新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

現金一律給付の妨害で顕かになった戦時中の軍部と変わらない財務省の体質

コロナウィルスという敵と闘う戦士たちを支えるロジスティクス 」「迅速性が欠けるコロナ休業補償 」につづくコロナ対策についての記事です。今回の記事を含め三部作構成でまとめていますが、現在感染拡大阻止のための外出自粛等で所得急減や資金繰り悪化という苦境に陥った民間事業者や個人への補償が遅れてしまっている問題について批判しています。この状態は戦争において最前線で任務を遂行する兵員らに対し、兵器や食糧、医療などの補給が滞っているようなものです。このような兵站ロジスティクス)をかつて第2次世界大戦中の日本の軍部参謀らは怠ってノモンハン戦争やインパール作戦、ガタルカナル島などでの戦闘において多くの兵士を野垂れ死にさせてきました。

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ノモンハン戦争やガタルカナル島の戦闘に大きく関わった辻政信インパール作戦で悪名を遺した牟田口廉也
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ノモンハンでの日本軍戦死者

 

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ガタルカナル島の日本軍戦死者

 

民間事業者や個人への休業補償や現金一律給付の導入が日本で遅れてしまっている理由は財務省の財政出し渋りにあります。現金一律給付は先日4月17日にようやく安倍総理が全国民ひとり10万円を無条件給付するという方針を打ち出してくれました。しかしながらここまでくるのにものすごい混乱があったのです。前回記事でも書きましたが、現金給付は一律無条件給付ではなく、コロナショック前より所得が急減したことが証明できて、さらに現在の所得が住民税非課税世帯以下になっているという恐ろしく狭い給付条件となっていました。このことでネット上や心ある与野党議員らが猛反発して現金一律10万円無条件給付へと方針転換したのです。

この方針を打ち出すときの記者会見で安倍総理は「(ここまでに至るまでのプロセスにおいて混乱を招いてしまったのは、私自身の責任であり、国民の皆様に心から深くお詫び申し上げたい」と陳謝されています。しかしこの責任は安倍総理ひとりだけにあるのでしょうか?

 

産経新聞財務省の官僚らが現金一律給付は「大企業や年金生活者など打撃のない人にも配るのは不公平だ」「膨大な財源が必要だ」などといって反対し、妨害してきたという記事を書きます。

今回のコロナショックで現金を無条件給付すべき理由は、所得の減少が急激である上に、家賃や光熱費、ローンの支払いなどの固定費支出を余儀なくされ、窮地に立たされている人たちがかなり多くいるからです。しかも被災範囲は広範です。政府や役所側が細かい給付条件をつけて受給資格審査をする行政的余裕はありません。その行政手続きで感染を拡大させてしまうことにもつながります。まずは迅速な給付を優先すべきときなのです。公正さについては後で確定申告の際に所得税で調整すればいいことです。

経営破綻や廃業、失業は民間事業者や個人の経済的自立を大きく損ねます。今回の補償や給付を出し渋ることで、後の生産活動が萎縮し、ますます税収が落ち込んで財政悪化になってしまうことにもなりかねません。だから迅速性や機動性を最優先にした政策を択ぶべきです。

 

元々安倍総理は最初から現金一律無条件給付を行う考えを持っていたようですが、読売新聞で側近の今井補佐官が「一律給付しても効果がないのは実証されている」と口を挟み、さらには麻生財務相も「一律だと8月になる。限定なら5月に支給できる」と割り込んできたようです。これが限定30万円給付案へとつながったのでした。

このことを知った金子洋一元参議院議員は「総理の政治的判断にまで口を出すのは官僚としての分をわきまえない行為。許すわけにいかない。」と、上念司氏は「これ事実なら公務員法違反じゃないの?岡本薫明事務次官東京地検に告発すべき。部下が勝手にやりましたでも監督責任あるのでダメ。最低でも辞職ものだと思います。」というツイートをします。

こうした官僚たちの行為はまさに僭越というべきものでしょう。ノモンハンやガタルカナル作戦に関わった参謀・辻政信と重なるものを感じます。

安倍首相のコロナ対策迷走の元凶は「今井補佐官」だった…マスク2枚配布、現金給付混乱

 

かつての日本の軍部参謀は敵方が強大な兵力を有しており、丸腰のまま立ち向かっていけば惨敗となる危険性が高いにも関わらず、楽観的に構えてしまい、十分な戦力補強をしないまま戦闘を始め出してしまう過ちを繰り返しました。辻政信牟田口廉也などは非常に精神主義的で、兵器や物資補給を怠ったまま部下の兵士たちに「大和魂」だけで闘うことを押し付けます。その結果敵方の物量攻勢にやられたり、物資補給不足によって飢餓状態に追い込まれるなどして多くの兵士が命を落とします。

また日本軍は戦力逐次投入で戦力を小出しにしていたために、敵方の攻勢に追いつかず、じりじりと攻めよられて、結果として敗戦しまうことになりました。

 

コロナウィルス感染拡大という脅威は民間の経済活力をどんどん弱体化させます。著しい所得減少やそれに伴う資金繰り悪化は長年続けてきた民間の事業を僅か数ヶ月間だけで破滅に追い込みます。一旦倒産や廃業をしてしまった民間事業はコロナウィルスの感染拡大が収束したとしても復活することはありません。血流が絶たれて壊死した細胞や組織と同じです。旺盛なモノやサービスの生産が元に戻らず供給不足状態となったり、失業や所得減少が慢性的需要衰弱となる危険性を孕んでいます。

 

この危機に立ち向かうには政府が財政出動や金融緩和政策を思い切り全開にして、民間事業者や個人を護ることです。経済基盤の破壊を最小にせねばならないのです。

 

民間事業者や個人の経済力低下を過少に見積もり、マクロ経済という視点から見たらその一部門に過ぎない政府の財政という局所合理性しか目に入らない財務省の官僚たちの行動はかつての日本の軍部参謀と変わっていません。彼らは結果として日本の国力を衰退させ、第2の敗戦へと導きかねないのです。

 

今回は現金一律給付のことを主にしましたが、消費税増税による景気悪化の深刻化という問題を忘れてはなりません。消費税の増税財務省が主導したものです。彼らの僭越行為がこの国を亡ぼしてしまいます。われわれ国民は財務省という愚行を非難し、民間経済の再生を目指すべきです。

 

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