新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

コロナ危機と自殺の関係

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NHKニュースで「8月の自殺者 大幅増加で1800人超 コロナ影響か分析へ」という記事が流れました。

www3.nhk.or.jp

 

ニュース抜粋

8月、全国で自殺した人は合わせて1849人で、去年の同じ時期より240人以上増えたことが分かりました。国は新型コロナウイルスの感染拡大の影響がないか、分析を進める方針です。

警察庁によりますと、8月全国で自殺した人は速報値で1849人で、去年の同じ時期に比べて246人、率にして15.3%増加しました。

このうち、男性は60人増えて1199人、女性は186人増えて650人となっています

 

このニュースを見て直感的に「コロナによる倒産・廃業や失業の増加で経済的困窮状態に陥ってこれだけの人が自殺したんだろうなあ」と思う人が多いでしょう。「政府はもっと財政出動をして困っている人たちを助けてあげないといけないじゃないか」とか「コロナ自粛を早く解除しなかったから経済的理由による自殺者が増えたんだ」という声がいくつも出ています。

しかしことはそう単純でないと私は見ています。日本において感染拡大防止のための緊急事態宣言が発令された4月~5月までの間ですが、このときは逆に自殺者が大幅に減少しています。それともうひとつ注意すべきは男性より女性の自殺者増加が目立っています。ニュースには出ていませんが年齢層も確認しないといけません。

経済学者の飯田泰之さんはこのニュースについてツイートをされています。

 

 さらに飯田さんは次のツイートもリツイートされていました。鬱病になった人の自殺はいちばん症状が重いときではなく、そこから脱しかけているときだという話です。

 

 巨大災害や戦乱がもっともひどい混乱期は自殺者が急減します。自分の母親は戦時下で幼少期を過ごし、B29による空襲の中で逃げ回った経験しています。とにかく自分の命を護ることが精一杯だったといいます。あと大怪我をした経験を持つ人ですと受傷したときはさほど痛みを感じなかったけれども、しばらく経つと激痛が襲ってきたという話をすることが多いです。自殺にはそうしたタイムラグがあるということを頭に入れておかねばならないでしょう。とにかく失業増加などの経済的事象と自殺を単純に直接結び付ける議論がなされがちですが、自殺に関する諸データの精査しないと的外れなものになってしまうかも知れません。

 

もうひとり経済学者の田中秀臣さんがコロナ危機と自殺に関して仰っていたことを紹介しておきましょう。

引用

田中秀臣なぜ日本社会は戦前から自殺者数が多いのだろうか。

tanakahidetomi.hatenablog.com

 

田中さんはブログの文中で次のような注意を促します。

自殺者数と景気悪化を単純に結びつける論者やネット匿名が多いが、僕はこの新型コロナ以降、注意を再三促しているように、景気悪化そのものが自殺者数の増加をもたらすのではなく、その景気悪化を放置したりさらに加速させる経済政策の失敗が生み出す。この理解に乏しい人はこの問題を語る資格がない。

 天災や激しい経済ショックだけが自殺増加をもたらすのではなく、誤った経済政策で人々をさらに経済的苦境に追い込んだり、絶望感を抱かせることで自殺が増加するということです。

そしてこのブログ文の冒頭で緊急事態宣言が敷かれていた4~5月に自殺者が急減したのは多くの人々が日頃軋轢の多い企業や学校に行かなかったためであると述べております。表題で「なぜ日本社会は戦前から自殺者が多いのだろうか。」とありますが、その後「組織(企業、学校など)の日本的な在り方に大きな欠陥があるのだろう」と続けています。

緊急事態宣言と自粛要請で多くの勤め人たちは歪んだ職場から一時的に離れることができ自殺の原因となるようなストレスに晒される機会が減っていました。もうひとついえば休業や離職に追い込まれてしまった人たちは休業補償や失業保険給付などの公的な補償や保障を受けています。しかしながら緊急事態宣言や自粛要請が解除され、抑止されていた社会活動が再開されると、再び様々な社会的軋轢やストレスが圧し掛かることになります。鬱病でない人でも日曜日の夕方に起きる「サザエさん症候群」みたいな経験をされた方がいるでしょう。

上の飯田さんが仰っている疑問点とあわせて考えると、自殺で最も注意しないといけない時期は回復期と社会復帰の段階であるということかも知れません。さらにいえば公的支援が打ち切られるタイミングもそうです。この段階は復帰後の不安感や焦りが募りやすいです。社会復帰への自信をつけるための心理的サポートも必要となってくるのではないでしょうか。

あと田中さんのブログ記事では家庭内暴力、ネグレイト、児童虐待若い人たちのセックスに関する悩みやトラブルがコロナ自粛下で増加している点も指摘されています。さらに保育所の休園によって家庭内で未就学児を抱えなければならない状態になってしまった保護者たちの6割が強いストレスを感じ、うつ状態に陥っているというニュースも引用されていました。

新型コロナウイルスの影響で、未就学児の保護者のうち6割近くが強いストレスを感じ、国際的な指標に照らすとうつ病の検査を推奨される状態だったという東大大学院のアンケート結果がまとまりました。

 

先に私が述べたように8月の自殺増加は女性の増加が目立っています。私的領域における問題が女性の自殺増加につながっている可能性を疑ってみる必要があるでしょう。

 

どちらにしても飯田さんが仰るように8月の自殺増加の原因ははっきりしない点が多いです。厚生労働省警察庁から自殺動機や年齢層などのデータが公表されるのを待たないと検証ができません。


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新政権はコロナ危機から立ち直るための経済ビジョンを示せ

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安倍総理の辞職発表に伴い、早速次期自民党総裁及び総理の選出を巡ってあわただしくなってきました。岸田文雄氏や石破茂氏、河野太郎氏などが次期総裁選に名乗りをあげましたが、最有力候補はこれまで官房長官として安倍総理に最も近い立場で支えてこられた菅義偉氏です。

