新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

イタリア右派政党のベーシックインカムはやめた方がいい

本当はもう少し前に書かねばと思っていたことで、ベーシックインカムに関する話です。このブログが参加しているブログランキングサイトの紹介文を読んでいただいている方はご存じのとおり、筆者はベーシックインカムの導入に興味を持って研究をしていた時期があります。どちらかといえばベーシックインカム導入賛成派でした。しかしながらここ最近は導入に慎重な考えを持つようになっております。その理由はアメリカやヨーロッパなどで深刻化するインフレにあります。このインフレの原因はエネルギー資源や食糧品などの価格高騰やコロナウィルス感染拡大の影響などですが、各国の政府はロックダウン(都市封鎖)で経済活動に参加できず、所得が急減した国民や事業者に対して、空前の規模の財政出動を行いました。それは民衆の生命と生活を護るためにやらなければならない政策だったのですが、パンデミックが収束した後もその打ち止めが伸びて、結果的に過剰な財政支出となってしまったと筆者は診たてています。一度生産活動から離れてしまった労働者たちは手厚すぎた給付金や失業手当が支給されている間、復職しようとしません。感染収束後の消費意欲(ペントアップ需要)が膨張し、雇用者側が賃金を上積みしても労働者が戻らないような事態になりました。ある意味期間限定のベーシックインカム導入実験みたいなものです。

ベーシックインカム導入で考慮しなければならないのは、人々の労働意欲を失わないような制度設計ができるかなのですが、パンデミック後に起きた現実はその難しさを裏付けるような結果だったと思います。経済学者の宇沢弘文氏はベーシックインカムみたいな制度は高いインフレを招く恐れがあるので反対していたという話を聞いたことがありますが、さすがに氏が言ったことを肯定せざるえないです。


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しかしながら現在イタリアでこともあろうか、メローニ新政権の連立相手である中道右派政党「フォルツァ・イタリア」や「五つ星運動」が貧困層の票を目当てにベーシックインカム導入を掲げています。「フォルツァ・イタリア」は汚職で辞任したシルビオベルルスコーニ元首相が率いる政党です。下の記事を読みましたがイタリアでは貧困層の拡大が深刻化しており、その中で高インフレに悩まされています。

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www.jetro.go.jp

しかしイタリア全体の産業活性化と生産供給不足を解消しないまま、ベーシックインカムを導入したら、さらにひどいインフレを招くことは必至です。超短期で爆死してしまったイギリスのトラス政権並みの下手打ちとなり、決定的なベーシックインカム導入失敗例となることでしょう。かつてベーシックインカム導入に賛成していた筆者でも絶対にやってはいけないと考えます。しかしながらECB(欧州中央銀行)総裁を務め、世界的に最も偉大なセントラルバンカーとして名が通ったマリオ・ドラギ前首相を失脚させ、かなり無謀というべきベーシックインカム導入を行おうとする政党が政権の座についてしまったイタリアの行く末が思いやられそうです。

先にも述べたようにベーシックインカムは人々が働くことへのインセンティブを失わないようにするにはどうしたらいいのかという問題を解決できない限り、導入をすべきではありません。亡くなられた安倍元総理が進められていた政策「働き方改革」のようにしっかりとしたマクロ経済政策で国全体の経済活動を安定的に活発化させ、多くの就労者がよい待遇で働ける労働環境をつくっていくことが第一歩です。

パンデミックや深刻な不況によって失業した人たちに給付金や失業手当を出すだけではなく、なるべく円滑に就労復帰できるよう支援する制度を拡充していくことも大事でしょう。自助型セーフティネットを整備していくべきです。それでもなかなか就労ができない状況に置かれている人たちを漏れなくフォローするために、給付付き税額控除を

導入するという案もあります。

先ほどの宇沢弘文氏は「同じような金額を得るにしても、仕事があることで、その人が社会参画している、社会から必要とされているという実感が得られ、社会、つまり人とのつながりも同時に構築されていく」という労働観をお持ちだったそうですが、正直筆者は実際すべての就労者が宇沢氏のような労働観を持っていないし、持つことができないだろうと考えています。しかしながら事業の経営者と労働者が共に社会に貢献し、明るい気持ちで豊かな人生を創造できる社会や会社づくりについて考え、実現する努力をしないといけないでしょう。それが供給不足型インフレの解決に必須であると筆者は考えます。

 

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