新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

ベーシックインカム実現には強い経済から

ベーシックインカムの導入をどう進めるかについては賛成派の中でもいろいろ案が異なっていますが、私の方で非常に重要だと思っていることを述べると、ベーシックインカムの導入は強い経済を取り戻してからだということになります。

賛成派の中で「ベーシックインカムの導入によって、人々の消費活動が活発になって、企業の投資も伸びていく」という人がおり、そうした効果が多少期待できると私も思っていますが、それでも順番は経済を強くしてからベーシックインカムだと強調したいです。その理由は前回も述べたように、モノやサービスを生産する企業は消費者から小銭をかき集めて元手を稼ぐのではなく、資金を借りるなりして調達し、研究開発費や人手確保、設備投資、原材料費といった費用の支払いを先にします。投資はスペンディングファーストです。
不況のときの景気回復も消費の回復からではなく、投資の回復からはじまります。企業が投資によって労働者を雇用したり、賃金を多く支払うようになって、所得が増えた労働者が消費を伸ばしていくという順序です。
(「消費よりも投資」というのは意見ではありません。グラフでもわかる事実です。不景気になって落ち込むのは投資です。消費は不景気のときでも変化が小さいです。だから財務省は消費税を安定財源として狙うのです)

イメージ 2
図表

世の中に多くのモノやサービスといった財を生産し、供給する民間企業の活動を活発化させ、就労能力や意欲をもった人々が、フルで活動できる状態でベーシックインカムを導入した方が、成功率が高くなるでしょう。
イメージ 1
逆に経済活力が停滞し、倒産や失業などで多くの人々が働く自信や意欲を消失してしまっている中で、ベーシックインカムみたいな制度を導入したとしたら、反対論者が懸念するように、制度に甘えてしまう人々の割合が高くなり、制度破綻リスクが高くなります。

先にも述べたようにベーシックインカム導入による消費拡大効果はあると思いますが、経済全体の活発化を計る主要政策は企業の投資意欲を促す金融緩和政策に担わせるべきです。

ベーシックインカムを主張するのはおおいに結構なことですが、いま現実に起きている経済問題に的確な処方箋を出すことができもしない人がそれを唱えたところで、他人からただの意見やら希望としか受け止められず、お花畑の話として聞き流されるだけです。ベーシックインカムが着目されるようになった理由のひとつとして、経済軽視の傾向が強かった左派だけではなく、現在日銀の審議委員をつとめるようなトップエコノミストが、具体的数字を使ってBI案の試算を行い、実現性が高いことを立証したことが、BI実現構想への信頼性を獲得したともいえます。

私はこれまで実績を積み重ね続けた従来の経済理論にこだわり、ベーシックインカム以外のマクロ経済政策や企業の投資活動、雇用問題、社会保障問題全般に言及し続けてきました。基本的に従来理論から大きく外れるような発言をしないよう心掛けてきたつもりです。
財政赤字5000兆円で日本の国家財政は破綻しない」だの「ハイパーインフレは起きない」などという暴論を唱えるような評論家の意見に耳を貸すようなことはしません。

あと前にネット上で見つけたものですが、こんな発言をするような人がいました。
イメージ 3
この方もベーシックインカムを実現させたいと考えているようですが、こんなことを言ってしまうような人の発言を誰が信用するのでしょうか?世界中においてこれを正しいと支持する経済学者はまずいないでしょう。

現在このような暴論を吐く人がネット上でたくさんいますが、こうした状況でベーシックインカムが実現することはまずありえないでしょう。

ベーシックインカムの導入を計るにはもっと効率よくモノやサービスを生産し、日本の経済力や財政力を強化していくことが前提条件です。また制度の導入を主張する人も基礎的な経済学の知識をしっかり身に着けておく必要があります。プロの経済学者から問題や誤りを指摘されてしまうような知識レベルで、ベーシックインカムをやりましょうと言ってもお話にならないのです。トンチンカンなオレ様経済論を振りかざしているような人の発言はどの政党・政治家も無視します。

サイト管理人 凡人オヤマダ ツイッター https://twitter.com/aindanet