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マクロ経済政策に関心が高い者にとって、信頼できる総裁選立候補者は菅氏以外に見当たりません。政権の足を引っ張り背後から銃で撃つような背信行為を続けた石破茂氏は論外ですが、「御公家集団」といわれる宏池会に属する岸田文雄氏や河野太郎氏は財務省の影響を強く受けすぎて財政規律偏重主義になっている嫌いがあります。河野氏は外交や防衛、行政改革の面で力を発揮し非常に有能な政治家だと私は思っていますが、経済政策だけはダメです。私がこれまで申し上げてきたように現在コロナ危機で多くの民間事業者が過大な債務負担を背負わざるえなくなっていますが、その負担軽減には補助金など財政政策だけではなく、金融緩和政策も不可欠です。残念ながら岸田・河野・石破の三氏はその理解が極めて薄いです。金融政策の重要性をしっかり理解できているのは菅氏ただ一人です。総裁選出馬表明の記者会見の場でもそうした主旨の発言が出ています。

 

現在アベノミクスは失敗したとかいや成功していたとか言ってマスコミや評論家たちが騒いでいますが、コロナ危機で傷んだ民間経済の再生はまったなしの問題で、そのためのマクロ的(全体的)な経済政策案をいち早く準備しないといけません。

 

コロナ危機下でのマクロ経済政策で思い出していただきたいのは、2020年4月1日にIMF(国際通貨基金)のウェブサイトに掲載されたコラム記事「新型コロナウイルスと戦うための経済政策」です。

www.imf.org

上のコラム記事はこのブログの「コロナウィルスという敵と闘う戦士たちを支えるロジスティクス」「感染防止優先か、経済優先かの二分法ではいけないコロナ対策」という記事でも紹介しました。

 

IMFのコラム記事に戻りますが、そこではコロナ危機に立ち向かう経済政策を2つのフェーズ(段階)を区別する必要があると述べています。

記事を引用しますと

フェーズ 1:戦争中。感染症が猛威を振るっている時期。人命を救うため、感染拡大防止措置によって経済活動は大幅に制約される。これが少なくとも1~2四半期続く可能性がある。

フェーズ 2:戦後の回復期。ワクチンや治療薬、部分的な集団免疫、そしてやや緩やかな感染拡大防止措置を継続することで、感染症は制御されている。制限が解除され、経済は途中で足踏みをするかもしれないが、正常な機能を取り戻す。

 と説明されていました。フェーズ1は医療になぞらえると救急医療や外科手術などの急性期措置で、フェーズ2は機能回復訓練(リハビリテーション)に相当するでしょう。

日本の場合はアメリカやヨーロッパ諸国のように都市封鎖(ロックダウン)や外出・営業制限などといった厳しい抑制を行わず、比較的緩い営業や外出、集会などの自粛(政府や自治体からの要請)だけでフェーズ1を乗り切りましたが、それでも飲食店や旅行関係、興業をはじめ多くの民間事業者が深刻な経営危機に陥っています。感染拡大防止措置は人と人の接触が避けて通れない経済活動を抑制しないといけません。両者は相反しており両立ができないのです。フェーズ1の政策は心臓外科手術でいいますと一時的に心肺停止にし、人工心肺で患者の生命を維持するようなものであり、営業停止や自粛中の事業者とその従業員などに政府が補償金を出すといった内容でした。日本ですと企業への持続化給付金、個人ですと国民1人当たり10万円の定額給付金交付といったものです。とにかく営業や外出、集会などの自粛中に民間の事業者が倒産・廃業したり、そこに勤めていた従業員が失業してしまうような事態を最小限に食い止めることが必要でした。

今年初頭から夏までにかけてコロナ感染拡大の波が二度ありましたが、第2波も2020年9月現在収束傾向にあります。とりあえずもっとも感染症の猛威がひどい状況を脱したとみていいでしょう。安倍総理が辞職を決意し次の政権に交代してもらう決断を下した理由のひとつは感染症拡大がひとまず落ち着き、フェーズ1の政策が一段落したことではないかと思われます。フェーズ2の政策は次の政権に譲るということなのかも知れません。

今後はフェーズ1で抑制していた経済活動を段階的に再開させ、この間弱ってしまった民間経済を再活性化させていく必要があります。残念ながらフェーズ1で日本においても多くの民間事業者が経営存続を断念し廃業を決めたり、倒産に追い込まれました。現在持ち堪えている事業者もまだ不確実性の高い状況の中で、これまで積み上げてきた繰越剰余金(内部留保)を切り崩しながら辛うじて食いつないでいるといったところが少なくありません。

 

フェーズ2の経済政策で必要なことは何でしょうか。2点あります。

いま辛うじて生き残っている民間企業が、この危機を脱すれば再び業績を回復させられるという見込みや期待をつくることです。それには政府と中央銀行が金融緩和政策による資金的支援と積極財政政策による需要喚起をしっかりやるという強いコミットメントとその実行です。金融緩和政策の縮小をちらつかせたり増税を含めた緊縮財政を臭わすようなことはもっての外です。

もう一点はやむを得ずコロナ危機で事業を畳んだり、それが理由で離職してしまった人たちの再起を支援することです。事業を再興させるには事業者が再び大きな投資をしないといけません。あるいは今までになかった新しいビジネスに挑戦しようとする起業家も今後出てくるでしょう。それを手助けするのは金融緩和政策です。

これも投資のひとつとなりますが、転業や転職のための資格や職能を獲得するための就学や職業訓練も欠かせないでしょう。

さらにフェーズ2の対策へ移行するといっても、まだ家計、企業、金融部門を支援するための流動性対策(信用供与、金融債務の繰り延べ)と支払能力対策(実物資源の支給・移転)を継続し続ける必要もまだあります。

 

下 IMF新型コロナウイルスと戦うための経済政策」で添付されていた図表

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 企業や個人が不足する現金の借り入れやその金利負担が重くならないようにする金融政策上の配慮と補助や給付金の交付といった財政政策の配慮を当面しつづけないといけません。

まだ民間企業や個人が深刻な経済危機に置かれているにも関わらず、政府の財政問題や日銀の国債や株式等の資産買い入れ膨張を懸念する人たちが多くげんなりしますが、ここで政府や日銀が金融政策と財政政策を通じた支援の手を抜くと、民間の経済活動は復旧・復興が困難となり、需要不足だけではなく生産・供給力の劣化や腐食が進む恐れが出てきます。IMFコラムでも「会社が倒産すれば、組織的なノウハウが失われ、有意義な長期的プロジェクトに終止符が打たれる。」とサプライサイドの腐食を懸念する文言が記されています。

 

