「貧困・雇用・格差問題 」編はここから日本における問題を考察していきます。
トマ・ピケティ教授の「21世紀の資本」について、ここで取り上げてきましたが、日本の場合は他の世界各国に比べてピケティ教授が指摘してきたような極端な所得や資産格差が少ないのです。そのことは「日本で問題なのは経済格差より経済全体の地盤沈下 」で既に書きました。ピケティ教授自身が日本は例外的に経済格差が小さい国だと驚いていたぐらいです。
NewSphere 「ピケティ氏も困惑? 日本だけ格差縮小、と米紙指摘 景気後退などが影響か」
しかしながら、日本は経済格差は小さくても、過去四半世紀に渡って貧困の拡大が進みました。生活保護基準以下の低所得者が約3000万人もいるといわれており、相対的貧困率は2015年で15%強です。「日本人の6人に1人が貧困」ということになります。
相対的貧困率は等価可処分所得の中央値の半分という算出の仕方をしますが、その中央値が245万円であり、その半分が122万円です。日本国民のうちで6人に1人が122万円にも満たない年間所得で生活しているということになります。
もやい理事長 大西連氏 「貧困率は16.1%から15.6%へ改善 一方、悪化した数字も」(2017/6/27)
日本国民の年収分布グラフ ボサノバ和尚様
2015年の中央値が245万円でしたが、1997年は298万円であり、18年間で43万円も下がっています。つまりは日本国民全体の所得水準が低くなってしまったということです。
このような結果を招いたのはもう言うまでもありません。「失われた20年」という世界でも例がない異常な長期デフレ不況です。結論を先に申せば日銀および政府がマクロ経済政策の二本柱である金融政策と財政政策を怠り続け、企業の投資冷え込みやそれに伴う雇用の悪化と不安定化を招いたからに他なりません。
このことで銀行の貸し渋りや「雨の日に傘を取りあげる」という云わんばかりの貸し剥がしで、企業が設備投資や雇用に使う資金が調達できなくなり、「リストラ」と呼ばれる設備縮小や雇用縮小をやりはじめたのです。資金繰りが行き詰った会社がバタバタ倒産します。
三重野が金融引き締めで殴り、倒れたところへ橋龍が緊縮財政でねじ踏みするという非道を行いました。
日本の貧困拡大は1990年代が出発点です。このことは既に「デフレと失われた20年 」編で嫌というほど書いてきました。これから話していくことはその焼き直しとなるのですが、就職氷河期のために正規雇用の機会を逃し、職能を磨くことができないまま中高年となってしまったロスジェネ世代やそれに対応できなかった高度成長期時代に組まれた社会保障制度の問題、世代(生年)格差などについて、詳しく書いていきたいです。
日本の貧困や格差は経済の不安定化や不確実性が生んだものです。
景気や雇用の安定には金融財政政策というマクロ経済政策が重要なのですが、過去20年間以上に渡る日銀や政府の政策態度が、積極的な企業の投資や国民の消費行動を躊躇わせてきました。そうした批判も行っていきます。
こちらでも政治等に関する記事を書いています。