新・暮らしの経済手帖 ~時評編~

わたしたちの暮らしを大切にするための経済解説サイトを目指して開設しました。こちらは時評編で基礎知識編もあります。

ミイラ盗りがミイラになった話 ~官僚に丸め込まれた民主党~

反官僚・脱官僚を旗印に掲げ2009年の衆議院選挙で自民党から政権を奪った民主党ですが、政権発足間もない頃からどんどん官僚に取り込まれ操り人形のようになっていきます。前回書いた子ども手当は各省庁の官僚にとって利権という座布団がまったくない支出であり、民主党政権を骨抜きにしてこの制度を潰しました。他にも当初民主党マニフェストでは各省庁の剰余金や積立金(霞が関埋蔵金)の活用で増税を回避することを掲げていましたが、それと逆行するかのように菅・野田政権時代に消費税10%引き上げを呑み込まされます。当時自分はこの様子を見て「ミイラ盗りがミイラになったようなものだ」と感じてしまいました。

では霞が関の役人はどのような形で意にそわない政治家を潰したり、懐柔させていくのでしょうか?
渡辺喜美氏(現在参議院議員)はそれについて「リーク・悪口・サボタージュ霞が関三大手法」と証言します。
渡辺氏や氏が立ち上げたみんなの党が潰された理由も見えてきますね。

民主党潰しや去勢化工作のときも、まず最初に「リーク」という手を遣っています。霞が関の膨大な情報と諜報能力を駆使して、標的にする政治家や政党のスキャンダルになりそうなネタを探し出し検察やマスコミにタレコミをします。まず最初に狙い撃ちされたのはまだ自民党福田康夫政権だったときの代表・小沢一郎氏です。当時自民政権への不満がどんどん募り、民主党参議院選挙で大勝し勢力を拡大中でした。その最中で小沢氏の秘書が政治資金規正法違反で逮捕されてしまうという陸山会事件が起きます。

この事件で引責辞任した小沢氏のあとに民主党代表となり、その後総理大臣に就任した鳩山由紀夫氏も同様に脱税嫌疑をかけられました。小沢・鳩山の二人は官僚や検察・国税局などに匕首(あいくち)を突き付けられている格好になっていたのです。民主政権発足直後から鳩山由紀夫総理が元大蔵官僚の藤井裕久氏を財務大臣に据えることをゴリ推ししたり、官邸の周辺ポスト人事で麻生政権と同じ人物の留任させたりして官僚のポストをそのまま保持してしまうなど、官僚に忖度しているのではないかという人事が見受けられました。鳩山内閣の目玉だったはずの「国家戦略室」や「行政刷新会議」へも財務官僚がどんどん入り込んできます。

そしてマニフェストで「天下りを根絶します」、「天下り、渡りの斡旋を全面禁止する」と掲げていたにも関わらず、日本郵便の初代社長で「最後のバンカー」と呼ばれていた西川善文氏を追い出し、代わりに元大蔵次官である斎藤次郎氏を日本郵便の社長に据えてしまいます。斎藤氏は細川護熙政権時代に小沢一郎氏と共に国民福祉税の導入を企んでいた男で「10年に1人の大物(ワル)」と云われていました。これを筆頭にどんどん民主党は官僚の天下りを許していきます。
官僚の天下り斡旋禁止は第1次安倍政権が進めた国家公務員法改正で盛り込まれたのですが、菅直人政権のときに現役官僚を民間会社へ出向させることを認める改悪をしでかしました。退職した官僚より現役のまま出向の方が所轄業界や企業に対する圧力が強くなるのは当然です。完全な骨抜きといっていいでしょう。

政権を獲る前の民主党議員は鼻息荒く、官僚に対し喧嘩腰で挑んでいましたが、いざ政権につくと急に尻尾を丸めて官僚の反撃を恐れだします。民主党議員の中に元官僚の人間が結構な数いて、他の議員に「官僚と闘いたいお気持ちはわかりますが、今やったら終わりです。」などと進言した人がいました。

それと民主党議員の多くが勘違いしていたのは「政治主導」のことです。彼らは仕事を官僚に振ったり任せたりするのではなく、自分たちで全部やるのが政治主導だと思い込んでいたのです。
ところが与党となった政党・政治家がこなさなければならない仕事量は膨大で、それを迅速に処理しないといけません。黒子のようにそれを支えるのが官僚ですが、彼らが自分たちを敵視し排斥しようとした民主党議員らに対し「では今後は私ども官僚は手も口も出しません。あなたたち政治家で全部やってください」とあしらいました。官僚によるストライキサボタージュです。やがて民主党政権の閣僚らはとても処理しきれない雑務に忙殺され、「官僚の協力がないと膨大な仕事をこなしきれない」と泣き言を言い出すようになりました。これで多くの民主党議員は白旗を上げ、官僚に頭を下げて仕事をお願いするしかなくなるわけです。いわゆる「ヘトヘト作戦」です。

ちなみに小泉純一郎氏は政治家はディレククターでおおまかな方針だけを決める。細かいことは各担当大臣や官僚に任せるという割り切った態度でした。

それと大臣になった民主党議員の知識不足が官僚に隙を与えました。人間が持つ知識の量や幅は限られていますので、いざ大臣の座についてみるとその所轄分野についてわからないことがいっぱいあることに気づかされます。上の渡辺喜美氏のインタビュー動画でも述べていますが、初めて大臣になったような議員は何もわからず、役人がつくったペーパーに頼って国会答弁や記者会見に臨むことになってしまいます。与党慣れしておらず、素人ばかりの民主党議員は官僚に頼らないと何も言えない・答えられないわけです。官僚たちにとって何も知らない民主党議員を懐柔することは赤子の手をひねるようなものだったのです。

あともう何回が指摘し続けたことですが、民主党議員の多くは経済音痴です。成長戦略を打てないためにそれで税収を伸ばすことができないのです。不景気でどんどん税収が落ち込み、遣える財源は萎んでいきます。その様子をみて官僚たちは「増税しないとあなたたちのやりたい政策は何もできないのですよ」と窘められ、民主党議員たちは「すみません官僚さん、逆らった私がバカでした。これからは大人しく官僚さんの言うことに従います」となってしまうのです。

上の添付動画で渡辺喜美氏のあとに元経済産業官僚だった岸博幸さんのインタビューも収録されていますが、岸氏は「今の政治レベルでは実は政治主導になったら必ずよくなるとはいえないと思います」「本当に役人と互角に議論して自分で情報を集めて」「(官僚の手口を)全部見破れる人がどれだけいるんですかねということですね」と仰っています。結果的に民主党は岸氏が指摘されたとおりの罠に陥ってしまいました。

ほんとうの政治主導は反官僚とか脱官僚ではなく、超官僚でないといけなかったのです。それができていた政権は小泉純一郎政権と今の安倍政権だけではないでしょうか?

次回も同じく官僚による民主党操縦術の話で、消費税引き上げを口にしそれが元で参議院選挙で民主党を大敗させレームダック化してしまった菅直人の稚拙ぶりについてこき下ろすつもりです。

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