新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

経済学無視で損をしてきた医療・福祉関係者

生活保護の話を書き終え、「社会保障・福祉・医療問題 」編は今回を含めあと2回とします。今回は日本の医療や福祉関係者の多くが経済学に冷淡であることを批判します。

自分も20数年~30年前のことですが、福祉学科の大学生でした。高校時代から革新左派系の思想を持つようになり、進学した大学もまた教授や友人たちの多くは左派系が多かったです。当時の友人のひとりは「アベ政治許すな!」なんて年賀状を書いてきました。(笑)

世界的に見たらおかしいことですが、日本の左派や福祉関係者の多くは経済学を学ぶことを忌み嫌う傾向にあります。経済学を「金儲けのための学問」だと思っているのでしょうか。お金の話をすることをどこか汚らわしいと思っているのかも知れません。しかしながら経済学という学問はお金儲けのためというよりも、モノやサービスといった財を生産し、多くの人々に過不足なく分配する方法を探るものです。医療や福祉サービスの現場は多くの労力と物資を消費します。そのための費用は多大なものになります。ほんとうは医療や福祉を志す者こそ経済学をしっかり学ぶべきです。

私は俗にいうリフレ派という経済学研究グループの一人ですが、医療や福祉関係者でリフレ派という人はごくごく僅かでしょう。金融政策命で消費ではなく、まずは企業の投資を伸ばせーなどと叫んでいる福祉関係者はほとんどいないかと思われます。
しかしながらリフレーション政策は企業に投資を促し、雇用を拡大させることを目指すもので、かなり広義の意味で労働福祉政策といえるものです。安倍政権発足後リフレーション政策の考えを採り入れた経済政策アベノミクスがはじまって以降、企業の投資と雇用がV字回復といっていいほど改善しました。白川日銀時代までは低賃金・過重労働・パワハラが横行するブラック企業が跋扈していましたが、労働市場は買い手から売り手市場に転じ、賃金だけではなく働きやすさをアピールして求人をかける企業が増えています。雇用の改善は雇用保険生活保護などといった社会保障を必要とする人を減らす効果があり、それによってより充実した社会保障給付を訴えることが可能となってきます。

上で述べたように手厚い医療や福祉サービスを維持し続けるためには、より効率よく質の高いモノやサービスを生産し、それによって多くの収益を稼ぎ出すことが不可欠です。医療や福祉サービスの原資となる社会保険料収入や税などは民間企業や個人がモノやサービスの生産活動を行って得た収益が源だということを忘れてはなりませんキューバベネズエラのような社会主義国は医療が無償化されていたりしますが、モノやサービスの生産力が低く、薬や手術用の器材がまともに揃わない有様です。高レベルの医療や福祉サービスはサプライサイド(供給側)の強化が欠かせないのです。

しかしながら日本の左派や福祉関係者の多くは「経済よりも医療・福祉」みたいなナンセンスな発言をします。われわれは経済全体のパイを大きくし、分配するパイを多くすることをすべきだと主張しますが、それが通りません。実名をあげますと藤田孝典氏や井手英策氏のように「痛みわけ」などと言って、再分配の仕方ばかり論じています。
日本の経済力が弱まるのと比例するように社会保障財源や国家財政の税収が落ち込み、財政が萎縮していきます。その結果経済力が衰えた一般市民に消費税や社会保険料などの重税を課し、その一方で給付をどんどん削減していく緊縮財政に走っていかざる得なくなります。「日本は豊かになったのだからこれ以上経済成長を目指さなくてもいい」などと呑気なことを言っている場合ではないのです。

バブル崩壊で日本経済が低迷し続けると共に、国家財政の歳入と歳出がワニの口のように開いてしまいました。不景気で人々の所得や企業の業績が伸び悩むことで税収が落ち込むのですが、歳出はどんどん膨張します。
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日本の国家財政(一般会計)の歳出は国債償還費を除き社会保障費が半分近くを占めます。財務省は当然のことながら社会保障費の削減を進めなければならないと考えます。


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当たり前のことですが税収や社会保険料を超える社会保障給付は不可能です。ミルトン・フリードマンが述べたように「ノー・フリーランチ(ただ飯はない)」です。
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社会保障費を増やすためには税収を伸ばさないと不可能です。税収を伸ばすには二つの方法が浮かびます。多くの人が思い浮かべるのは社会保険料の値上げや増税です。もうひとつの方法は税率はそのままに経済活動を活発にして所得税収や法人税収を伸ばす方法です。私は後者を薦めます。



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私が「アベノミクスとリフレ政策 」編で述べてきたように金融政策の方法を知らないと、企業の投資増加や雇用の拡大ができず、社会保険料の値上げや増税という形での社会保障財源拡大策しか思い浮かばなくなります。

あと多くの政治家やマスコミ、そしてその背後にいるZ官僚らは「日本の国家財政は破綻寸前である」と国民に吹き込んできました。自分はこのサイトの「 税と国家財政問題 」編でその心配はほとんどないことを説明してきています。

参考記事

自分が通っていた大学の教授の一人であった唐鎌直義(後に立命館大学教授)さんは高橋洋一さんの本を読んでおられ、日本の国家財政危機はウソであることはご存知のようでした。しかし日本の左派や福祉関係者の多くはZ省の”ご説明”を真に受けてしまい、社会保障を充実させるには消費税をもっと上げなきゃなどと言っております。


国家財政のバランスシートの見方を知っている人や、国債と貨幣の関係を理解できている人は井手氏を完全にバカにしています。

日本の社会保障関係者はどこかで消費税率引き上げに協力すれば、お上は社会保障費を増やしてくれるだろうと期待しているような節を感じますが、とんだ甘い考えです。増税を搾取されるだけ搾取され、社会保障費はどんどん削減されるでしょう。「重税無福祉国家」を招くだけです。
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福祉の美名で増税を推し進められたり、バランスシートの右側の負債側の残高だけ見せて「国の借金1100兆円」と言って国民を脅して、必要以上の社会保障費削減を許してしまうようなことを防ぐにはマクロ経済学や国家財政のバランスシートの見方を把握せねばなりません。日本の左派や福祉関係者はこの努力を完全に怠っています。

左派や福祉関係者が経済音痴のままでいるために、日本の社会保障費は削減対象として狙われやすいのです。私がこのブログサイトを立ち上げた理由のひとつはマクロ経済政策の基本知識と社会保障政策を一緒に学べる場をつくらねばならないという考えからでした。

とにかく不必要な増税や緊縮財政が推し進められ、日本の社会保障制度がズタズタにされてしまうようなことをを防ぐには、経済学や財政の知識が不可欠だということを日本の左派や社会保障・福祉関係者に知っていただきたいと願っております。

こちらでも政治等に関する記事を書いています。

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