コロナウィルスは心筋肉の炎症を引き起こして心臓の働きを衰えさせるという後遺症を与えてしまうことが多いのですが、このウィルスの蔓延は経済活動の心臓部というべき民間企業や就労者たちの職能まで壊死させようとしています。企業倒産・廃業はまさに心筋の壊死であります。ウィルスの感染に耐え生き残った心筋が必死に頑張って心臓を動かし続けるような状態が、ポストコロナの経済でしょう。

政府や中央銀行は生き残った心筋がこれ以上弱らないようにし、少しでも活発に動くようにしていかないといけません。

 

 今後の日本経済の見通しですが、コロナ感染危機が完全に収束したとしても、この数ヶ月間で傷みや腐食が進行してしまった民間経済が簡単に立ち直れず、L字型の推移を辿る可能性が高いです。IMFに在籍した経済学者のオリビエ・ブランチャード教授は供給側の不足と同時に需要側も低下しデフレ不況に陥るというディスオーガニゼーションを懸念されていました。

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 田中秀臣教授がオリヴィエ・ブランチャード教授の発言を解説するために作成したAD-AS分析図

 

 このような事態を少しでも避けるために民間活力の保全とその再生が望まれます。

 

 現在自民党総裁選挙立候補者の中でこうした経済政策ビジョンを描ける人といえば菅義偉氏以外にいないと申し上げてきましたが、財務省と日銀、金融機関の御用学者やマスコミなどの妨害を巧みにかわしていかねばならず、相当な政治的腕力や胆力が要求されます。本当であれば消費税についても減税を検討すべきですが、菅氏も現在のところそれは否定的な見解を示しています。100点満点とはいかずとも、2013年以来の金融財政政策を引き継ぎ、それを発展させてくれることを期待せずにはいられません。

 
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金融政策の意味を理解できない日本人 ~アベノミクス批判はどれも的外れ~

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今月8月26日に安倍総理の連続在職日数が大叔父だった佐藤栄作政権を抜き、2799日を超えたばかりですが、それから2日後の28日夕方に総理が辞意表明を致しました。私がリーマンショックの打撃を受けて間もない10年ほど前より経済問題に強い関心を抱くようになり、著しく停滞していた日本経済と産業の再生策としてリフレーション政策の導入を望むようになりましたが、この経済政策導入をして下さったのが安倍総理です。そういう意味で総理には深い感謝の気持ちでいっぱいです。

安倍政権発足後に黒田東彦日銀総裁体制になってから、これまでの白川方明総裁時代まで頑迷といっていいほど拒絶されていた量的金融緩和政策の再導入(小泉政権・福井日銀総裁時代に導入されていた)やインフレターゲットの導入が実施され、アメリカのFRBに匹敵するほど大胆な金融緩和政策が実行されます。アベノミクスではこの異次元の量的質的金融緩和政策を第1の矢に位置づけ、第2の矢として積極的財政政策、第3の矢として規制緩和などの産業活性化策が盛り込まれます。リフレーション政策とは第1と第2の矢である金融緩和政策と積極的財政政策を駆使して、民間の経済活動を再活性化し、最終的に長期経済低迷とデフレ(持続的物価下落)状態からの脱却を目指すものです

 

今回の記事は2013年から7年以上に渡って続けられたアベノミクスとその理論的背景となっているリフレーション政策の総括を行います。

結論を先に申しますと前回記事で書いたように2013年から2018年までは異次元金融緩和政策が奏功し、民間の投資と雇用がしっかり伸びました。ただし2018年以降からその失効が目立ちはじめます。

民間投資とは企業の研究開発や生産設備の増強、資材費の調達、人材確保と育成に関する投資と住宅や教育など個人が行う投資に相当しますが、企業の投資と事業拡大意欲が新卒者求人倍率の増加や失業率低下などに結びつきます

 

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NIPPONの数字「法人企業統計 設備投資 年次」より

 

金融緩和政策は民間投資と雇用を促すのが目的であり、その効果が5年間しっかり出ていたことは否定できません。教科書どおりの動きでした。ですのでアベノミクスは効果がなかった」とか「アベノミクスは失敗だ」などというのは大きな間違いです

しかしながら金融緩和政策による民間投資と雇用改善効果は2018年以降から息切れ感が目立つようになってきました。あと当時から指摘されていたことですが、消費の活性化やそれを顕すデマンドプル型の物価の上昇が乏しいまま2019年秋の消費税率10%増像と2020年のコロナ危機を迎えることになってしまったのです。「消費なき景気回退」「物価上昇なき景気回復」でした。その原因は今後丁寧に検証する必要がありますが、金融緩和政策は割りとしっかりやったけれども、財政政策を渋り気味で、2回に渡る消費税の増税を行うなど政策のバランスの悪さが失効につながった可能性があるでしょう。金融緩和政策と財政政策の足並みが揃っていなかったと言えます。

 

問題の2018年ごろに書いた自分の過去のブログ記事を読み返してみます。

2018年1月20日恒常所得向上が消費活発化の肝 ~アベノミクスが残している宿題 その2~

2018年1月28日 「なぜ物価がなかなか上がらないのか? ~アベノミクスが残している宿題 その1~ 」

2018年1月31日 「リフレは継続なり ~「アベノミクスとリフレーション政策」編最終回~

 

2019年12月17日「リフレレジーム(政策枠組み)について考える

2019年12月19日「金融緩和政策と積極財政政策はなぜ同時にしないといけないのか

 

2018年初頭から自分はアベノミクスがはじまった後も消費がなかなか活発にならない問題について考察を行っていました。

予想物価上昇率2%のインフレ目標というコミットメントと量的金融緩和(準備預金をたくさん積み上げて金利が上昇しないようにしてしまう)によって、民間企業は長期間日銀は低金利政策を続けるという予想や期待を持つようになり、積極投資と雇用拡大を進めました。このように黒田東彦日銀体制は企業の予想や期待を転換させることに成功したのですが、一般消費者の予想や期待がなかなか変わらなかったのです。

多くの労働者や国民個人は自分たちの所得が増え続けるという予想や期待ができなかったために、わずかな雇用回復や賃金上昇があったぐらいでは簡単に財布の紐を緩めようとしなかったと思われます。となってくると消費意欲活発化によるデマンドプル型のインフレがなかなか発生しません。やがて企業側もインフレによって自社の利益が増えるという予想や期待が持てなくなり、投資や雇用拡大を手控えはじめます。それが起きたのが2018年ごろでした。思えばこの当時、深刻な人手不足と云われながらも相変わらずデフレ圧力が強くて企業の収益率が改善せず、人件費負担が圧迫していた可能性があります。そのため企業はやむを得ず比較的低賃金で、解雇もしやすい外国人労働者を雇おうとしていたのかも知れません。不況と雇用再悪化の前触れだったように私は思い返します。

 

この問題を指摘していたのは私だけではありません。異次元金融緩和を進めていたひとりである元日銀副総裁の岩田規久男さんも2019年に伸び悩む消費を問題視し、消費税10%率増税に反対すると共に、若い人たちへの再分配政策の必要性を提言されていました。上の自分のブログ記事から1年後のことでしたが「我が意を得たり」と思ったものです。

2019年5月29日「ベーシックインカムや給付付き税控除は消費回復の切り札か?

