新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

「バブル経済と恐慌の発生」編へ

「必読!お金が生まれる仕組み」編から「バブル経済と恐慌の発生」編に入ります。

普段経済に関心を持っていない人でもバブル経済崩壊やサブプライムローンショックのような景気の急減速や国家財政破綻による国債暴落や通貨暴落によるハイパーインフレ、金融不安などといった激しい経済ショックに対する不安の気持ちを持っていないでしょうか?
特にマスコミや経済学者等を通じて「消費税を引き上げないと日本の国家財政が危ない」とか「国債が暴落する」「ハイパーインフレが起きてしまう」などといった発言が何度も何度も出てきます。私の知人でもやはりこうした破局的な状況が起きないか心配する声を聞いたことがあります。

このサイトは「自分たちの暮らしをよくしていくための経済ガイドをつくろう」という趣旨で開設しました。恐慌や深刻なデフレ、またはその逆のハイパーインフレといった事態はわたしたちの暮らしを壊滅させるだけの破壊力を与えます。
そこでこのサイトではそうした深刻な経済ショックが起きた事例について検証し、それを防ぐために必要な方策を考えていきたいと思っています。まずはバブル経済とそれが弾けた後に起きる恐慌が発生するメカニズムについて取り上げます。

もう既にその主要原因について「お金が変わったから資本主義が発展した ~その2 金本位制がなぜ崩れた~」や「お金が変わったから資本主義が発展した ~その3 脳化しつづけたお金~ 」のところでも触れておきましたが、もう一度簡単にそれをまとめておきます。

バブル経済は株式・不動産・資源等への投機行為の加熱によって、銀行による信用創造融資でマネーを発生させる行為)が膨張し、マネーが異常増殖してひとり歩きしてしまう現象です。お金からお金を生むというマネーゲームであり、言い方をかえると「お金の癌細胞化」です。実際のモノやサービスの生産や販売・消費活動とは乖離したままお金だけが暴走していきます。

その要因を箇条書きで軽くまとめました。
1 金余り現象の進行
・機械工業の進展による生産効率の向上や省人化によって産業資本家の資産が増大。産業資本の独占や寡占化によって一部の資本家・資産家のもとにマネーが集中し、それがだぶつき気味になる。
・それによって産業資本家は銀行からの融資や株式の発行をしなくても設備投資の資金を用意することが可能に。

2 株式・不動産・資源等への投機行動加熱と資産バブルの膨張
・希少価値が高くなった株式や不動産・資源などの価格が暴騰し続け、その利ザヤを稼ぐ投機行為が異常に活発化する。資本家・資産家のだぶついたマネーがその取引市場へどんどん流れ込む。
・産業資本家からの融資機会が減少してしまった銀行にとって代わりの融資先として投機家を狙った。(アメリカの場合証券会社が所得や資産が少ない労働者階級にまで盛んに株式投機をやらせている)
・「永遠に株価や不動産価格が上昇し続ける」「収益が伸び続ける」「融資が増える」という無限膨張幻想の形成

3 生産設備等への過剰投資や銀行による異常な信用創造の膨張
・資本家の「永遠に収益が伸び続ける」「どこまでも成長が続く」という無限膨張幻想によって過剰投資が進行
・銀行は投機家等への乱脈融資を行い、信用創造(融資によって新たなマネーを発生させる行為)を異常なほど膨張させていく。(←信用創造のしくみについてはこちらに書いておきました)
信用膨張による投機マネー・資産バブルの膨張と同時に巨額の負債も膨張していく


1 資産バブル膨張の一方での労働者への所得分配伸び悩みと商品購買力・消費行動の萎縮
・産業の機械化によって省人化が進み労働力が過剰気味に。技術的失業が加速。労働者階級の所得や資産が伸び悩みあるいは減少
・労働者階級の経済力低下によって生産された商品を購入できなくなっていく。過剰投資でモノの生産・供給が加速度的に伸びているにも関わらず実際の消費・需要はあまり伸びない。
アメリカの場合、所得や資産が少ない労働者階級はローンでモノを購入するようになった。(信用創造を行う金融機関の融資先が資本家から労働者階級へ移行) 

2 異常な信用膨張・投機行動の加熱・無限膨張幻想に対する不安や不信・警戒の発生
・天井知らずで上昇し続ける株価や不動産・資源価格に対し投機家が警戒をしはじめる。
・殖え続ける資産バブルに対し、実際のモノやサービスの生産や消費・投資した企業の業績がさほど伸びていないことへ不安が発生
・それらの理由によって買い一辺倒だった株式・不動産・資源等の投機対象物が売りへと転ずる。株式や不動産等の価格急落

3 資産バブルの影で生まれた巨額の負債の償還行き詰まり
・イケイケで銀行等の金融機関から巨額融資を受け過剰投資・投機を進めていたにも関わらず、実際のモノやサービスの生産・消費がそれに見合うだけ伸びていかない。やがて資本家の事業が行き詰まったり、投機家の投機失敗によって債務償還が行き詰まりかける。
・乱脈融資を行っていた銀行をはじめとする金融機関は債権の回収が滞りがちになっていく。
アメリカの場合労働者階級の個人が経済力低下によって家屋やクルマなどを購入するために組んだローンの償還ができなくなって、それらが不良債権化してしてしまった。

4 中央銀行の金融引き締め
・異常な市中銀行の信用膨張や資本家の過剰投資、投機行為の加熱化の加速を食い止めるべく、中央銀行が金融政策を緩和から引き締めに転ずるものの、猛スピードで暴走するクルマに急ブレーキをかけるようなことになり、信用創造や資本家の投資が停まってしまう。マネーの発生やその供給が急減。設備投資・雇用も伸びなくなる。

こうした切っ掛けがバブル経済崩壊へとつながっていきます。

バブルがはじけると投機対象になっていた株式や不動産・資源などが損切りで売り一辺倒になり、その価格が暴落します。そうした投機対象物を資産として抱えていた資本家や個人・銀行などの金融機関は保有資産価格を大きく減損させてしまうのですが、その一方でそれを買うために発生させた負債はしっかり遺ってしまいます。
(バランスシートを見ると資産の部と負債の部のバランスが一気に崩れ、資産高の目減りと同時に純負債がその分どかんとできてしまうのがわかる)

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モノやサービスを生産していた資本家たちがその穴埋めのために設備投資や雇用(所得分配)を一気に減らし、そのための融資を行っていた銀行側も信用創造を停止します。さらには融資先から債権を強引に回収したり、担保となる資産を差し押さえするなど「貸し剥がし」を始めだします。

それがやがてマネーの発生や供給が滞り、心臓麻痺を起こしたかのように経済活動が停まってしまいます。負債を大量に抱えた企業がバタバタ倒産し失業者が大量に発生します。銀行の信用創造が停まることによってマネーの発行や供給も停止し、モノやサービスの生産や消費もできなくなります。これが恐慌というもので、デフレの親玉みたいな現象です。生活ができなくなり自殺する人たちが続出します。

恐慌はあらゆる経済危機の中で人々に対し最も深刻な打撃を与えるもので、暮らしを壊滅させてしまうものです。

このようなバブル経済の発生と崩壊は何度も繰り返されており、その最大クラスが1929年にアメリカで起きた世界大恐慌です。同じアメリカで起きたサブプライムローンショックや日本で起きたバブル崩壊も基本的には同じ構図で発生しました。それらの経済ショックがなぜ発生したのかについて、もう少し詳しく調べお話していきたいと考えています。

「お金の生み方と配り方を変えれば 暮らしが変わります」

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet

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