新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

国に1100兆円もの負債を積み上げさせた元凶は誰か ~日銀の金融無策が諸悪の根源~

「国の借金1100兆円」というのは国家財政のバランスシートで見たら右側の負債部門だけの数字(グロス)で、左の資産側を差し引いた債務残高(ネット)ではないことをお話しました。


政府の子会社部門や日銀を連結させた統合政府バランスシートで見ると、実際の日本の国家財政事情はかなり健全に近い状況です。

なのですが、今回は表題に沿って国がなぜこれだけ負債を膨張させてきたのかという原因についてまとめていきます。何度か提示してきたグラフをもう一度ご確認ください。
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上が国家財政の歳入と歳出の推移です。下が今の一般会計で歳出が膨張し続ける原因となっている社会保障費の収入と給付のグラフです。社会保険制度の赤字を一般会計の歳出で補填する状況が1997年以来ずっと続いています。

流れをまとめると1990年代初頭のバブル崩壊以後、企業の業績が急激に悪化し、新卒学生を中心に雇用に陰りが見え始めます。それと同時に国の財政の歳入が落ちる一方で歳出は増えていきます。下のグラフを見てわかるとおり、平成元年を境に法人税が、平成3年から所得税が落ちていきます。
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それからしばらくはバブル崩壊からの回復傾向が見受けられていたのですが、1997年の橋本龍太郎内閣が行った消費税率5%引き上げと緊縮財政によって日本の経済はセンカンドインパクトを受けます。これが致命傷になりました。
それと1997年は日経連の「新時代の日本経営に代表されるように、長年続いた日本の雇用慣行であった終身雇用制度が崩壊し、非正規雇用の拡大や賃下げが本格的にはじまった雇用破壊元年です。このことは日本経済をデフレと流動性の罠に陥らせ、社会保険料収入も落ち込ませました。

流動性の罠に陥った1990年代末期に小渕政権と宮澤喜一財務大臣が必死にゼロ金利政策を採ったり、かなり思い切った財政出動を行いました。しかしながら宮澤喜一氏自身が述べていたとおり、バラ撒いた歳出に見合うだけの景気浮揚効果がありません。結局財政赤字だけが膨張しただけに終わります。

橋本龍太郎政権の増税と緊縮財政が日本経済に致命的な打撃を与えたことは否定できませんし、財界が同時期に進めた雇用破壊がデフレスパイラルの発端になったと私は見ていますが、どちらも「バブル退治の鬼平」こと三重野日銀総裁が行った急激な金利引き上げが、企業の資金繰りを悪化させ、投資の急縮や業績悪化を引き起こしました。
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このことで企業は高度成長期以来の終身雇用制度や定期的な昇給を維持できなくなり、非正規雇用拡大や賃下げに踏み切らざる得なかったのです。橋龍政権の増税・緊縮財政も三重野の金融引き締めで落ち込んだ所得税法人税の落ち込みによる国家財政悪化に対応するために行なったものです。

つまりはたった一人の日銀総裁が行った金融政策の過ちが、経済から雇用・国家財政まで狂わせてしまい、1100兆円にものぼる累積債務を国に積ませることになったわけです。

経済の議論をしていると日本人のほとんどが財政政策の話にしか興味を持たないのですが、金融政策の采配の方が経済や雇用・財政に大きな影響を及ぼしているのです。次回もそのことについて考えます。

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