新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

普通の人に早めに現金を配る方が安上がりか?

これまで解説してきたようにベーシックインカムや給付付き税控除は貧困者というごく限られた層の人のみを対象とした生活保護と制度の設計思想が大きく異なり、より幅広く、普遍的な現金給付制度です。BIや給付付き税控除はごく一般的な就労者の人でも給付をされる機会が増える可能性があります。病気や怪我、あるいは突然の失業といった事態の他に災害で仕事ができず無収入になってしまうといった事態でも迅速に生活費補填がなされるようになることが期待できます。

生活保護の場合はただ所得が著しく低所得であるという理由だけでは利用が認められません。大きな資産となる持ち家や自家用車、貯金、保険、金融商品といったものをすべて吐き出した上で、それでも就労がほとんど不可能な状態だと見做された人でないと保護開始はされないでしょう。生活保護の利用のが認められるような人は既に就労能力や意欲、ありとあらゆる資産が底をついた状態です。ここまで来てしまうと生活自立がかなり困難になってきます。

貧困対策はそうなる前の防貧政策が重要です。貧困状態はそれをこじらせ、深みに嵌れば嵌るほど抜け出しにくくなります。失業は貧困状態に陥る元凶のひとつですが、早く再就職ができず、長期失業状態を続けると職能の腐食や勤労意欲ならびに自信の喪失につながります。お金がなくなってくると外へ出て活動したり、他人と交流をする機会もぐんと減って、多くの機会損失を生じます。負の連鎖です。
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公共交通機関が不便な地域ですと自家用車とかを手放してしまうと通勤が難しく、逆に再就職先の選択肢を狭めることになりかねません。生活保護のように自家用車などの処分が保護の前提となるような制度ですと、逆に再就職を阻むことになりかねないのです。

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あと生活保護に関する記事でも紹介しましたが、生活保護利用者を囲い込みする悪質な貧困ビジネスがあります。街であふれてしまったホームレスに「個室寮完備」「3食付」「日払い相談可」と声をかけ、粗末な住居に押しこみ、生活保護の利用申請をさせてピン跳ねするものです。囲いこまれた生活保護利用者は買い物や行動の自由を奪われ、どんどん意欲を失って”グータラ病”に陥ります。こんなことになったら入居者の生活の自立は望めなくなります。



こんなことになるのであれば、まだ就労能力や意欲、資産を完全に喪失してしまう前の段階で不足している分だけを早めに補填するような支援を行った方が結果的に安上がりの厚生政策になるのではないでしょうか。

前回書いた例ですと、地震や水害、火災などで突然に住居を失ってしまったような人の場合、住宅費だけを支援すれば自立した勤労生活を維持できます。あるいは逆に一時的なものを含め、所得が激減してしまっただけの人に対しては数万円程度だけでも生活費を支援してもらえれば助かるという人もいるでしょう。住居や自家用車などを処分しなくても給付が受けることができます。もらった給付金を遣って資格取得や職業訓練を受けるといった人も出てくるかも知れません。
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私の考えているベーシックインカムや給付付き税控除は生活保護制度のように利用者を丸抱えするようなものではなく、人々の自立性を尊重したものを考えています。基本的に所得は各人が就労によって賄うもので、補助的にBIや給付付き税控除で生活費支援を行うといったものです。病気やケガ、天災や事故などで所得を大きく減らしてしまったときに、その不足分を補填し、貧困状態に陥ることを防止するといったことが狙いです。
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ベーシックインカムや給付付き税控除があると、完全に無所得となってしまうような状態はなくなります。失敗を恐れず新しいことに挑戦する気持ちが生まれてくるかも知れません。
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これまで日本は20年近くも経済活動が萎縮し続け、デフレ状態に陥っていました。個人だけではなく企業でさえ、お金を注ぎこんで新しい商品を開発することよりも、過去の成功作の焼き直しみたいなものばかりつくったり、よくわからない新しいものを買うことを避けるようになります。わずかなお金のゆとりが「よくわからないけど一度試しに買ってみるか」という動機を強めることにつながります。

それと以前自分は将来入り続けると予想される恒常所得について書いたことがあります。

日本は1990年代にバブル景気が崩壊し、昭和時代までの終身雇用制度や解雇規制が維持できなくなってしまい、非正規雇用化が進みます。就職氷河期世代だけではなく、長年勤続していた社員までリストラや賃下げを受け入れざるえないこととなり、多くの国民の所得が不安定化します。
経済活動や雇用の浮き沈みが激しくなってくると、個人だけではなく企業も消費や投資・雇用を底の状態で均衡するように調整します。このことがデフレスパイラル状態につながってしまったのかも知れません。

ベーシックインカムの給付金は毎月毎月必ず入る所得となります。となってくるとそのお金は毎月遣いきってもいいお金です。さらに最低限の所得が保障されているならば貯蓄や保険に回すお金を最低限に抑えることができるため、お金を最大限にフル稼働させることができます。

人々が完全に活動意欲を失ってしまう前に、お金を給付することでそれを防ぐことが、結果的に安上がりになるのかも知れません。生活保護よりもベーシックインカムや給付付き税控除の方が人々の生活や経済の自立性を損ねません。

次回は解雇規制緩和ベーシックインカムについてです。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet

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