新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

混迷が予想される2019年以降の日本と世界の経済 ~「魔の10月」になる恐れ~

yahoo!ブログで続けてきました「暮らしの経済手帖」は来月以降に新ブログサービスへ移転し、これまでの記事を全面的に改訂するとともに、以後は時評を中心に記事を書いていくつもりです。yahoo!ブログではあと数記事のみ程度の予定です。

これまで2年もの間、書いておきたかった経済問題の記事をひと通り書き終えたのですが、正直気持ちが晴れません。このブログで伝えたかったこと、望んでいたこととは真逆の方向に経済や世情が動いてしまっているように感じられます。今年に入ってから一気に経済の不透明感が増してしまい、にも関わらず自民党が消費税率10%引き上げ見送りをしないまま参議院議員選挙に臨もうとしています。これまでせっかくよい結果を生んでいたアベノミクスもぶち壊しにさせられかねないような政治的流れになってきています。

現在アメリカのトランプ大統領は徹底的に中国叩きをはじめ出し、中国製品排除を行っています。この影響が世界経済全体を巻き込むかたちで大きな影響を与えており、日本にも輸出入の落ち込みとそれに伴う民間企業の投資と雇用意欲の低下、そしてもともと芳しくなかった個人消費がさらに低下してきています。さらに今年10月はUKのEU離脱ブレグジット)の期限を迎えることになり、ここへ日本の消費税率10%引き上げが重なると恐ろしく深刻な経済ダメージを被るかたちになりかねません。

また安倍総理が核合意についてアメリカと緊張関係になるイランを訪問し、仲裁を買って出ようとしましたが、それを見計らったかのように、日本のタンカーがホルムズ海峡で砲撃されるというテロが発生しました。中東情勢の不安定化が原油価格の高騰を招き、これもまた大きな経済への打撃となるでしょう。報道によれば安倍自民党政権は外交で点数を稼ぐことで、衆参ダブル選挙を見送り、消費税率10%引き上げ容認のまま参議院選挙に臨むという流れが強まってきたとされていますが、ここで番狂わせが生じてしまいました。
ひょっとしたら今回の安倍総理イラン訪問の結果が、衆議院解散と消費税率10%引き上げ見送りへと転ずる可能性が出てきましたが、それも無しで参議院選挙に突入し、安倍自民党議席を落とし込むということになるかも知れません。(他の野党がどうしようもないので大きな打撃にはならないでしょうが・・・・・。)

あまり想像したくないことですが、安倍政権のレームダック化と共に、これまで民間企業の投資や雇用意欲を伸ばしてきた金融緩和政策を中心としたアベノミクスがどんどん崩れ出し、日本の経済や国家財政問題がややこしいことになってしまう恐れがあります。
財務省の役人や銀行・証券会社などの金融機関は元々金融緩和政策を歓迎しておらず、子飼いの経済評論家をつかって金融緩和政策でハイパーインフレを招くとか、金融政策無効論を流して妨害してきています。その動きが、今後さらに強まるでしょう。さらにここへMMTブームが巻き起こり、極端な財政拡大偏重主義者が台頭してきております。

財務省や金融機関の関係者たちは極端な財政規律偏重と増税および(一見)緊縮財政志向が強く、逆にMMT支持者たちは財政拡大を必死に訴えており、両者は正反対に見えますが、金融政策を認めていない点では共通しています。さらに官僚主義色が強いのも同じです。この両者が互いを利用しあうような形で奇妙な連携を組み、日本を国家社会主義的な経済構造へと導いてしまうことを私は警戒しています。

もし仮に安倍総理が何らの形で失脚させられ、後の政権に交代したとしても、財務省の役人らに翻弄され、メチャクチャな経済政策を行ってしまうことになるでしょう。金融政策を否認している彼らが今後ますます苦境に陥っていく日本経済と雇用悪化に対し、打つ手として考えるのは財政出動規制緩和程度しかありません。国民の生活福祉に直結しない財政出動を濫発し、一般の消費活動や企業の投資・雇用意欲回復につながらないまま財政赤字だけ膨張し、それを増税で穴埋めするという地獄絵図です。

戦前に昭和恐慌の危機を脱することに成功させた高橋是清大蔵大臣が2・26事件で惨殺された後で、後継の大蔵大臣になった馬場鍈一が行った財政と同じようなことにならないか、私は不安視しています。馬場財政は軍部のいいなりのまま軍事予算を膨張させ、高インフレと増税国債大量発行を招きました。

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馬場鍈一

アメリカのMMT支持経済学者のケルトン教授が日本をMMTの見本みたいに紹介しておりますが、彼女の言う通り日本がMMTの実験場になってしまうようなことになりかねません。

日本は三重野康総裁以後の日銀や財務省によって、金融政策を引き締め続けられたために、民間企業の投資が抑制され続けました。そのおかげでかつては世界トップクラスだった技術開発力や商品開発力が損なわれ、国際競争力が失われてしまったのです。経済の心臓というべき民間企業が衰弱され続けてしまうと、いずれ金融緩和政策や財政政策、規制緩和などを行っても経済力の回復が難しくなっていくのです。いまの日本は心筋の壊死がかなり進行してしまったような状態で、残存している心筋を異次元緩和政策などで必死に動かしてきたといえましょう。再び悪しき日銀・財務省流の金融政策が復活してしまうことにより、日本の民間企業の衰退がさらに加速し、労働者の職能腐食が進んで取返しのつかないことになりかねません。

私からみたら財務省や日銀によるウルトラタカ派というべき金融・財政政策観とMMTは両方ともカルトのブードゥー経済学です。前者はさらにガラパゴス経済・財政理論といっていいでしょう。
新ブログ移行後もこの二者を徹底的に批判し続けます。

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