 

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あと時評編のブログ記事ですが、経済学者の飯田泰之さんが書かれた記事をもとに「消費なき景気回復」の謎 ~所得と消費の伸びの不一致~」という文章も書きました。飯田さんによれば2018年ごろからやっと雇用の回復だけではなく賃金上昇と所得増加も見られるようになったけれども、消費性向がじりじり低下して2018年から2019年で1割も減ったと言います。しかも中~高所得者層の消費性向が鈍ったのです。

 

私は上のブログ記事やツイッター

「自動車のエンジンでいえばターボなどをつけて吸気の効率を一生懸命あげたけれども、排気側がうまく流れず”糞詰まり”状態になっているのが、いまの経済である。」

と形容しました。この場合吸気が投資で排気が消費です。

 

自分は常々このブログで「景気回復は消費ではなく投資の回復からはじまる」という説明を繰り返してきましたし、その主張は変わりません。しかしながら2018年ごろの時点でもっと消費側の回復とそれに伴うインフレ目標2%の達成と完全なデフレ脱却をいかに目指すのかという議論をもっとしっかりやるべきだったとも考えています。

 

私だけではなく先の岩田規久男さんや同じくリフレ派の経済学者である田中秀臣さんらは金融緩和政策と並行して財政政策側の拡大や消費者側への配慮も積極的に訴え続けられていましたが、安倍政権側ではいまいちそのような議論が活発にされていたようには見受けられませんでした。安倍総理自身は内心もっと財政政策も積極的にやりたがっていたのかも知れませんが、自民党内や財務省からの緊縮圧力が強く、思い通りの手が打てなかったのかも知れません。今年のコロナ危機対策で行われた国民全員への10万円一律給付も元々安倍総理らは最初からそれをやりたかったが、他の自民党議員らに阻まれ簡単に実現しなかったともいわれています。

 

安倍総理が辞任を表明された直後からマスコミや金融緩和政策を妨害し続けてきた財務省・日銀・金融機関御用学者らが一斉にアベノミクスは不発だったとか、何も成果が得られなかったなどという記事がバラ撒かれていますが、彼らはただ物価目標が達成しなかったから失敗だとか、雇用回復は偶然だったなどと言うだけで、今後いかに日本の経済を再生させていくべきかという具体的な処方箋を何ひとつ示していません。民間企業に産業構造改革とかイノベーションをやれと押し付けるだけです。私が書いてきたように、消費がなぜ伸び悩み「物価上昇なき景気回復」とか「消費なき景気回復」に留まってしまったのかという考察を一切やっていないのです。そしてその反省や改善がないままポスト安倍政治がはじまろうとしています。恐らくコロナショックで打撃を受けた日本の経済は鈍い回復のままL字型経済になっていくことでしょう。

 

次の総理が誰になるのかまだ決まっていません。現時点で自民党総裁選挙出馬の意向を示している人のなかで、金融緩和政策の意味をきちんと咀嚼できていると思えるのは安倍政権の官房長官を務められてきた菅義偉さんぐらいです。

 

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コロナショックによって多くの民間企業やそこで働く従業員、そして個人事業主たちが所得急減と資金繰り悪化に苛まれ、泣く泣く永く続けてきた事業を畳んだり、職を失う危険に晒されています。政府と日銀はさらに積極的な金融緩和と積極財政を行い、民間事業が一気に衰弱してしまうことを防がねばならないのです。民間事業の再生に金融側の支援は不可欠です。もし仮にこれまでの金融緩和を打ち止めにするような動きが政治側から出ますと、民間企業はさらなる事業と雇用の縮小に走るでしょう。就職氷河期も再び訪れ、日本という国から安定や安心が失われます。

 

経済活動全体から見たら一部門に過ぎない国家財政や自分たちの出身母体である金融機関の収益しか視野に入っていない財務官僚・日銀出身者・金融機関系エコノミストたちが、日本経済を支え続ける民間事業者をこれ以上蔑ろにすることは許されません。金融政策の重要性を深く認識した政治家がもっと増えていくよう、有権者は促していかないと、この国はかつての社会主義国家が歩んだ末路を辿ることでしょう。

 

半藤一利氏は日本は40年おきに隆盛期と衰退期を繰り返すといってきましたが、氏の説が正しければ1990年から数えて今後まだ10年間「滅びの40年」へと日本は転がり堕ちていきます。残念ながらいまの政界や財務省、日銀、マスコミ、そして国民をみていると半藤一利氏の説が正しいように見えてなりません。

 

 


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金融政策の意味を理解できない日本人 ~アベノミクス批判はどれも的外れ~

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 (今回の記事は基礎知識編ブログで安倍総理が辞任を決意される前の2020年8月26日に公開したものを転載しました。)

 

以下本文

今月8月24日に安倍総理の連続在職日数が大叔父だった佐藤栄作政権を抜き、2799日を超えました。

私は心よりそのことを祝福すると共に、これまでの数えきれない功績を賞賛したいと思います。これだけの長期政権を実現できたのは私が最も大きな関心を持っている経済政策をはじめ、外交や防衛、在職中何度となく襲った災害などの危機対応の場面において、非常にそつなく対処できたことが理由として大きかったでしょう。バランス感覚の良さは佐藤栄作氏に通ずるものがあります。ここ最近はコロナ禍対策で休む間もなく激務に追われ、満身創痍といった感じに見えていましたが、現時点において安倍総理に代わるだけの逸材が与野党共々見当たらず、まだ当面現政権にこの国の舵取りを委ね続けねばなりません。先日慶応大学附属病院で健康検診を受けられたとのことで体調が気がかりですが、総理の健康を願わずにはいられません。

