新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

国家社会主義と官製統制経済の愚かさ


前回の「労働者の貧困を救えなかった社会主義国家 」は旧ソ連中国共産党などといった社会主義国家の多くは中央集権的な独裁国家となり、彼らが敵視する資本家や地主だけではなく、多くの民衆の命まで大量殺戮や貧困による餓死で奪っていった歴史について語りました。そして社会主義国家が破綻していった元凶は農業や工業といったモノやサービスづくりに関してまるでシロウトの官僚たちが、上意下達でデタラメな指示やノルマを生産者に圧しつけ、結果的にモノやサービスの生産・供給を徹底的に破壊してしまったからでした。それによってひどいモノ不足やサービスの欠如を招き、ハイパーインフレを引き起こすことにもなります。

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旧ソ連における物資配給のときの行列

今回は前回記事の追加で社会主義国家が行っていた官製統制経済・市場のバカバカしさについて述べておきます。官製統制経済や市場は資本主義の国でも部分的に採り入れられており、日本においてもそれがたくさん遺っています。その例をあげると農業・漁業の分野や医療分野、介護や保育などの福祉事業が代表ですが、現在民営化や自由化が進められたものも含めると、郵便・鉄道・バス・タクシー・通信(電電公社)・たばこと塩(日本専売公社)などもそうでした。1970~80代は社会主義国家やそれに準ずる大きな政府主義が行き詰まりをみせていた時代で、日本においても莫大な赤字を抱えお荷物だった国鉄電電公社日本専売公社中曽根康弘政権時代に民営化されていきます。郵便は小泉純一郎政権時代に民営化されました。
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社会主義国家は貧しい労働者・民衆のためにという大義名分であらゆるモノやサービスを低い価格に統制しようとします。一方食糧などの物資は生産者から高く買入れをします。当然のことながら逆ザヤが発生し、国家や公社はそれをどっかで穴埋めしないといけません。資本主義国家の公社ですと税金で逆ザヤを穴埋めしますが、社会主義国家の場合は石油やガスなどの天然資源などを売り払って埋めたりします。

逆ザヤを税金や天然資源などを売った収益で補填できるうちはいいのですが、資源価格暴落や税収の落ち込みでそれができなくなると、財政赤字や負債がどんどん膨張し、最後は国家財政破綻ならびに公社の経営破綻となります。

官製統制市場は需要と供給のバランスを非常に歪なものとします。この話は「社会保障・福祉・医療問題 」編の「需要と供給の関係が歪な保育・福祉業界 ~官製統制市場の矛盾~ 」でもしましたが、日本の医療・介護・保育業界も長年官製統制市場を採ってきております。その記事で作成した図を流用します。

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本来の市場原理に従えば需要と供給は上の図のように均衡量と均衡価格が決まってきますが、下の図のように官製統制市場で無理やり本来の均衡より低く価格を下げますと、供給側の不足と需要超過が発生します。モノ不足が起きてしまうのは当然です。

ベネズエラはご存知のとおり、チャベスやマデュロの行った経済政策がメチャクチャでハイパーインフレや食糧不足を招いていますが、やはり官製統制市場が元凶となっています。

参考
野田加奈子氏   「ベネズエラの食料不足のしくみ
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上は野田さんのブログ記事に掲載されていたものです。

ベネズエラ政府の役人はブラジルやウルグアイなど他国で10ドルで売っている小麦を20ドルという高値で買ってきますが、それを自国民に3ドルという安値で販売します。当然17ドルの逆ザヤが発生し政府は損を被りますが、これを自国の石油を売ったカネで補填してきました。原油の取引価格が高いときはそれで良かったのですが、それが下落してしまうとベネズエラ政府は逆ザヤの損失補填ができなくなります。一挙に財政赤字が膨らみ、外貨も極端に不足します。

一方、ベネズエラの農民が小麦を生産するのに5ドルの経費がかかります。しかし国内では3ドルでしか販売できないため、採算がとれません。よってベネズエラの農民は農耕をやめるしかなくなります。
さらに政府が3ドルという安値で売っている小麦を10ドルという高値で売っているコロンビアに密売し、7ドルの利益を稼ぐ”転売ヤー”も出てきます。
そのためにベネズエラ国内に食糧が残らないことになります。

市場原理を無視した国家社会主義や官製統制経済・市場は経済活動を混乱させ、需要と供給の均衡をおかしくし、結果的にひどい貧困を生み出します。

スターリン毛沢東のような独裁者でも市場原理に勝てません。われわれは市場原理・経済理論の法則を知り、それを活かしていくしかないのです。
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こちらでも政治等に関する記事を書いています。

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