新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

本格的なベーシックインカム実現までの道のり

今回はベーシックインカムもしくは給付付き税控除をどのような過程で導入していったらいいのかを考えてみます。
ベーシックインカムは制度構造自体は極めてシンプルですが、財源規模が大きい上に、税制や社会保障体系を変革していくことになり、大がかりです。本格導入した国はまだ存在せず、社会や経済にどのような影響を与えるのか未知数です。まずは導入事例がある給付付き税控除制度をプレ・BIと位置づけ、それをもっと拡大してベーシックインカムへと発展させていった方がいいでしょう。

導入段階を3段階づつに分けていくことをこちらでは提案します。

第1期がひと月数万円程度の給付付き税控除の導入です。
既存社会保障制度は基本的にそのままで、税控除の一部を置き換える程度です。
この段階はひどい困窮状態に置かれているにも関わらず、生活保護障害年金、児童手当、失業給付など、既存の社会保障制度の利用対象から外れた状態の人に、現金をひと月4~5万円程度支給します。財源規模は数兆円程度です。歳入庁創設による徴税漏れを防ぐことや、マクロ経済政策のあり方如何で数兆円の財源を確保することはさほど難しくないでしょう。増税や他の歳出削減を回避できそうです。
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第2期が給付付き税控除から、ベーシックインカムへの発展と社会保障と税制の一体改革を行う段階です。
給付付き税控除制度をベースに、給付対象者を全国民に拡げたベーシックインカム制度を構築します。
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基本財源である所得税をはじめ、固定資産税や法人税などの税率変更や株式・不動産取引などによって生じた金融資産に対する課税強化なども行います。その上で公的基礎年金や児童手当などの社会手当や税控除、失業保険などをベーシックインカムへと整理統合します。これによって全国民に1人7万円程度の給付を実現します。

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現行社会保障制度のうち、ベーシックインカム編入可能なのは緑枠の老齢基礎年金(一階部分)や障害年金雇用保険生活保護の生活扶助、各種社会手当などで、あとは所得税制の各種控除が統廃合の対象となる。

第3期がひと月十数万円以上の本格ベーシックインカムへと発展させていく段階です。
ありとあらゆる産業において生産活動の自動化が進み、社会・経済活動の発展・維持に必要な労働力が少なくても済む状態になってきたとき、ベーシックインカムは最低限の生活保障から、さらにゆとりのある基本所得保障制度へと制度内容が充実させられることでしょう。
もし仮に生産活動の自動化によって労働需要が過少になってしまうようなことが起きた場合、企業やそのオーナーから所得税や固定資産税を徴収し、ベーシックインカム所得再分配を行うといった形になっていくことでしょう。

一段階づつステップアップを計るかたちでベーシックインカムの拡充を目指すことで、不安視されている財源や社会保障と税制の一体改革によって生ずる混乱、労働供給不足による物価高騰といったトラブルを回避しやすくなります。

ベーシックインカムの導入方法についてはいろいろな案が提案されていますが、こちらが留意した点は現在生活に困窮しているにも関わらず、まともな公助を受けていない人をいち早く保護することです。生活保護は餓死や自殺に追い込まれる寸前の状態で福祉事務所に利用申請しても、簡単に通らないために、放置されてしまう問題がありますが、日本国民すべてがそうした状態にならないようにしないといけません。たとえ最初の給付額が4~5万円でも命がつながる人がいることでしょう。AI・BI・CIなんて呑気なことを言っていられません。包括的現金給付制度の実現は一刻一秒でも早く実現せねばならない緊急性の高い政策です。

そして自分がプレBIとして給付付き税控除を奨める理由は、大がかりなBIよりも比較的賛同者が多いというのもあります。ここのブログサイトで橘玲氏や藤田孝典氏などといったベーシックインカム反対・懐疑論者の名前を出させて頂きましたが、彼らも給付付き税控除については意外と賛成していたります。

 [橘玲の日々刻々]
 藤田孝典氏
 biglobeニュース

あと給付付き税控除については前日銀総裁岩田規久男教授の他に、政党ですと日本維新の会、そして元参議院議員の金子洋一さんも導入を提言しておられます。
藤田孝典氏が言われるように一定の所得水準に達していなければ、審査なく給付が開始される部分的ベーシックインカムをいち早く導入すべきでしょう。

本格的ベーシックインカムの導入と既存社会保障制度の統廃合といった難しい課題は、十年後、二十年後までにかけてじっくり議論を進めればいいことです。既存社会保障制度利用者に大きな混乱を与えたくありません。

まずは月額数万円の給付付き税控除の実現を目指しましょう

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