新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

低所得者だけではなく低所得状態でも給付される給付付き税控除

今回は給付付き税控除やベーシックインカム生活保護との違いについて話します。以前三橋貴明ベーシックインカムというけれども国民に現金を配る制度だったら既に生活保護があるじゃないかといったような主旨の発言をしています。
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しかしながら両者で大きく異なるのは
ベーシックインカムの場合は建前上ではあるけれども全国民一律給付、
・給付付き税控除の場合は一定所得以下の状態になったら、
生活保護の場合は福祉事務所が保護が必要だと判断した場合
に給付されるという違いがあります。

官による給付判断基準が最も低いものがベーシックインカムで生活状況や就労状態、資産や所得に関係なく無条件給付です。給付付き税控除は所得という線引きで給付をするか、逆に徴税をするかが決まります。生活保護が最も行政機関の裁量に左右される制度であり、所得や資産状況はもちろんのこと、利用者の就労意思や生活態度をこと細かく調査し、保護が無ければ利用申請者が死に至るだろうという状況ではじめて保護が開始されます生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされるまで生活保護は利用できないものだと思っておいていいでしょう。

生活保護と比較してはるかに柔軟性の高い包括的現金給付制度である給付付き税控除やベーシックインカムは実現すると、かなり幅広く多くの人々に恩恵を与えることになるでしょう。極貧状態に置かれたごく少数の低所得者のみならず、ごく一般的な勤労者の人でも給付対象となる場合があるのです。

例えば日頃バリバリ働いて、多くの所得を稼ぎ出している人が、突然病気になって入院などで長期間仕事を休んだとします。その年は所得がガクンと落ちることでしょう。給付付き税控除がありますと、税申告でその年の所得が低かったと算定され、自動的に税が減額されるなり、給付金がもらえるようになります。
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あるいは自営業者や農業・漁業に従事している人ですと、何らかの事情で売り上げが急減したとか、不作や不漁で所得がひどく落ち込む場合があります。さらに大きな地震や水害などで自宅や仕事場を失って仕事ができず、無収入になる人がたくさん出ます。そうした場合も給付付き税控除やベーシックインカムで所得補填されることになります。
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生活保護ですと、先に述べたとおり、所得や資産をほとんど失って、かなりひどい貧困状態になるまで保護が開始されませんが、そこまでの達するともはや就労意欲や生活再建意欲がほとんど無くなってしまい、逆にずっと生活保護に依存し続けないと生きていけなくなります。貧困の怖さはあらゆる意欲を奪い、自立ができなくなってしまうことです。そうなる前に給付付き税控除などで早めの所得支援を行い、ひどい貧困の罠に陥ることを防止すべきでしょう。
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生活保護のような制度はごく限られた低所得者だけのためのものという印象を強く持たれていますが、給付付き税控除は所得がいつもの年よりひどく落ち込んでいれば自動的に給付されるシステムです。確定申告やマイナンバー登録さえしていればいいのです。

給付付き税控除やベーシックインカムの場合、就労している人でも一定所得以下の人には給付されるものですし、基本的には就労所得で不足する分を補うような制度だと思っておくべきです。もし仮に給付付き税控除やベーシックインカムが実現したとしても、最初はひとり最高月額数万円程度でしょう。一部で言われているように働かなくても遊んで暮らせるだけのお金を月20万円近くももらえるような給付水準にはならないと思うべきです。

後日駒澤大学井上智洋さんらを中心に唱えられているようにAI(人工知能)の発達などでシンギュラリティ(技術的特異点)が到来し、人々が労働をしなくても豊かな生活を満喫できる時代が実現するかも知れません。しかしそれは早くて数十年先のことでしょう。残念ながら人間の頭や手など体を遣わないとできないモノやサービスがかなり残されることかと思われます。それまではやはり人々の所得は就労によって得るのが基本で、給付付き税控除やベーシックインカムはその補助にすぎないものです。

身体や精神に障碍を持ったり、大きな病気や怪我の後遺症で就労がほとんど不可能な人ですと給付付き税控除やベーシックインカムの給付金だけではかなり不足します。そういう人については当面の間、障害年金や障害者手当、生活保護などで不足する所得を補う必要があるでしょう。
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私がそのような給付付き税控除やベーシックインカムでも導入した方がいいと考えるのは、1990年代以降不安定になってしまった日本経済と雇用情勢によって、人々の所得の変動が大きくなってしまったためです。所得の浮き沈みが激しいと、人々はモノやサービスを買うためのお金を所得が最低の状態に合わせてしまう恐れがあります。そうなるとマクロ経済全体にも悪い影響を与えます。個人だけではなく企業についても同じことで、雇う人や設備投資の費用を需要が最低の状態に合わせてしまい、繁忙期は残業でこなすような経営手法を採ります。

給付付き税控除やベーシックインカムの導入で人々の所得の平準化を計ることで、持っているお金を最大限有効に活用できるように仕向ける狙いがあります。

もう一度申し上げますが、給付付き税控除やベーシックインカムは特定の低所得者・貧困者のためだけの制度ではありません。日頃真面目に働いている人々を含めたすべての人々の暮らしの安定を守るための制度です。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet

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