新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

生活保護費負担の抑制はマクロ経済政策が第一

長くなった生活保護の話ですが、今回で締めくくりとします。最後はマクロ経済と生活保護の関係です。

これまで述べてきましたように生活保護は国によって何度も受給抑制が行われてきました。ここ数年で一番おぞましかったのは2012年に起きた生活保護バッシングですが、現在もなお政府は国家財政難などを言い訳に保護費削減を続けています。

これまでこのサイトでは何度か日本の国家財政は決して危機的な状況ではないことを説明してきております。消費税をはじめとする増税や無理な歳出削減を行う必要は決してありません。

 弊サイト  税と国家財政問題

今の政治家や財務省の官僚は増税を進め歳出を抑え込むこと以外考え付かないような有様ですが、それよりも先に経済状況を好転させて税収を伸ばし、雇用の改善や賃金の上昇で生活保護を必要とする人たちを減らすことを考えるべきでしょう。好景気で企業や個人が所得を増やせば所得税収や法人税収、そして社会保険料収入が伸びます。いわゆる「上げ潮理論」というものです。生活保護については景気が悪化すると当然のことながら利用者が増加し、保護費の負担も増えてきます。

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生活保護の利用世者数は現在増加が止まり、平成27年をピークに減少へと転じました。
先の生活保護バッシング後の保護利用資格認定厳格化によるものだけではなく、2第2次安倍政権発足後にはじまったリフレーション政策の理論を採り入れたアベノミクスの効果で雇用が飛躍的に改善したことが、貧困状態への転落を防止し、生活保護を利用しなくても済むようになったことが貢献しているでしょう。
現在の生活保護利用者の多くは年金給付額では生活を維持できない高齢者が多くを占めているのですが、それでも利用者の増減は景気に左右されます。

1990年代に日銀の三重野康総裁がかなり強烈な金融引き締めを行ってしまい、その後みるみると景気と雇用の悪化が進みました。1997年あたりからこれまで上昇するのが当たり前だった賃金が低下した上に、終身雇用制が崩れて非正規雇用者が増加します。

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1990年代のバブル景気崩壊というファースト・インパクトから十数年経ってから、日本は再びリーマンショックというセカンドインパクトを受けて、非正規雇用派遣労働者が大量解雇されるような事態を招きました。このときにも日銀は思い切った金融緩和を行わず、円高不況を放置したままにしたのです。

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円高不況を放置し続けた白川方明日銀総裁

日銀の怠慢が日本の雇用をどんどん悪化させて、非正規雇用者や失業者の増大を招きました。運悪く就職氷河期で就職活動がうまくいかなかった新卒学生は「ロスジェネ世代」と呼ばれ、その後何十年も辛酸をなめさせられます。彼ら以外にも会社のリストラで退職や解雇に追い込まれたり、ブラック企業といわれるような職場で精神を破壊され、就労意欲を失ってしまった人は計り知れないほどおります。

「失われた20年」の間に政府と日銀は多くの失業者や低賃金労働者、不安定な非正規雇用者を生み出し、放置しておきながら、「水際作戦」とか「硫黄島作戦」と称し、彼らが生活保護を利用することを阻んできました。おまけに超円高・デフレ不況の真っただ中であった民主党政権時代に醜悪極まりない生活保護バッシングを引き起こします。

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このような冷酷非情な仕打ちは人間のすることではないでしょう。私は「お前らの血の色は何色じゃあ!」と叫びたくなりました。この当時私は国家に対する激しい憎悪の念を抱き、無政府主義に傾倒してしまったぐらいです。

経済学者のポール・クルーグマン教授は日銀総裁白川方明(当時)を「銃殺刑にせよ!」と罵りましたが、片山さつきや裏で菅直人野田佳彦を操り、増税社会保障削減を画策した財務次官なども一緒に処刑してしまえと私は憤っていました。
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かなり感情的になってしまいましたが、生活保護については餓死者や自殺者、自暴自棄的な犯罪者を出してまで無理やり給付を削り落とすようなことをする前に、失業を防止し貧困状態をつくらないための経済政策をすべきです。第2次安倍政権がリフレーション政策の考え方を採り入れたアベノミクスのような経済政策をもっと早い時点で行っていたら生活保護を必要とする人自体を増やすことはなかったでしょう。

 弊サイト  「アベノミクスとリフレ政策 」編

政府・日銀の経済失策のツケを生活保護利用者に擦り付けた挙句に、彼らへの偏見や差別意識を植え付けるような煽動を行うようなことは許しがたきことです。我々国民は生活保護費をはじめとする社会保障費を削り落とすことよりも、優れたモノやサービスを効率よく生産し、経済成長を推し進めていくことを考えた方が健全ではないでしょうか。他人のパイを奪い合うことよりも、国民全員で大きなパイを焼き上げ、ひとり一人に手厚く分配することを考えていくべきです。

こちらでも政治等に関する記事を書いています。

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