 

この件に付随して各マスコミが安倍政権の経済政策について相変わらず「アベノミクスは不発に終った」だの「デフレ脱却にはならずインフレ目標が達成できなかった」だのといった論評を出していたりします。アベノミクスの土台となったリフレーション政策とその主軸のひとつである異次元金融緩和政策は効果がなかっただの、副作用を起こすなどといった有害論についてはこのブログで間違いを指摘してきました。特定の経済動画に対する批判記事ですが、日本のガラパゴス化した財務省・日銀・金融機関系御用学者(自分は金融社会主義トロイカ体制と名付けている)やマスコミなどに向けたものでもあります。

 

 「頓珍漢すぎる金融緩和政策批判 その1 ~ほんとうの金融緩和政策の目的~

 「頓珍漢すぎる金融緩和政策批判 その2 ~流動性の罠に陥ると金融緩和は効かない?~

 「頓珍漢すぎる金融緩和政策批判 その3 ~雇用回復は金融緩和の効果ではないだと?~

 「頓珍漢すぎる金融緩和政策批判 その4 ~出口戦略の失敗による危険はあるのか?~

 「頓珍漢すぎる金融緩和政策批判 その5 ~産業構造改革だけでは民間企業は育たない~

 

もう何度か申し上げてきたことですが

金融緩和政策の目的は民間企業の投資や事業の拡大を促し、それに伴って雇用を最大化させることです。

 

あるいは

企業や個人に積極的にお金を遣わせ、お金の循環をよくする政策

といってもいいでしょう。

よく企業の内部留保がやり玉にあげられますが、金融緩和政策は企業が貯め込んでいるお金を事業拡大のために遣わせ吐き出させることでもあるのです。

異次元金融緩和の目的は物価を上げることだとか、株価を吊り上げることではありません。それは目的ではなく手段のひとつです。

 

金融緩和政策の効果があったのかなかったのかは一枚のグラフを見ればわかります。企業投資です。

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リーマンショックで企業投資がどん底にまで下がります。そこから民主党政権時代はずっと横ばいでした。安倍政権が発足した2013年にグラフの線が上がっていきます。

 

投資が伸びる→人への投資である雇用も伸びる

 

でしたね。

 

2013年から2018年までの間は民間投資と雇用が堅調に伸び続けていました。「アベノミクスは空振りだった」とか「不発だった」などという人はまともに統計を読んでおらず、金融政策の基本のきの字すら知らないのです。

 

何かことあるごとに金融緩和政策無効論とか有害論が出てきますが、その度ごとに日本人の金融政策に対する理解度の低さに絶望感を抱かざるえません。

 

銀行から融資を受けて会社を興したり、新しい設備や店舗、人材確保のために多額の資金を投じている経営者の方ならば金利が気になりませんか?日銀が金融緩和をやめて政策金利を上げていったとしましょう。金利の支払い負担が当然増えますよね?これで新たに店舗を増やすとか人材を獲得するとかできますか?

高い金利支払いの負担に耐えるためには利益率を高くしないといけません。自社が販売する商品の付加価値を高めて利潤を増やすことができれば御の字ですが、消費者の低価格志向が強いままの状態ですと高付加価値型のビジネスモデルを構築するのは難しいです。デフレ指向が強い日本の消費者ではなく海外の富裕層をあてにしたビジネスを拡大しようという動きがありましたが、コロナ危機でそれが吹っ飛びました。

薄い利益の中から高くなった金利を支払い続けるのはかなり重い経営負担です。結局投資抑制や人件費などのコストカットを推し進めないと会社の経営維持が不可能になってきます。

 

立憲民主党枝野幸男氏とかはこういうことをまったく理解していないので、平気で「金利を上げると経済成長する」などと発言してしまったりするのです。この人は金利引き上げで労働者の賃金が下げられたり、リストラが進められてもいいというのでしょうか?旧民主党系の議員のほとんどは基本的な経済学の知識がプアです。(金子洋一さんや馬淵澄夫さん、最近の細野豪志さん、長島昭久さんなどを除く)

日本の左翼政党は金融緩和政策の意味がわからないので、企業に内部留保税を課すとか所得税法人税を重くしてお上が企業からカネをまきあげ、国民にバラ撒けばいいということしか言えないのです。左派系野党だけではありません。三橋貴明とかもそうです。こういう国家社会主義発想は北風理論です。逆に金融緩和政策は太陽理論です。

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基本的な金融政策の意味を理解させないのは日本の経済教育の大きな欠陥です。日本でいう主流派経済学者は金融政策を軽視しています。ですので政治家の主張とかネット上での議論なんか読んでも金融政策の話をする人なんかあまり見かけません。「もっと財政支出を増やせー」あるいは「財政規律を守れー」とか規制緩和やら構造改革の話ばかりです。日本には財政偏重主義者か構造改革主義者しかいないのです。

 

ケインズ主義を単なる財政のバラ撒きとか公共事業拡大みたいな文脈で日本に伝わってしまったのはマルキスト都留重人の影響が大きいと云われています。彼らが書いた中学や高校の公民教科書を読んで多くの日本人は育ってきています。

 

 

 

 

 

 

ネット上でリフレ派を名乗るアカウントなんかも金融政策をきちんと自分の口で説明できる人は僅かです。ただカネをたくさん刷ってバラ撒くのが金融政策だと勘違いしている人間が多いです。そうした人間の多くはMMT(現代貨幣理論)に被れて「カネ刷れ~カネばら撒け~」ばかりを言っています。

 

「金融緩和政策は効果がないのダー」という人は「もう日本の民間企業経営者は積極投資で事業拡大をしようとしない」「もう日本の民間企業はこれ以上伸びないのだ」と言っているも同然です。企業は経営を存続し続けるかぎり、呼吸をするかのように投資をし続けます。民間企業が投資しなくなるといことはその会社が事業を畳むか経営破綻をしたときです。企業が投資しなければわたしたちのお給料も支払ってもらえなくなります。企業が投資をし続ける限りにおいて金融緩和政策が完全に無効になることはないです。

 

もし仮にほんとうに日本の民間企業が投資や事業拡大の意欲を完全に失い、金融緩和政策の効果がなくなったのであれば残された道はただひとつです。

日本を社会主義化するしかありません!

