新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

消費税増税で社会保険料負担が減ったりしない。

 ひと月ほど前に「消費税増税で社会保険料負担軽減などという嘘に騙されるな! 」という記事を書きました。これは一部で「消費税の負担よりも社会保険料の負担の方がはるかに重いじゃないか」「消費税の税率は税率5%から8%引き上げまで20年近くもかかったが、その間社会保険料はうなぎ上りで上がってしまったじゃないか」「社会保障財源は消費税で負担した方が広く・薄く分担することになるので国民負担が軽くなる」といったことを言う人たちが増えてきたために釘を刺すつもり書いたものです。

 

私は「消費税の増税社会保険料の値下げなんて大甘な発想だ」「税制や社会保障制度の改変をしたところで、国民ひとりひとりの医療費や介護(お金だけではなく、介護そのものの負担や時間も含む)の負担が減るものではない」「大事なことは経済のパイを大きくして、GDPで占める国民医療費や介護費の比率を減らすことだ」と述べました。

 

しかしながらわが泡沫経済ブログでそれを指摘しても、それ以上に「社会保険料負担よりも消費税負担」というトンデモ発言をする人の勢いが勝っています。

こういう人たちを煽ったのは△ゴラの論客であり、さらにいえば消費税増税社会保障費削減を狙ったZ省の悪巧みでしょう。たぶん消費税などの増税だけが先行して、社会保険料の値下げはああだこうだ理屈をつけて認めることはないでしょう。

というか公的年金や公的医療保険の実情を知っている人なら気がつくはずかと思われますが、本来保険方式であるならば保険料収入=給付額が原則であるところ、わが国は保険料収入<給付となっており、一般会計からの補填してもらって制度を維持している状況です。こんな状況で「消費税増税社会保険料値下げ」なんてとても期待できないでしょう。

 

下のグラフは国立社会保障・人口問題研究所が作成したもののようですが、消費税の税率を5%に増税した1997年から社会保障財源の収支悪化が改善するどころか、逆に悪化しています。f:id:metamorphoseofcapitalism:20190924204308p:plain

 社会保険料収入が1990年代後半より横ばいになってしまった原因は人口構成の問題だと思う人が多いかも知れませんが、ワニの口が開いた始点となった1997年の状況から察するに、社会保険料を支払う現役世代の就労報酬が伸び悩んだり、就職難やリストラで非正規雇用や無職のまま過ごす人が増えてしまったことが社会保険料収入の伸び悩みにつながったのではないかというのが私の診立てです。

 

残念ながらいまさら慌てて子どもの数を殖やそうとしたりしても手遅れです。残念ながら現役世代だった高度成長期に十分な保険料を支払い、高めの給付を受ける権利を持ったいまの高齢者を、数少ない所得が下がった現役世代が支えていかねばならない宿命から逃れることは日本に住む以上不可能です。(お隣韓国はもっとエグいことになりそうだが・・・・)消費税の増税で解決できません。

 

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 「だったら社会保障費そのものを削減して、消費税だけではなく、社会保険料も引き下げて、現役世代の負担を下げればいいじゃないか」と思う人が出てくるかも知れません。

 

しかしながらそれによって現役世代の税負担が減ったとしても、別のかたちでの負担に替わるだけのことです。老後やいざというときに良質な医療サービスや介護サービスを受けたいと思うであれば、公的年金や公的医療保険料を支払うかわりに、アメリカなどのように自分で民間の保険会社に、いまと同じかそれ以上の保険料を支払って、自分の身を護る自己責任と自助努力が求められます。老後の生活費については竹中平蔵氏のいうように「自分が90歳まで生きると思うのだったら、その分のお金を貯めておくべきだ」ということになります。

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「年金を削減しろー」はいいですが、自分の親が病気やケガの後遺症で動けなくなったり、認知症などで要介護となったとき、全額自腹で介護サービスの利用料を負担できますか?それが丸一日付き添って自分で介護しますか?

 

何度もいいますが、老後の生活費を若いうちから貯めておく必要性や、年老いた親の面倒、そして高額な医療費の負担から逃れることは不可能です。「小さな政府」志向が強いアメリカのような国に行こうが、逆に北欧のような福祉国家に行こうが同じです。自助の精神で自己負担するか、国にお金を預かってもらって面倒をみてもらうかのどちらかです。

 

現在少子高齢化で少ない若年現役世代が多い高齢者を支えねばならない状況であり、現役世代の社会保険料やその他税負担が増え、逆に高齢者の年金給付が目減りしたり、医療費の自己負担分が増えたりしますが、保険方式の場合は財源が一般会計から独立しており、収支関係がはっきりわかります。比較的透明性が高く、公正な徴税と給付ができるのが保険方式です。だからこそ「いま高齢者の数が多くなっているので、現役世代の人たちは負担額が増えますがご了承ください」あるいは「若い現役世代の負担を減らすために、高齢者の方は給付が減るのを少し我慢してください」とハッキリいえるのです。

 

もし「社会保障財源は消費税で」なんてやったらどうなるでしょうか?たぶん国の行財政への不満と不信が今以上に高まるだけでしょう。財務省の役人らが「社会保障費が膨張して国家財政が破綻するから増税しないといけない」といえば、「嘘つけ!おまえら増税と緊縮財政で国民をシバキたいだけダー」「お前らの税金の無駄遣いをヤメロー」と反緊縮派が怒り、混乱が深まっていく一方だと思います。

 

△ゴラ関係者たちは日頃財政規律についてうるさく言いますが、独立した社会保険財政を一般会計に入れてどんぶり勘定にしてしまうと、収支関係があやふやになって、逆に財政規律を乱すことになるのではないでしょうか?

 

私は高橋洋一さんや竹中平蔵氏の主張を支持しますけどね。

 

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