新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

政策の優先順位が重要~コロナ禍による経済活動低下に対応せよ~

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菅義偉政権が誕生してから早くも一か月以上経過しました。予想どおり菅内閣は様々な行財政改革案を打ち出し「仕事人内閣」に相応しい動きを示しています。

と同時にマスコミや左派陣営の政党・学者・評論家たちが安倍政権のときと同じように菅おろしを画策するような動きも活発化してきています。今ですと日本学術会議の新会員候補のうち、6人の任命を菅総理が拒否したことで「学問の自由が奪われるー」と彼らが大騒ぎしています。

正直言ってこの件について私はあまり取り上げたくありません。日本学術会議という組織は国立機関なのですが、210名いるとされるここの会員という役職は旬を過ぎた研究者の名誉職みたいなもののようです。日本には87万人にものぼる学識研究者がいるといわれますが、日本学術会議の会員はその一握りに過ぎません。ここの会員でなければ研究活動ができないわけでもないのです。この組織は国から独立して民営化させてしまうべきでしょう。この件についてはこれ以上言うことはありません。ここは政治ではなく経済問題を扱うブログサイトですのでこうした騒ぎに乗じたくないのです。

 

それよりもコロナ禍が与えた経済活動抑制の後遺症がかなり強く、そして長く引きずってしまいそうです。もう言うまでもなく多くの民間事業者が経営存続の危機に立たされ、当然のことながら一般労働者の雇用や賃金にも悪影響が出ています。あまりに不確実性が高すぎて、元のレベルまでに経済活動全体が回復するのかまったく先が読めないです。もはやコロナ禍前と同じ商業活動に戻るとは考えにくいです。企業は業態を変えるなり新たな事業に臨むなりして生き残りを懸けていくことでしょうが、それでも経済全体でいえば不況や雇用低迷が長期化する可能性がかなり高いと思われます。

となってくるとやるべき経済政策は安倍政権時代以上の金融緩和政策と積極財政となってきます。とくに後者の方を重点的に行わなければならないでしょう。金融緩和政策は企業に積極的な事業拡大と投資ならびに雇用の拡大を促したり、企業が借り入れた資金の債務負担を軽減することにあります。しかしながら今の状況は人やモノ、お金の動きが恐ろしく鈍く、生きていく上で必要な現金が行き渡らない人々が大勢溢れています。民間にもっとどんどんお金を遣え!吐き出せ!といっても不確実性が高い状況ですとそれはできなくなります。今回のように特殊なケースで、なおかつ深刻なデフレ(物価下落)不況であるならば国債や通貨発行益を活用した財政出動が可能ですしやるべきです。国債増発と聞くと「財政破綻ガー」「ハイパーインフレガー」と慌てふためく人たちが多いですが、棄損した有効需要を穴埋めする範囲であるならばひどいインフレを心配する必要はありません。

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棄損した有効需要はいったいいくらぐらいでしょうか?ここで経済学者の田中秀臣さんによる計算を紹介しておきます。

コロナ危機がはじまる2020年1月の失業率は2.4%だったのですが、もし仮にそれが1%上昇してしまうと実質GDPは約8%下落(オーカン係数8として計算)2019年の実質GDP534兆円×0.8=42.72兆円の有効需要が不足すると推測されます。(Schoo 田中秀臣最新経済ニュースより)

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計算方法が異なりますが高橋洋一さんも同じく40兆円規模の財政出動が必要であると算出されているようです。春~夏に実施した定額給付金を再度実施するといったかたちで棄損した有効需要を埋めないといけません。

いずれにしても今の時点で最も急務であるのは冷え込ませてしまった経済活動を再起動させることです。これを放置したままですと慢性的なデフレ不況の再発となり、アベノミクスで積み上げた”資産”を食い潰すことになりかねません。

おかしなことに日本の左派政党は雇用の拡大につながる金融緩和政策や金銭に困っている生活者や中小企業などに対する財政的支援の実施に積極的であるどころか、それをやろうとする与党の足を引っ張っている有様です。就職氷河期で辛酸をなめた若年層~中年層たちは自分たち生活者の方を向かずに内向きな反権力闘争ばかりにのめり込む日本の左派政党に対し失望しているのです。

あと最近起きた騒動で竹中平蔵氏のベーシックインカム炎上騒ぎがありましたが、これについても恐ろしく反知性的で情けないものでした。「社会保障制度全廃や緊縮目的で竹中平蔵ベーシックインカムを唱えている」と煽動した連中だけではなく、それに対し「国債や通貨発行益を財源にして反緊縮型ベーシックインカムをやればいいのだ」などと向かっていった人たちもどうしようもありません。実は両方とも同じ穴の貉で数字や帳面を見ることが大嫌いな人たちです。

基礎知識編のブログでも再度書こうと思っていますが、コロナ危機やリーマンショク、大規模な自然災害などといった非常時においてはベーシックインカム導入の議論よりも実質サイバー歳入庁としての機能が期待できるデジタル庁の創設によって緊急時の現金給付を迅速に実施できるシステムづくりを議論すべきではないでしょうか。それはベーシックインカム導入にも生かせることですが、これには既存の社会保障制度の改変を余儀なくされます。竹中炎上騒ぎみたいなことが起きてしまうようでは冷静に社会保障制度改革の議論ができそうもありません。ならば既存の社会保障制度を弄らずに済む財源規模の給付付き税額控除を導入した方が賢明ではないでしょうか。そういう議論が進まない世相に呆れるばかりです。

日本学術会議問題やら竹中ベーシックインカム炎上騒ぎとかに乗じてしまうような人たちは自分からみてみると物事の優先順位のつけ方ができていないのかなと思わざるえません。急いでやらなきゃいけない問題=コロナ経済苦境への対処を放置しておいて、いまの時点ですべきではない問題に目を奪われてしまっているように見えてしまうのです。

菅政権もかなり大がかりな行財政改革をいくつも打ち出していますが、これらもまた成果を出すのに少なくとも数年以上かかるでしょう。行財政の効率化と公正化・最適化は納税者の税負担軽減や税還元の最大化につながりますが、それはマクロの経済活性化=GDP増大に直結するものではありません。菅内閣がいま第一に行うべきミッションは行財政改革ではなく財政金融政策です。

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