 

もしくは井上智洋さんが提案しているように銀行の信用創造停止とか公共貨幣(政府貨幣)化を計り、会社勤めして給料をもらうのではなくベーシックインカムで国民全員にお金を配って経済活動を維持するしかありませんね。AI・BI・CIとか言ってwww

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冗談はさておき、日本が金融政策をひどく軽視してきたことが1990年代以降の日本企業や産業の停滞を招いています。

三重野康日銀総裁がバブル退治だといって公定歩合(いまの政策金利)を一気にあげてしまい、民間企業は事業にお金を注ぎこめなくなりました。それ以上に資金繰り悪化や銀行による貸し剥がし貸し渋りによって倒産に追い込まれた企業がたくさんあります。

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バブル期は新しい商品の開発に研究費をたくさん注ぎこむことが許されていましたが、三重野日銀による金利急騰によってそれができなくなっていきます。1997年以降は本格的なデフレ不況がはじまって名目金利をゼロに下げても民間投資が伸びなくなるという状況に陥ります。あとから金融緩和をしても民間企業がたくさん潰れて資金需要も小さくなってしまったのです。

 

1990年代に日銀が犯した金融政策のミスによって、1980年代までは世界的にもトップクラスの国際競争力を誇った日本の民間企業や産業がみるみると衰弱していきます。2010年代に日本は中国に国内総生産世界第2位の座を明け渡すことになりました。2013年からアベノミクスが始まるのですが、もしこれがなければ日本の主力企業が中華資本に買収され、経済的占領をされていた可能性があったかも知れません。(事実アベノミクスが始まった前後に中国が難色を示していました)

 

日本が金融政策に冷淡なのは、この国が社会主義的であるというような気がしてなりません。民間のボトムアップで経済を強くするという発想が弱いのです。金融緩和に反対し続けた勢力は民間の経済力を削ぐようなことばかりをしようとします。日本の民間企業を根絶やしにするのは簡単なことです。日銀が金利を爆上げするだけです。そうなった後は公営企業がモノやサービスの生産をし、雇用はJGP(雇用保障制度)で維持するしかないでしょう。

 

私から見たら金融緩和を妨害し続けてきた人間こそ、日本の社会主義化を目指しているんじゃないかと思えてなりません。

 

と、今回は金融緩和・リフレ無効論に対する批判をしてきましたが、2018年あたりからアベノミクスが崩れ出してきたことは否定できません。次回は正しい?アベノミクス批判を試みてみます。

 


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中華主義に乗っ取られたグローバル社会と経済 ~恣意主義と不確実性は資本主義・自由主義経済を壊す~

 前回に続き中国共産党批判をします。

metamorphoseofcapitalism.hatenablog.com

 

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中国共産党という組織は今、資本主義経済と自由主義そして民主主義を破壊しようとしています。この国家と組織は世界中を不確実性という危機に陥れ、さらに恣意主義や強権主義、恐怖政治で世界を支配しようとしているのです。資本主義・自由主義経済と民主主義という近代社会システムにとって最大の危機といっていいかも知れません。

グローバル社会とかグローバル経済という言葉を否定的に捉える人が多く、今回のコロナ禍もその弊害であるという見方をする論者がいたりします。また日本の場合ですと(新)自由主義を強欲な拝金主義とか弱肉強食の競争至上主義みたいな捉え方をしている人も大勢います。しかしながら私はそう考えません。いまのわたしたちの豊かで自由な生活は資本主義経済と自由主義経済そして民主主義によって支えられたものです。その3つが世界的普遍思想やシステムすなわちグローバル・スタンダードとなっていくことで平和と安定をもたらしているのです。私たちにとってそれが空気のような存在となりありがたさを忘れてかけていました。

現在グローバル経済や社会が中国政府の露骨なまでの覇権主義中華思想に乗っ取られようとしています。アメリカのトランプ大統領や中国に靡いていた他の欧州諸国の政治指導者たちまでもが、中国政府の邪悪さや危険性に気がつきかけました。中国と取引してきた国々や企業はこれまで莫大な富を得てきましたが、コロナショックでそれが完全に吹っ飛んだようなものです。さすがに目を覚ますでしょう。さらに他国も自分の主権下に入ると宣言したような香港国家安全維持法制定で、ますますどん退きしたと思われます。

別のブログで書いたことですが、経済活動における最大の危機は不確実性であり、中国政府はそれをコロナウィルスと共に世界中に拡散しました。

人類最大の敵(?)=不確実性が無限大のコロナ危機

ameblo.jp

ありとあらゆるモノやサービスの生産や販売活動を行う上で重要なことは予想や期待です。生産計画や販売計画、そして経営計画は将来何がどれだけ売れるのか?経済情勢や社会情勢がどう変化していくのかという予想や期待に基づいて立てられるものです。多くの企業は経済危機や事故ならびに災害の発生に遭遇するリスクを見込んで設備や雇用といった投資の判断をするのですが、不確実性はリスクのように確率計算すらできないような不測の事態です。いまのコロナ危機は昨年2019年末の時点まで発生が予想できないものでした。企業や個人にとって先行きがまったく見えず、思い切った投資や消費が非常にやりにくい状態です。

企業や個人店舗はたとえ政府が営業自粛を要請している、あるいはロックダウン(都市封鎖)をしているような状況でも毎月決まった賃料や従業員の賃金、税金などといった固定費の支払いを支払い続けないといけません。コロナ感染拡大の危機が早く収束することがわかっていれば短期間の損失を被ることができますが、いつまで危機が続くのかわからない不確実な状況であれば会社や店を畳むという判断を下さざるえなくなります。そうなった場合はコロナ危機が去った後でも民間の経済活動が再生しない恐れがあります。これが不確実性の恐ろしさです。

コロナウィルスの感染だけではありません。中国の場合他にも不確実要素をたくさん持っています。この国は法治主義ではなく、政府高官・共産党幹部の恣意や裁量でものごとが決まってしまいます。朝令暮改が当たり前ですし、彼らの機嫌ひとつで許可や禁止が決まります。最悪身に覚えのない理不尽な言いがかりをつけられて逮捕されたり処刑されることだってあります。香港国家安全維持法についても法律が施行されるまでその内容が公開されていませんでした。結局何をしていいのか悪いのかの線引きがまったくわからないし、それがコロコロ変わってしまうのが中国政府です。不確実性が高い相手です。

