新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

医療費の膨張はなぜ起きる

社会保険制度の状況や問題について検証していますが、今度は医療保険制度です。新聞やテレビなどのマスコミを通じて、年金保険制度と共に給付額の膨張し続けて大変なことになっていると制度破綻の危機感を煽られています。

まずは国民医療費の総額の推移やその内訳、GDP比などの数字を見ていきましょう。

2017年度の国民医療費ですが42兆3,644億円に上りました。前年度(平成26年度)の40兆8,071億円に比べ1兆5,573億円、3.8%増加しており、推計結果を開始した昭和29年度以降過去最高額を更新し続けています。
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図表引用 国民医療費・対国内総生産・対国民所得比率の年次推移 画像:平成27年度 国民医療費の概況(厚生労働省

とはいえ伸び率は14年ぶりに下落し、医療費膨張の勢いが僅かですが和らぎました。日本医師会の横倉義武会長の見解はC型肝炎治療の特効薬(ハーボニー)の薬価引き下げや治療薬を必要とする患者に行き渡ったことで投与の必要性が減ったことが奏功したからではないかと述べておられます。超高額な薬剤であるハーボニーや新しいがんの治療薬として注目されたオプジーボのことは後で改めて取り上げる予定ですが、ダ・ヴィンチを使ったロボット手術などの超高額な先進医療の発展・拡大が医療費の増大につながる要因のひとつであることは否定できません。

それやはり国民医療費の増大要因のひとつとなっているのは高齢者の医療費でしょう。60歳代以上の医療費は全世代の医療費の6割強を占めています。
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傷病分類別の医療費構成を見ますと心疾患や高血圧、脳血管疾患などの循環器系疾患の割合が最も高く、糖尿病(4%)と合わせて生活習慣病と関わりが深い疾病の医療費が全体の1/4を占め、がんなどの新生物といったものを含めますと1/3となります。高齢化の進行によってこうした疾患が増加し、その医療費が増えていくことはやむを得ないことです。

日本の国民医療費がどんどん膨れ上がって、このことが国家財政を圧迫し、我々国民の健康保険料の値上げや自己負担分の増大を招きかねないという懸念が広がっていますが、乱暴な医療費削減は取返しのつかない医療崩壊の原因になりかねません。
前に元フジテレビのニュースキャスターであった長谷川豊氏が「自業自得の人工透析患者なんて、全員実費負担にさせよ!無理だと泣くならそのまま殺せ!今のシステムは日本を亡ぼすだけだ!!」などという暴言を吐いたことがありましたし、抗がん剤オプジーボが極めて高額な薬剤であったために、これの投与が広まると国家財政破綻だなどということを言う人が幾人かいました。こうした誤解についてこれから解いていくつもりです。

老人医療費問題は深刻ですが、これについても我々自身が医療についての考え方を変えることで解決の道が見いだせるかも知れません。

日本の国民医療費とGDPの比率ですが、2013年で約8%でした。(ただし計算基準によってはGDP比11%以上になっているという報道もある「日本の保健医療費、GDP比は11%超で先進国3位 一人当たりは15位 ...」)
厳しい方でみても日本の国民医療費対GDP比は米国、スイスに次ぐ世界3位です。国民ひとりあたりの医療費は平成26年度で約43万5千円で順位は15位です。日本は比較的低コストで良質な医療サービスを提供してきた国だと言っていいでしょう。

冷静に国民医療費問題について考えていきたいと思います。

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