新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

生活保護制度の4原則と保護費の算定

生活保護制度の話は3回目ですが、今回は生活保護制度の基本的な考え方を説明しましょう。
前回の後半でも少し触れましたが、現行生活保護制度は4つの原理と原則で成り立っています。この原理と原則をまとめると
・無差別平等の原則生活保護法第2条)
・補足性の原則(同第4条)
・申請保護の原則(第7条)
・世帯単位の原則(第10条)
となります。

順番にその4原則について説明していきます。

無差別平等の原則生活保護法が定めた要件を満たせば、全ての国民に無差別平等に保護適用されるというものです。生活困窮に陥った理由や過去の生活歴及び職歴等は問われません。
ただしその対象は原則的に日本国籍を有する者となります。日本に永住権を持っている外国人でも受給資格は与えられません。

補足性の原則とは保護を申し込んだ人の資産・能力・親族からの援助・他の社会保障制度による援助や扶助を活用してもまだ最低限の生活水準に満たない場合に不足する分を補助するというものです。保護を受ける前に不動産や金融商品、クルマなどといった資産を売り払って処分し、働く意思と能力がある人は働いて、老齢年金や障害年金、児童手当などをもらっている人はそれを活用して、なおかつ生活費が足りないというときに生活保護法が定める最低限の生活水準を満たすまでの保護費を出すという原則です。

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もし生活保護の支給を受けているときに、就労所得や資産の譲渡、親族からの支援などを受けた場合は、その分保護費が減額される仕組みです。受給者は保護費を支給している福祉事務所にその所得や資産の申告をせねばなりませんが、これを怠ると不正受給となります。柏木ハルコさん原作の「健康で文化的な最低限の生活」でも生活保護を受けている世帯の長男である高校生が親や役所に黙ってアルバイトをして、その所得を申告していなかったために不正受給と認定されることになるという話が出てきました。補足性の原則をよく理解していなかった高校生・欣也は納得いかずに荒れ狂います。

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この補足性の原則ですが後にお話するように保護を受けている人が働いて所得を得たとしても、保護費がその分減ってしまうので、働いても働かなくても生活水準は変わらないままという問題が生じています このことは就労することで自分の生活をもっとよくするという意欲を削ぎかねません。
申請保護の原則とは生活保護は受給を望む本人が申請して支給が開始されるという原則ですが、障がいや疾病等で当人による申請が難しい場合、扶養義務者や同居の親族、福祉事務所(役所)のケースワーカーなどが代わって申請を行うこともできます。
世帯単位の原則とは保護開始を判定する資産や能力・他からの支援状況の調査を世帯単位で行うというものです。世帯とは「居住や生計を共にする集まり」という意味で戸籍ではなく住民票上で登録されているものです。ここも生活保護や介護サービスの支給や受給を行う上で結構大きなポイントで、戸籍上同じ血族・親族であっても住居や家計が分かれている場合、世帯も別ということになります。

親子関係とか兄弟関係であったとしても、様々な事情で住居や生計が分かれている場合があります。例えば兄の方はそこそこ裕福でも、弟の方はものすごく困窮していて生活保護の受給を受けないといけないような危機的状況であるといったことです。一見「同じ兄弟なのだから、裕福な兄が弟を助けるべきでは?」と思ってしまうかも知れませんが、その弟がひどいアルコール依存で四六時中暴れていたりしていたらどうでしょう?もし強引に兄と弟の世帯を同一にしてしまったら、裕福な兄の生活も崩壊し、兄弟揃って保護を受けないといけないということになりかねません。両者が共倒れにならないよう、世帯を分離した方がいい場合があります

続いて生活保護で行われる給付の内容についてです。生活費を現金支給する生活扶助がいちばん代表的なものですが、他にも様々な扶助があります。それを列挙しましょう。

1 生活扶助
2 医療扶助(公費負担医療)
3 教育扶助
4 住宅扶助
5 介護扶助
6 出産扶助
7 生業扶助
8 葬祭扶助

生活保護で行われる扶助のうち、最も大きな割合を締めるのは医療扶助です。これは医療サービスの現物支給という形で行われる扶助です。生活保護費の半分近くを占めます。このことは頭の中にしっかり入れておいてください。後ほど医療扶助に関する問題について書きます。

1の生活扶助ですが、これは衣食をはじめとする日常生活の必要経費を支給するもので、飲食や衣服・娯楽費、光熱費が相当します。
さらに障がいや疾病・母子家庭・要介護者がいる世帯の場合は障害者加算・母子加算、妊産婦加算・介護施設入所者加算・在宅患者加算・放射線障害者加算・児童養育加算・介護保険料加算といったかたちで保護費が上乗せされます。

4の住宅扶助はアパートの家賃や間代、地代等を支給するもので、住宅補修費用などもこれに含まれます。

5の介護扶助は要介護又は要支援と認定された被保護者に介護福祉サービスを現物支給する扶助です。介護保険加入者はそちらを優先して利用させ、自己負担分のみ扶助されます。

6の生業扶助は生業に必要な資金、器具や資材を購入する費用、または技能を修得するための費用、運転免許所など就労のための支度費用を扶助するものです。高等学校の授業料もこれに含まれます。

あと基本的に生活保護は居宅で受けることになりますが、収容型の保護施設も設置されています。
次に生活保護基準の算定ですが、全国一律ではなく、支給を受ける地域の状況や受給者の年齢、受給世帯の人数によって金額が異なります物価や借家の家賃は各地域で差がありますし、北海道や東北地方などの酷寒地などでは光熱費が嵩むことを考慮しないといけないでしょう。そのために各地域を6段階の級地区分で分類し、基準額が定められています。 

 →級地別の生活保護基準表が掲載された資料 「平成30年10月以降における生活保護基準の見直し

そして障がいを持っている人や母子家庭、中学生までの子どもがいる世帯についてはそれぞれ障害者加算、母子世帯等加算、子ども養育加算がなされます。

下は生活保護費の計算例です。(上のリンク先より)イメージ 6

次回は生活保護の概況についてです。

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