今回の新型コロナウィルス感染拡大が収束したとしても、中国共産党の杜撰さや隠蔽体質が改まらない限り似たような惨事が再び起きる可能性があります。旧ソ連の統治下であったウクライナで発生したチェルノブイリ原発事故のようなことがあっても不思議ではないのです。香港国家安全法という悪法の制定によって一国二制度が崩壊し、投資家たちが香港から資本を引き揚げる動きも加速するでしょう。これまで急成長を遂げてきた中国へ我先にと進出してきた他国企業は今後痛い目に遭うかと思われます。中国への投資は「行きはよいよい帰りが恐い」です。ヤクザの組抜けと同じで抜けたくても抜けられないような事態が起きるかも知れません。

これまで他国は中国に対し、経済成長を遂げて他国との国際交流や交易が盛んになっていくに従い、西側の自由主義・民主主義的価値観を共有しあえる関係を築けるのではないかという期待を持っていたかに思えます。しかし中国政府はそうならなかったどころか、強大化した経済力と軍事力にものを言わせ世界中に覇権主義や強権主義を剥き出しにしてきたのです。今回の世界的規模でのコロナウィルス蔓延で自由主義的経済活動が壊滅させられ、そこへ火元である中国が火事場泥棒までしでかすという悪夢的状況が想起される状況です。

私は130年前に新聞の社説として書かれた「脱亜論」と重ねあわせております。これは福澤諭吉が書いたものではないかと云われているものですが、その背景は福澤と親交のあった朝鮮開化派の金玉均らによる甲申事変が中国・清政府の介入によって失敗に終わってしまい彼らが惨殺されたことへの失望感や憤怒にあったとされています。その当時の状況から中国は何も変わっていないのです。

自由主義経済・民主主義体制の国は中国政府と袂を分かつ心準備をせねばならないのではないでしょうか。


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自由主義経済と民主主義社会を破壊する中国共産党の魔の手

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以下本文です。

 

 今年2020年という年は世界中が厄難に襲われています。言うまでもなくその中でも最大級であるのは新型コロナウィルスの蔓延です。これによって世界中で75万人の命が奪われましたが、同時に経済活動も著しく抑制されています。コロナウィルス感染による死亡だけではなく、自殺など経済関連死も無視できない問題です。これまで世界各国は経済活動を犠牲にする覚悟で都市封鎖や接触率削減のための自粛などによって感染拡大防止に努めてきました。国境を跨いだ移動や貿易も厳しく制限されます。

この新型コロナウィルスの感染源は中国の武漢市からはじまりました。新型コロナウィルスの感染拡大については当初から中国科学院の武漢国家生物安全実験室からウィルスが漏出して起きたとか、それがカナダから盗まれたものだったなどという黒い噂が伝えられていました。そして世界保健機構(WHO)のテドロス・アダノム事務局長が中国政府の顔色を伺って新型コロナウィルス感染拡大防止のための緊急事態宣言発令を1月30日まで先延ばしにしていたといわれています。

 

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200813204848j:plain習近平

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200814091332j:plainテドロス・アダノム

 

全世界的な新型コロナウィルス感染拡大は中国共産党政府の杜撰さや隠蔽体質によってもたらされたものといっていいでしょう。財務省や外務省の官僚で経済学者でもある本田悦朗さんは4月にツイッター上でチェルノブイリ原発事故を想起したと仰っています。両者とも社会主義国家の官僚主義的腐敗が元で発生し、かなり広範に多くの国々へ放射性物質や病原体を撒き散らしたという意味で非常に忌まわしいことです。

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200814092643j:plain本田悦朗さん

 

 

 中国共産党政府はそのことに悪びれるどころか、まるで他人事のように「コロナ危機から世界を救うのは中国だ!」という厚顔無恥で恩着せがましい国際的宣伝活動を始めます。中国国営の新華社通信は3月初めに「正々堂々と言う、世界は中国に感謝すべきだ」だとか「中国の巨大な犠牲や努力なくして、世界各国は感染と戦う貴重な時間を得ることはできなかった」などと書いた論評記事を掲載します。呆れてものが言えません。おまけに中国外務省の趙立堅報道官がツイッターで「アメリカでの感染はいつ発生し、何人が感染したのか。武漢に感染を持ち込んだのはアメリカ軍かもしれない。アメリカは透明性を持ちデータを示して説明を」などと言い出す始末です。
 
コロナ危機で日本の民間事業者が経営危機に陥っています。倒産した日本の企業や旅館・ホテルなどを華系投資家らが買収してしまおうという動きがあったりします。
 

www.sankeibiz.jp

 

コロナウィルスの感染拡大によって、世界各国の民間事業者や個人、そして政府ならびに中央銀行は巨額の負債を背負わされます。非常に理不尽な話です。現在アメリカやUK、イタリア、ドイツ、エジプト、インド、ナイジェリア、オーストラリアなどの国々が感染拡大の原因は中国の初動対応の誤りが主要な原因だとして中国政府に賠償を求める訴訟を起こしています。中国は世界中を借金漬けにしてしまったので当然こうした制裁をすべきでしょう。今回の新型コロナの感染拡大による中国への賠償金の要求額は総額で100兆ドル(約1京1000兆円)を上回っており、中国のGDP国内総生産)7年分に相当する額に達していますが、支払わせるべきです。

中国政府の悪行三昧はコロナウィルスの感染拡大助長とそれによる世界的規模の経済危機発生に止まりません。ウイグル自治区など少数民族に対し、反吐が出るほどの激しい弾圧や彼らに対する迫害を繰り広げています。ウイグル自治区での核実験に、不当逮捕による収監、その場の銃殺処刑、陰惨の限りを極める拷問や強姦とその後の惨殺など筆舌では言い表せぬ蛮行を繰り返しています。

tetsu-log.com

結婚適齢期を迎えたウイグル人女性は中国政府によって漢民族と強制結婚させられます。男性は就職や結婚をすることができず、再教育収容所へ押しこまめられ、徹底した洗脳教育や拷問がそこで繰り広げられます。

