新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

寝たきり老人をつくってしまう病院や介護福祉施設

前回は患者を飼い殺しにしてしまうブラック病院について取り上げてみました。

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ミナミの帝王」40~41巻「白い闇」より

身寄りのない長期入院患者をかき集め、人件費や光熱費などの徹底的なコストカットを行い、劣悪な環境でベットに縛り付けておくという非道の限りを尽くしたような経営を行っている病院です。先日入院患者が熱中症死した岐阜の藤掛第一病院や看護師が入院患者の点滴に消毒液を混ぜ殺すという事件が発生した神奈川の大口病院はその氷山の一角で、ブラック病院はあちこちに存在することでしょう。

病院は本来患者さんの病気を治し、社会復帰を促す場であるはずです。しかし上のような病院は自分で動ける患者や利用者を寝たきり状態にしてしまい、さらに重度化させてしまいます。病院だけではなく介護福祉施設でも同様の経営をしているところが山ほどあるといわれます。

先日取り上げさせていただいた長尾和宏先生と西宮で介護に関わる人たちが寄り集う場「つどい場さくらちゃん」を営む丸尾多重子さんが特別養護老人ホームにおける機械的な介護の実情についての対談記事があります。

ブックマン社「ばあちゃん、介護施設を間違うと、もっとボケるで」
「許さへん!老人ホームは魚屋か⁉」

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右 丸尾多重子氏

特養でホームヘルパー1級の資格取得のための研修を受けた丸尾さんは長尾先生にそのとき見た異様な光景が忘れられないといいます。
研修先の特養は何十人も入所者がいるにも関わらず、恐ろしく静かで、入所者のほとんどが無表情で何もしゃべらず、車椅子移動ばかりだったようです。長尾先生は丸尾さんに「それは薬でそうさせているんですよ」と答えました。施設の職員が介護の手がかからないように薬をたくさんのませて入所者を鎮静させているというのです。最初のうちは元気に自分で歩いて入所してきた人も数週間で家族の顔もわからなくなるといいます。

施設が寝たきり老人をつくってしまっている・・・・・・・

非常に奇妙な話です。

2000年に入り、介護福祉サービスは保険方式で施設に報酬が支払われる制度となりました。要介護度が高い利用者の介護は保険点数が高く、多くの介護報酬が施設に支払われます。認知症が進行していたり、ほとんど体が動かせない重度の利用者を多く抱えた施設は当然儲かります。そういう施設は限られた職員数で多くの利用者の介護業務を進めなくてはなりません。利用者をベルトコンベアの上にのせていくような流れ作業的介護になって当然です。丸尾多重子さんはそうした病院や介護施設を養鶏場で大量飼育されるブロイラーと一緒だと例えます。体を動かせない状況にし、飼育で抗生物質などを使って薬漬けにしてしまっていることもブロイラーと一緒だということでしょう。
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病院や施設が薬による鎮静などで利用者がまともに歩けないようにしてしまい、認知症の進行まで進めてしまい、介護に支払われる報酬も膨張してしまえば、やっていることがマッチポンプです。利用者はどんどんストレスを溜め、怒り暴れだすといった行動を起こして当然ですが、それをまた薬や物理的手段で抑制・拘束してしまうといったことを施設側がやってしまうのです。

前回も述べたことですが、そうした施設で職員たちが明るく晴れやかな気持ちで、介護の仕事ができるでしょうか?医療や介護職の離職理由を調べていきますと1位が職場の人間関係で2位が法人や施設・事業所の理念や運営のあり方に対する不満で、このふたつが離職理由の半分を占めます。
上のように利用者を機械的に介護せざるえないような施設だと、職員の人間関係もギスギスしたものになりがちであり、また職員から自分の仕事が大きな社会貢献につながっているという悦びを奪うことになります。

病院や介護福祉施設内で職員が入院患者や入所者を殺害したり、暴行するという凄惨極まりない事件が何度か発生していますし、逆に職員が患者・入所者から暴行を受けるといった事件も起きています。こうした事件の背後に病んだ病院や介護施設の経営が潜んでいる可能性が濃厚です。

病院や施設が利用者の症状を重くしてしまうようなことは、国民が負担すべき医療費や介護費の金銭負担を大きく膨らませ、医療・介護に携わる現場職員の業務負担を重くすることにつながります。そうさせないためには病気や認知症の予防や症状悪化を早期でくい止める方策に力を入れるべきでしょう。

このブログらしくマクロ経済の話をしますと、現在雇用情勢が好転して売り手市場になっております。これによって医療・介護業界の人材不足が深刻化していますが、逆をいえば旧い考え方のブラック施設やその経営者を淘汰し、医療・介護業界のホワイト化を進める絶好の機会だともいえます。

医療費削減が目的化してはならない地域医療 」で長野県が進めてきたPPK(ピンピンコロリ運動)などの地域(農村)医療や保健事業によって、県民全体の医療費低減と長寿化を成し遂げたことを紹介しました。私たちの考え方ひとつ変えれば日本の超高齢化社会や医療・介護福祉問題解決に光明がさすのではないでしょうか。

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今後日本の政局や北朝鮮問題についての論考は下記ブログで掲載していきます。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

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