権は大きく政治力を奪われ、それによって財務官僚を抑えつけることがますます難しくなっています。増税撤廃なんてトンデモで延期すら口にしたら完全に内閣が吹っ飛ぶことでしょう。

いまポスト安倍と噂される面々、岸田文雄氏・石破茂氏・小泉進次郎氏・河野太郎氏そして野田聖子氏ですが、全員消費税率引き上げ推進派です。安倍政権がもし倒閣した場合は間違いなく消費税は数年以内に10%、15%、20%といった調子で引き上げられていくものだと覚悟すべきでしょう。

しかしながら財務省はなぜ増税で消費税率の引き上げを狙うのでしょうか?

世間巷では富裕層や企業を優先して所得税法人税・資産課税の増税を避け、消費税率引き上げを計ろうとしているなどと思われがちですが、半分は合っているといったところでしょうか。しかしながらそれとは別の理由があります。それは景気動向に関係なく消費税収は一定額入ってくるために安定財源だと財務官僚たちが当てににしているからです。
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上のZ省サイトでしっかりと
「税収は、景気の動向や税制改正といった影響により変動しています。所得税法人税の税収は景気動向に左右されやすい一方、消費税の税収は10兆円前後で推移しており、比較的安定しています。」
と書かれていますね。

所得税法人税は不安定で税収の見込みが立ちにくいです。消費税は衣・食・住など一般庶民の生活維持に必要不可欠な切りたくても切れない経費に課せられる税です。だから税収がフラットになるのです。

逆をいえば消費税はどんなに景気が悪く、国民生活が窮乏に陥っても課せられる税金だということになります。だから悪税と言われます。

消費税中心になると、政治家・役人は経済活動の活性化を計って税収を伸ばさないといけないというインセンティヴが働きにくくなります。バブル崩壊前までは大蔵省の役人も税収を伸ばすために景気を浮揚させるという考え方があったようですが、現在はそうした上げ潮的発想はないようです。

今回役人が消費税を安定財源として当てにしているということを書いている理由は後に書く予定の「ベーシックインカム構想 」編にも関わってくるということもあります。ベーシックインカムは何十年以上も継続的に一定の歳出が固定費として義務付けられる恒久的政策です。当然その財源はなるべく変動が少ない一定の税収が得られるものをという流れになってしまうでしょう。
ベーシックインカムをやることは認めてやるが、その代わりに消費税20%を受け入れろ」といったことを役人たちは要求してくることが予想されます。そうした術中に嵌らないように私はBIの財源は景気動向によって財源を所得税法人税から貨幣発行益を切り替えるハイブリッド型を提案したいのです。
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景気が好況のときは所得税法人税で財源を確保し、不況になったときは量的緩和の副産物というべき貨幣発行益で所得税法人税の不足を補う財源システムです。これこそが金融政策と財政政策の一体化であります。

まずは金融政策で企業の投資を活発にさせ、雇用の安定を計って経済の足場がためをします。それによって民間の税支払い能力を高めて税収を上げる発想へと切り替えねばなりません。

前々回(「増税と緊縮財政が余計に財政悪化を進める謎 」)で使ったグラフですが、金融政策の影響がいかに財政にも大きな影響を与えているかが一目瞭然でわかるかと思います。
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~お知らせ~
今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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