これは財政出動・金融緩和の両方にいえることですが、デフレ(ひどいのは恐慌)を脱するまで、政府が責任を持って継続的に財政出動もしくは金融緩和を続けることが重要です。単年度一度きりでは巨額の予算を注ぎこんでも効果なしになってしまうのです。財政出動ないしは金融緩和政策の肝は企業や個人に「これからもっと業績が上げられる」「所得が安定的に増える」という予想をつくることにあります。単発的な政策はそうした予想を生まず、投資や消費行動を変えません。麻生政権の財政出動で欠けていたのはそこです。
麻生政権が姑息的で不十分な財政出動しかできなかった理由は財務省から足枷をはめられていたからに他ならず、予算規模や期間が限定されていたからでした。ただの単純な財政出動だけでは財政赤字を膨大に膨らませることになるので、予算が制約されてしまうのは当然です。
恐慌やそれに近い激しい需要の落ち込みで経済活動マヒに陥る危険があるときは政府貨幣発行という手段も使うべきです。2007年~2009年の経済危機のときはまさに政府貨幣・ヘリコプターマネーの出番だったのです。
政府貨幣は一見馴染みのないものですが、貨幣は中央銀行だけではなく政府も発行する権限を持っています。日本ですと紙幣は日本銀行が発行していますが、硬貨は政府が発行しています。法律上は何も問題はありません。あと「バブルと恐慌」編の高橋是清財政のときにも書きましたが、国債の日銀直接引受という手もあります。政府が国債を発行して日銀にそれを直接引き受けてもらうと、そこで現金を生むことができます。この現金を遣って財政出動を思い切りやればいいのです。俗にヘリコプターマネーと呼ばれています。
ヘリコプター・ベン
参考 井上純一(or弐) 「キミのお金はどこへ消えるのか」 第1話
当時麻生政権のときにも閣内外で政府貨幣発行を行って思い切った財政出動をやるべきだという意見が多く出ていました。しかしながら与謝野馨や日銀・財務省がこれに反対し、実現しなかったのです。政府貨幣は国にとって印刷コスト以外はほとんどノーコストで資金調達できます。後で国民に重い税負担を負わせることもありません。戦前の日本の軍部みたいに際限なく日銀直接引受でマネーを刷るようなことをすれば劇症的なインフレを起こしますが、デフレ脱却までの短期間に限定してやればその心配はないのです。
当時どこの銀行も未曾有の不景気で大型の企業倒産が相次ぎ、その不良債権の穴埋めにおおわらわになっていました。住宅ローンの焦げ付きもすごかったようです。こんな状況でほいほい融資できる銀行なんてありません。与信調査はものすごく厳しく、新規融資はメチャクチャ圧縮されていました。当然中小企業を中心に資金繰りが逼迫し、最悪それでまた企業倒産と解雇者を生むことになります。ですので思い切った金融緩和政策を行わないといけなかったのです。もちろんアメリカのFRBなどは全開モードで金融緩和をやっていました。
また日本だけが金融緩和を実施せず、貨幣供給が滞っていたために円が過少となって高騰します。これがますます輸出産業を苦しめることになります。
麻生政権だけではなく、その後の民主党政権も政府貨幣はおろか、金融緩和政策もほとんどやらず、第2次安倍政権発足までの間、内需・外需は底這いし続けました。雇用情勢もデットキャットバウンド(死んだ猫でも投げれば飛び跳ねる)で少し持ち直した程度で極めて悪い状況のままです。
もし麻生政権が政府貨幣としっかりとした金融緩和をやっていれば、民主党に政権を奪われず下野することも無かったのではないかと思えてなりません。
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