さらにひどいのがウイグル人チベット人法輪功信者などを惨殺した後あるいは生きたままの状態で臓器を摘出し、漢民族や海外の富裕層たちに移植する臓器売買ビジネスが行われていたり、人体標本とされてしまうというおぞましいことまで行われています。中国が得ている臓器売買ビジネスの収益は数十億ドルに上るとさえ云われています。ちなみに中国において臓器移植手術が盛んに行われているのも武漢です。

 

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カシュガル空港内の床に貼られた臓器輸送通路の表示

 

中国政府の非道っぷりは自国民だけではありません。他国民にも牙を剥きたてています。しかもそれが習近平政権時代になってからどんどんひどくなってきています。中国国内にいる外国人をスパイや国家安全を脅かしたという嫌疑をかけて国家安全局や公安が身柄拘束するというようなことまでやっています。日本人については100人以上が長期に渡って身柄拘束され、スパイ防止法で懲役がついた実刑判決を下されています。

2018年にカナダがアメリカからの要請で中国の通信機器メーカーであるファーウェイの副会長兼CFO(最高財務責任者)である孟晩舟を「ファーウェイがアメリカのイラン制裁に違反した疑いがある」という容疑で逮捕しましたが、この報復で中国側はカナダ人2人をスパイ容疑で逮捕し起訴、死刑判決を下しています。アメリカが中国政府やファーウェイに対し怒ったのは諜報機関をつかってアメリカの民間企業から情報を盗み、それを中国の民間企業に横流ししたり、ファーウェイ製の通信機器に埋め込まれたチップから個人情報や国家機密情報を抜き盗るような行為をやってきたからです。

f:id:metamorphoseofcapitalism:20200815195151j:plain孟晩秋

そこへさらに加わったのが2020年6月30日に成立され、即日で施行されてしまった香港国家安全維持法です。

これが世界でも類を見ない悪法で、香港に在住していない他国籍民が香港以外の地でこの法律に違反するようなことをすれば違反と見做すという恐ろしいものです。このブログ文を書いている私も香港国家安全維持法違反であり、中国国内はおろかこの国と犯人引き渡し条約を結んでいるような国に渡航すれば逮捕される危険があります。つまり中国は世界中のすべての人たちを、どこの国籍でどこの国に住んでいようがお構いなく国家安全維持法違反で逮捕できるのです。

自分は海外へ出かけるようなことはしませんが、だからといって安心できません。30年以上も前にイギリスの作家サルマン・ラシュディが書いたイスラム教の創始者ムハンマドを題材にした小説「悪魔の詩」がムスリムイスラム教信者)間から反感を買って、当時のイランの最高指導者ルーホラー・ホメイニー師から著者のラシュディや日本語訳者の五十嵐一(ひとし)さんらに死刑宣告を行いました。恐ろしいことに五十嵐さんは1991年に勤務先の筑波大学で殺害されてしまいます。「悪魔の詩」の出版に関わった他の国の人たちも同様に殺害されたり、重傷を負わされております。香港国家安全維持法も同様の恐ろしさを持っています。

 

自国領域内だけではなく他国領域でも自国の法律を適用させるという法の域外適用は国際的社会で認められるわけがありません。こんな法律を平気でつくってしまう中国政府の傲慢さと厚顔無恥ぶりに閉口せざるえないのですが、これを許すということはこの国の他国への暴力的介入を許すことになります。五十嵐一さんは日本国内にいたにも関わらず他国の暴力的介入によって殺害されました。これはれっきとした日本への侵略行為です。いずれ中国政府はどこの国にいようがどこの国籍だろうが自分たちの意に沿わない人たちを拘束したり、殺害するようなことをやらかしても不思議ではありません。まさに武力侵略行為です。

私はやがて中国という国はアメリカやアジア周辺の国々と軍事的衝突が起きても不思議ではないと思うようになりました。軍事衝突とは特殊部隊による人質救出作戦やスパイ・工作員の殺害といったものも含みます。

 

ノストラダムスの大予言でアンゴルモアの大王(恐怖の大王)とかハルマゲドン(最終戦争)といった言葉が出てきますが、習近平こそそのアンゴルモアの大王ではないかと私は思うようになっております。アメリカや西欧諸国を中心とする自由主義・民主主義国家陣営にとって中国という国は完全な脅威です。アメリカのトランプ大統領をはじめ、比較的これまで中国と深く関わってきたドイツやフランス、イタリアなどの国々も中国という国を敵視するようになっていくかと思われます。2020年は第2の冷戦の幕開けと言うべき年になってしまったのではないでしょうか。

 

中国という国は衣料品や食糧品に限らず、電化製品や自動車・鉄道車両・建設など重工業の分野でも世界市場を席捲するようになり、無視できない存在となってきました。中国とは手を切りたくても手を切れない状態になってしまった国は日本を含めてたくさんあります。私自身も知らずのうちに中国で生産された家電用品や食料品、衣料品、そして趣味の世界においては鉄道模型製品に囲まれた生活を送っています。

しかしながらもう中国という国でビジネスをしてはいけないし、ビジネスの相手としてはいけないことが確定的になってしまったのです。福澤諭吉が書いたのではないかと云われている「脱亜論」の最後にある「我れは心に於て亜細亜東方の悪友を謝絶するものなり」という記述が130年経ったいま強く現実味を持っているのです。


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バーチャルアイドル 友坂える プロモーショナルキャラクター就任

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今日からこのブログ「暮らしの経済手帖」時評編と経済知識編のプロモーショナルキャラクターを務めることになりましたバーチャルアイドル・友坂えるです。彼女は今後両ブログの文章の挿絵や説明図などで登場させていくつもりですが、いずれ経済以外のVtuberやダンス動画、グラビアアイドル的?な活動などにも挑戦させていきたいです。

 

友坂えるの名前は経済学の目的である「共に栄える」という願いや想いをこめて命名しました。設定は妹・麗奈と共にアイドルグループ(名称未定)に所属しているものの、得意料理のカレーを振舞うお店を持ちたいという願望をもっているというものです。ふたりには謎のたぬきときつねが居候しています。やがてこの4人(?)が銀行借り入れなどで苦戦しつつ、カレー屋を開いていくという物語を考えているところです。

 

妹・麗奈や彼女たちが登場する経済コント、動画などは順次用意していくことを計画です。

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(大人の方はこちらへもどうぞ)

3dgirlsfigurebonjinoyamada.blog.jp
 
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